肺高血圧症~肺性心の心電図|各疾患の心電図(9)
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心電図が苦手なナースのための解説書『アクティブ心電図』より。
今回は、肺高血圧症~肺性心の心電図について解説します。
田中喜美夫
田中循環器内科クリニック院長
[前回の内容]
〈目次〉
肺高血圧症~肺性心とはどんな疾患か
肺血管抵抗が上昇すると肺動脈圧が上昇し、肺高血圧症(pulmonary hypertension:PH)となります。
肺高血圧が持続すれば、慢性的に右心系に負荷がかかり、右室肥大、右房負荷をきたします。また、肺疾患が原因で生ずる右心機能不全を肺性心(corpulmonale)といいます。
原因としては、以下のものがあります。
- 左房圧の上昇が右心系に波及して肺高血圧症~右心不全(両心不全)
- 心房中隔欠損、心室中隔欠損など心臓内のシャントによって肺血流が増加して肺血管抵抗上昇~肺高血圧症~右心不全(負荷)
- 肺塞栓症の慢性期で肺血管抵抗上昇~肺高血圧症~右心不全(負荷)
- 膠原病(SLEなど)に伴う血管炎から肺血管抵抗上昇~肺高血圧症~右心不全(負荷)
- 原因不明の肺血管抵抗上昇~肺高血圧症〜右心不全(負荷)→特発性肺高血圧症
- 肺気腫など慢性呼吸不全では、肺動脈末梢の血管が圧迫され肺血管抵抗上昇~肺高血圧症~右心不全(負荷)
肺高血圧症~肺性心の心電図所見は
- 右室肥大所見:V1、V2の高いR波+ST‒Tのストレイン型変化、右軸偏位、Ⅰ誘導・aVL・V5、V6の深いS波(時計軸回転)が見られます(図1)。
- 右房負荷:Ⅱ誘導、Ⅲ誘導、aVF、V1、V2の尖鋭で高い(>2.5コマ)P波肺動脈狭窄では、肺高血圧はありませんが同様の心電図所見となります。
肺高血圧症~肺性心の注意点は
負荷がかかれば心筋障害が生じて、不整脈が出やすくなるのは右室も左室も同じです。
右室からは心室性不整脈を生じて、重症度によっては心室頻拍や心室細動に至ります。また右房に負荷がかかれば、上室性期外収縮から心房細動になってしまうこともあります。
[次回]
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『アクティブ心電図』 (著者)田中喜美夫/2014年3月刊行/ サイオ出版