消化酵素は何のためにあるの?
『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
[前回]
今回は「消化酵素」に関するQ&Aです。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
消化酵素は何のためにあるの?
消化には食塊を小さく砕く物理的消化と、消化液で分解する化学的消化の2種類があります。このうち、化学的消化を行うときに必須なのが消化酵素です。
歯は切歯(せっし)で11~25kg、臼歯(きゅうし)で30~90kgの耐力をもっています。歯によって食物は細かく噛み砕かれ、胃の蠕動(ぜんどう)運動により、物理的消化が行われます。
しかし、これだけではただ、食塊の一片の大きさが小さくなるだけです。消化酵素は唾液、胃液、膵液(すいえき)などに含まれており、それぞれ、分解する物質が異なっています。
消化酵素の特徴は、順番に仕事(化学的消化)をしていくことです。最初は、食物に含まれる栄養素を大雑把に分解し、胃腸管(消化管)をたどるにつれ、細かく分解していきます。
ご飯やパンなどの炭水化物の場合、唾液などに含まれるアミラーゼにより、2分子からなる麦芽糖や、グルコースが数個結合したデキストリンという多糖に分解されます。
次に、小腸の絨毛(じゅうもう)上皮細胞の細胞膜上にあるマルターゼ、スクラーゼ、ラクターゼなどによってグルコースに分解され、吸収されます。
タンパク質も同様に、胃で分泌される消化酵素であるペプシン、膵液に含まれるトリプシン、キモトリプシン、小腸の絨毛上皮細胞上のアミノペプチダーゼなどによって徐々に分解されていきます。
すなわち、消化酵素は食物に含まれる栄養素を分解し、血液やリンパ液に吸収されやすい形に変える働きをもっています。
MEMO吸収
食物は消化酵素によってグルコース、果糖、ガラクトース、脂肪酸、グリセロール、アミノ酸などに分解されます。これらの分解産物を、小腸や大腸の粘膜に取り込むことを吸収といいます。
COLUMN食欲の仕組み
食欲を制御しているのは、間脳の視床下部にある摂食中枢と満腹中枢です。摂食中枢が刺激されると食欲がわき、満腹中枢が刺激されると満腹感を感じます。こうした調節を行うときに重要な働きをしているのが、血中グルコース濃度(血糖値)です。
食事をして食物が消化、吸収されると、血糖値が上昇して満腹中枢のスイッチが入ります。一方、活動によってエネルギーが消費されると、血糖値が低下し、身体に蓄えていた脂肪が遊離脂肪酸に分解され、エネルギーが産生されます。遊離脂肪酸が血液中に増加することで、摂食中枢のスイッチが入ります。
※編集部注※
当記事は、2016年8月8日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
[次回]
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック』 (監修)山田幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版