食道に異物が詰まるのはなぜ?物を飲み込むときに気管がつぶれないのはなぜ?

『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
今回は「食道と気管」に関するQ&Aです。

 

山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長

 

[前回]

食物が気管に入らないのはなぜ?

 

〈目次〉

 

食道に異物が詰まるのはなぜ?

誤って飲み込んでしまった異物や、餅のように粘り気の強い食物が、食道に引っかかることがあります。これは、食道に3か所の狭窄部があるためです。 

 

食道は咽頭から胃の噴門までの筒状器官で、約25cmあります。通常、断面は星状でほとんど閉じた状態になっていますが、嚥下の際には3cmほど広がり、食塊が通りやすくなります。

 

飲み込んだ食塊が食道に引っかかったり詰まったりするのは、食道起始部、気管分岐部、横隔膜貫通部に生理的な狭窄があるためです(図1)。

 

図1食道の生理的狭窄部

食道の生理的狭窄部

 

この3か所の内径はほかより狭くなっているため、食物が通りにくくなっています。そのため、この3か所の狭窄部では、ほかの部分よりも食物との接触が密で摩擦刺激を受けやすく、食道癌が発生しやすくなります。

 

MEMO食道癌

食道に癌ができると、喉がつかえる、物を飲み込みにくくなる、飲食時に痛みを感じるなどの症状が現れます。食道壁周辺には血管やリンパ管が集中しているうえに、外側には外膜しかなく漿膜を欠くため、食道外側への浸潤と転移が起きやすく、、肺、肝臓、骨などに転移しやすいです。

 

物を飲み込む時に気管がつぶれないのはなぜ?

気管と食道は狭い頸部で隣り合っていますが、食道を大きな食塊が通過しても、気管がつぶされたり塞がることはありません。これは、気管軟骨がC字型をしているためです。 

 

食道を大きな食塊が通過しても、C字型の部分はつぶれないので、呼吸は確保されます。また、大きな食塊を飲み込むときには、食道と接している気管後方の膜が伸びることで、食道の拡張を可能にします。

 

※編集部注※

当記事は、2016年8月18日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。

 

[次回]

胃はどれぐらいの容量があるの?

 

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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック』 (監修)山田幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版

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