急性心膜炎の心電図|各疾患の心電図(7)
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心電図が苦手なナースのための解説書『アクティブ心電図』より。
[前回の内容]
今回は、急性心膜炎の心電図について解説します。
田中喜美夫
田中循環器内科クリニック院長
〈目次〉
急性心膜炎とはどんな疾患か
心膜というのは心臓を包んで支持している膜のことです。この膜に炎症を生じた状態が心膜炎で、ほとんどは急性の経過をとります。
急性心膜炎(acute pericarditis)の原因のほとんどはウィルスによる感染ですが、細菌、結核の感染のこともあります。肺腫瘍の心膜転移や、膠原病によることもありますが、いずれにしても心膜が炎症を起こしているというのが本態です。
症状としては、炎症ですから発熱や炎症反応の上昇があり、何より胸痛を主に胸部症状を伴うことがほとんどです。心電図上ST上昇を認めるので急性心筋梗塞との鑑別が重要です。
心膜が炎症を起こすと心臓と心膜の間のスペース(心嚢)に組織液が貯留します。これを心嚢液といいます。この心嚢液が多量になって、心臓を圧迫する状態を心タンポナーデといいます。
急性心膜炎の心電図所見は
心電図の特徴は、心膜と心外膜側の心筋に炎症が及ぶので、STが上昇します。通常は心膜全体の炎症ですので、aVRを除いたすべての誘導のSTが上昇します(V1は上昇しないことがあります)。急性心筋梗塞のST上昇が上に凸なのに対して、急性心膜炎では上に凹のST上昇です(図1)。
心電図変化は炎症の状態(たいていは改善)とともに変わっていきますが、心筋梗塞と違って心筋が大きなダメージを受けないので通常、異常Q波は出現しません。各種不整脈(上室性が多い)が見られます。心タンポナーデになると、心臓と電極の間が遠くなるので、低電位差となります(図2)。
急性心膜炎の注意点は
胸痛を伴うST上昇なので、急性心筋梗塞との鑑別が重要です。診断がつけば原因に応じた治療をします。
心タンポナーデで、血行動態が悪化していれば心嚢液を抜く(心嚢穿刺)必要があります。ウイルス性の場合は経過観察だけで治癒することがほとんどです。心房細動を含めた上室性不整脈が出現することがありますが、心筋炎を合併しなければ、心室性不整脈はほとんどありません。
[次回]
急性肺血栓塞栓症~急性肺性心の心電図|各疾患の心電図の特徴(8
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『アクティブ心電図』 (著者)田中喜美夫/2014年3月刊行/ サイオ出版