心筋変性疾患の心電図|各疾患の心電図(6)
心電図が苦手なナースのための解説書『アクティブ心電図』より。
[前回の内容]
今回は、心筋変性疾患について解説します。
田中喜美夫
田中循環器内科クリニック院長
〈目次〉
はじめに
心筋変性疾患とは、全身疾患の一部として心筋障害をきたす疾患の総称です。原因不明の心筋障害を特発性心筋症(肥大型心筋症、拡張型心筋症など)というのに対して続発性心筋症とよぶこともあります。
代表的なものを2つ解説しましょう。
心サルコイドーシス
どんな疾患か
サルコイド結節という肉芽腫が全身臓器に発生する原因不明の難病です。肺病変や眼病変が有名ですが、心筋に発生する場合を心サルコイドーシスといいます。心室中隔に病変があることが多く、ヒス束、脚などを障害して伝導障害をきたすのが特徴的です。
心電図所見は
初期は1度房室ブロック程度の所見しかありません。病変が脚に及べば脚ブロックとして心電図に現れ、広範囲の伝導系、あるいは心房と心室をつなぐ伝導路であるヒス束に及べば、完全房室ブロックとなります。
注意点は
初期に伝導障害で発症する例も多く、伝導障害に注意してください。病気が進行すると広範な心筋障害をきたし、左室機能不全から心不全となり、心室性の不整脈をきたすことがあります。ステロイド薬の投与が一般的な治療法です。
心アミロイドーシス
どんな疾患か
アミロイドという異常タンパク質が全身臓器に沈着する難病で、心臓の間質に沈着して心筋障害をきたす場合を心アミロイドーシスといいます。左室心筋は肥厚しますがアミロイドと浮腫によるもので、収縮力は低下します。
心電図所見は
低電位、前胸部のR波の増高不良が見られることがありますが、左室の障害を反映しています。また異常Q波が見られることがあります。心房細動、さまざまな伝導障害が見られる場合もあります。
注意点は
心アミロイドーシスはきわめて予後不良で、診断から数年で心臓死に至ります。とくに多いのは不整脈死で、心室細動、完全房室ブロック、心静止など致死性不整脈が出現します。治療抵抗性の場合が多く、心アミロイドーシスと診断がついている場合は常に重症不整脈の出現を予想しておきましょう。
[次回]
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『アクティブ心電図』 (著者)田中喜美夫/2014年3月刊行/ サイオ出版