経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)|内分泌系の検査

『看護に生かす検査マニュアル』より転載。
今回は、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)について解説します。

 

高木 康
昭和大学医学部教授

 

〈目次〉

経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)とはどんな検査か

経口ブドウ糖負荷試験(OGTT:oral glucose tolerance test)は、施行前数日間普通の食生活にあることを確認する。10時間以上の絶食後、早朝50gまたは75gブドウ糖に相当する経口糖忍容力試験用糖質液(トレーランG)をおよそ5分間で摂取させ、人工的に血糖値が上昇する環境をつくり出し、30分ごとに2時間にわたり採血する(採血間隔は医師の指示による)。

 

血糖値と同時にインスリン値を測定することも有用である。尿糖を測定すると、糖排泄閾値の予測が可能であり、腎性糖尿を除外することができる。

 

経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)の目的

糖尿病の診断は、ただ糖尿病であるかどうかを確定するだけでなく、糖尿病であればその重症度、病型、病期、合併症の有無までを総合的に検討し、状態を正しく把握しなければならない。

 

また、疑わしいケースや境界例などは通院させながら経過観察していく必要があり、一時点の血糖測定だけでの診断は難しい。

 

測定結果を基準と比較し、家族歴や症状、その他の採血の結果などと併せて糖尿病診断の1つの判断材料とされる。

 

判断材料の1つとして75gOGTTを施行する。

 

空腹時血糖値と75gOGTTによる判定基準(表1)に従い、糖尿病型・正常型・境界型のいずれかに判定する。

 

表1空腹時血糖値※1および75gOGTTによる判定区分と判定基準

空腹時血糖値および75gOGTTによる判定区分と判定基準

 

※1 血糖値は、とくに記載のない場合には静脈血漿値を示す。
※2 正常型であっても1時間値が180㎎/dL以上の場合は180㎎/dL未満のものに比べて糖尿病に悪化する危険が高いので、境界型に準じた取扱い(経過観察など)が必要である。また、空腹時血糖値が100~109mg/dLは正常域ではあるが、「正常高値」とする。この集団は糖尿病への移行やOGTT時の耐糖能障害の程度からみて多様な集団であるため、OGTTを行うことが勧められる(75gOGTTが推奨される場合を参照)
(日本糖尿病学会糖尿病診断基準に関する調査検討委員会:糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告.糖尿、53:457、2010より一部改変)

 

75gOGTT が推奨される場合

1)強く推奨される場合(現在糖尿病の疑いが否定できないグループ)

  • 空腹時血糖値が110~125㎎/dLのもの
  • 随時血糖値が140~199㎎/dLのもの
  • HbA1c(NGSP)が6.0~6.4%[HbA1c(JDS)が5.6%~6.0%]のもの(ただし明らかな糖尿病の症状が存在するものを除く)

 

2)行うことが望ましい場合(将来糖尿病の発症リスクが高いグループ)

高血圧脂質異常症、肥満など動脈硬化のリスクをもつものは、特に施行が望ましい。

 

  • 空腹時血糖値が100~109mg/dLのもの
  • HbA1c(NGSP)が5.6~5.9%[HbA1c(JDS)が5.2%~5.5%]のもの
  • 濃厚な糖尿病の家族歴や肥満が存在するもの

 

経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)の実際

1経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)の検査前の患者説明

  1. 検査の必要性・目的について医師から説明をする。
  2. 検査は朝空腹時(朝まで10時間以上絶食)に行う。検査の方法・手順について説明し、患者の承諾と理解を得ておく。
  3. 飲水は水のみ可能(ただし、トレーランGを1本内服できることが可能な範囲)。
  4. 内服薬:糖尿病薬は禁止。他内服薬は医師の指示による。
  5. 検査終了まで絶食とする。
  6. 検査開始から検査終了まで運動喫煙は控える。
  7. 炭酸水が飲用できるかを確認し、採血を30〜 60分ごとに4~5回採血・採尿をする。

以上を前日までに患者へ説明する。

 

2経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)の必要物品

・ 無水ブドウ糖75 gを水に溶かしたもの、またはでんぷん分解産物の相当量(例えばトレーランG(50gまたは75 g)1 本)
・ 栓抜き ・紙コップ
・ 採血用スピッツ(血糖用)
・ 採用スピッツ ・採尿カップ(必要時)
・ アルコール綿またはアルコール綿かぶれのある人用の消毒綿
・ 真空採血管スピッツ用ホルダー
・ 真空採血管用採血針(22 、23 G)
・ 駆血帯

 

3経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)の検査当日

  1. 患者来院後患者確認後、検体スピッツの種類・患者氏名の確認をする。
  2. 10時間以上禁食しているかを確認する。
  3. 再度検査の流れを説明し、検体採取時刻・検査終了時刻を説明する。
  4. 必要物品をトレイに準備する。
  5. 検査終了まで絶食を遵守するよう説明する。
  6. 空腹時採血および採尿を行う。
  7. トレーランG1本を内服する。
  8. 飲み終わった時間を明記し、30分、60分、120分等指示の時間を説明し必要量を指示の時間に採血・採尿する。
  9. 気分が悪くなったら、医療者に声をかけるよう説明する。

 

経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)に関する患者との問答例

おはようございます。これから、昨日ご説明いたしました検査を始めさせていただきます。お目覚めになられてから、何か飲んだり食べたりはなさっていませんか。

 

はい。昨日言われましたので。今日は薬も飲んではいけないんですよね。

 

そうです。今は飲まないでください。検査が終わりましたらお食事もお薬もいつも通りに、また始めていただきます。検査が終了したときにもう一度ご説明いたします。

 

なるべく安静にするよう言われた上に食事もできなくて暇だから、煙草でもと思ったら、それもダメだって言われて…何度も採血で痛い思いもしなくちゃならないし、つらそうだなあ。

 

そうですね。検査が終わるまでは大変ですが、正確な結果が出てつらい検査が1回で済むように、今からの3時間は我慢をしてください。がんばりましょう。

 

そうだね。やり直しは勘弁だからね、がんばりますよ。よろしくお願いします。

 

※編集部註※

当記事は公開時点で、75gOGTTが強く推奨される場合の空腹時血糖値に誤りがございました。

2024年11月7日に、正しい情報に修正しました。修正の上、お詫び申し上げます。

(誤)空腹時血糖値が100~125㎎/dLのもの

(正)空腹時血糖値が110~125㎎/dLのもの

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版

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