便秘時、果物、野菜、水分などを多くとるとよいといわれるのはなぜ?

『根拠から学ぶ基礎看護技術』より転載。
今回は便秘の原因に関するQ&Aです。

 

江口正信
公立福生病院診療部部長

 

便秘時、果物、野菜、水分などを多くとるとよいといわれるのはなぜ?

 

腸の蠕動運動を促進させて、排便を促すためです。

 

〈目次〉

 

便秘とは

便秘とは、大腸内の糞便の通過が普通より遅れ、腸内に停滞し、排便が困難な状態をいいます。

 

どうしても便の腸内停滞時間が長くなると、水分が吸収されて便が硬くなるので、なるべく水分を摂取することです。とくに冷たい水や牛乳は、胃―結腸反射に有効であるうえに、日本人は乳糖に耐性のない人が多いため便がやわらかくなります。

 

感染症を疑う場合

排便の性状で下痢の粘液便が続く場合、感染症が考えられるため、予防的に個人防護具(PDE)を使用しましょう。医師に報告し、便の培養を提出し、結果を確認します。

 

便秘と食物繊維の関係は

また、食物繊維に富む野菜や果物を摂取すると、繊維はそのまま消化されないため食物残渣の量が増加し、胃―結腸反射排便反射に必要な腸内容物のもととなり、機械的刺激として作用します。

 

便秘を予防する食品は

便秘を予防する食品をあげると以下のとおりです。

 

  1. 機械的刺激となる食品
    ・繊維の多い野菜:ごぼう、にんじん、れんこん、いも類、豆類、白菜
    ・果物:バナナ、プラム、桃
  2. 化学的刺激となる食品
    ・甘味の強い食品:乳糖、あめ、砂糖漬の果物、蜂蜜
    ・酸味の強い食品:なます、ヨーグルト、レモン、夏みかん
    ・塩辛い食品:みそ漬、塩辛
    ・脂肪の多い食品:牛乳、バター、マヨネーズ、うなぎ
  3. 物理的刺激となる食品
    ・冷たい食品:冷たい牛乳、ビール、果物

 

便秘時の看護ポイント

  1. 便秘の原因をアセスメントします。
    ・聴診、触診で、腹鳴の有無、腹部の張り感の有無や程度を観察します(図1)。

図1腹部の聴診

腹部の聴診

 

腹部の聴診
・腸内でのガスや内容物が移動する際に生じる腸蠕動音を聴取することで、消化管の活動が予測できる。
腸蠕動音の聴取は1か所でよい
・10~20秒間に聴かれる。それ以上の頻度の場合は、腸蠕動の亢進であり、全く聴こえない場合は、腸蠕動の消失
・腹部大動脈領域、左右腎動脈領域、左右腸骨動脈領域の血流音を聴取する。血管拡張・狭窄、門脈圧亢進、腹部大動脈瘤など判断材料となる

 

  1. 機能性便秘の場合
    ・食物繊維や水分の摂取
    ・適度な運動
    ・便意を我慢しない。
    ・起床時に冷水を摂ったり朝食を摂取し-直腸反射を誘発する。
    ・朝食後など決まった時間に排便習慣をつける。
    ・腹部や腰背部(第12胸神経~第1-5腰神経~第1仙骨神経:横行結腸2/3より末梢の交感神経(T12-L3)および副交感神経(S2-4)の中枢とほぼ一致しているからである)を温罨法し、腸の蠕動運動を促す(図2)。
    ・腹部マッサージ(図3
    ・生活習慣の見直しでも便秘が改善しない場合は、下剤を投与する

図2腹部や腰背部の温罨法

腹部や腰背部の温罨法

 

患者に声かけしながら、腹部・腰部に温タオルを当てる。保温効果を上げるため、温タオルの上にビニール袋、バスタオルをかける

 

図3腹部のマッサージ

腹部のマッサージ

 

  1. 器質性便秘の場合
    ・原因となる疾病の検査と治療を行う

 

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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 根拠から学ぶ基礎看護技術』 (編著)江口正信/2015年3月刊行/ サイオ出版

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