急性肺血栓塞栓症~急性肺性心の心電図|各疾患の心電図(8)
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心電図が苦手なナースのための解説書『アクティブ心電図』より。
今回は、急性肺血栓塞栓症~急性肺性心の心電図について解説します。
田中喜美夫
田中循環器内科クリニック院長
[前回の内容]
〈目次〉
急性肺血栓塞栓症~急性肺性心とはどんな疾患か
急性の肺動脈圧上昇による右心系への負荷を急性肺性心(acute corpulmonale)といい、ほとんどは急性肺血栓塞栓症(acute pulmonary thromboembolism:PEまたはPTE)が原因です。
急性肺血栓塞栓症は、多くの場合下肢静脈でできた血栓が、右心系を経て肺動脈に到達し、血管を閉塞してしまう疾患です。肺動脈の中枢が閉塞したほうがより重症です。
右心系から肺への血流が低下しまうので、肺のガス交換ができなくなり、突然の低酸素をきたし、呼吸困難、胸痛などを自覚します。さらに、左心系へ血液がまわらないため左心室は“カラ打ち”となって血圧が低下して失神することもあり、重症ではショック状態となります。
呼吸・循環管理とともに、血栓溶解剤やカテーテル治療、程度によっては手術的に血栓を除去します。
急性肺血栓塞栓症~急性肺性心の心電図所見は
心電図では、低酸素や低血圧、呼吸困難によって洞性頻脈となっていますが、心房細動になることもあります。
急性に右心系の負荷を生じた場合、四肢誘導でのSⅠQⅢTⅢパターンが有名です。すなわち、Ⅰ誘導で深いS波、Ⅲ誘導にQ波と陰性T波が見られます(図1)。
胸部誘導では右室の急性負荷を反映してV1~V3で陰性T波、や不完全右脚ブロック(伝導系の障害はないので完全右脚ブロックにはならない)が見られることがあります。左胸部誘導(V4~V6)のS波が深くなり、移行帯が左にシフトし時計方向回転を見ることがあります。四肢誘導、胸部誘導で非特異的なST低下を認める場合もあります。
急性肺血栓塞栓症~急性肺性心の注意点は
重症例では呼吸・循環管理が最も重要です。循環機能の悪化とともに致死性不整脈や心静止が出現することがあり、注意が必要です。
[次回]
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『アクティブ心電図』 (著者)田中喜美夫/2014年3月刊行/ サイオ出版