関節穿刺|整形外科の検査
『看護に生かす検査マニュアル』より転載。
今回は、関節穿刺について解説します。
高木 康
昭和大学医学部教授
〈目次〉
関節穿刺とはどんな検査か
関節穿刺とは関節内に注射針を刺入し、関節液の一部採取や除去、または関節に直接薬液を投与するなどの一連の行為のことである。
関節造影の場合、まず関節穿刺を行い、造影剤や空気を注入し行われる。
関節穿刺の目的
関節炎
半月板損傷や退行性疾患
- 関節造影(MRI で診断が可能となり、施行頻度は少ない)。
- 関節に薬液を投与。
- 関節液の除去:穿刺をして水腫か血腫かを判断する。靭帯・軟骨損傷、骨折の場合は血性の液が引けることが多い。その液の中にキラキラした脂肪滴がみられるときは、骨折を合併していると考えて治療を行っていく。
関節穿刺の実際(膝関節穿刺)
- ①検査の説明をする。
- ②必要物品をそろえる。
- ③バイタルサインの測定をする。
- ④患者を仰臥位にして膝関節を伸展位とし、十分に露出する。
- ⑤医師は大腿四頭筋を弛緩させ、膝蓋骨を動かし、膝蓋大腿関節の関節裂隙を探り、穿刺部位をある程度決定しておく(膝蓋骨上方1/ 3の位置の内側、また外側1㎝の場所が目安。図1)。
- ⑥必要物品を無菌的に準備する。
- ⑦医師に消毒薬(イソジン)を渡す。
- ⑧医師は穿刺部位(関節外側)の消毒を行う。
- ⑨医師は滅菌手袋を装着する。
- ⑩医師に関節液を引くための注射器と注射針を渡す。
- ⑪医師は関節軟骨を損傷しないように穿刺し、関節液の採取、除去を行う。
- ⑫関節内に薬液を注入する場合には、注射針を抜かず注射器のみを交換し、薬液注入をする。
- ⑬穿刺針の抜去後、滅菌ガーゼを医師に渡し止血後、消毒し絆創膏などで保護する。
- ⑭使用物品の片付けを行う。
関節穿刺前後の看護の手順
1)患者への説明
- 関節穿刺は患者によって目的が異なるため、医師に確認し、患者に適した説明を行う必要がある。
- 穿刺時、身体的苦痛を伴う検査であるため十分な説明が必要である。
2)検査前の処置
- ①処置当日は感染予防のため入浴ができないため前日に済ませておく(関節は感染に対して抵抗力が弱い)。
- ②バイタルサインの測定をする。
- ③必要物品をそろえる。
- ・注射器 ・注射針 ・消毒薬(イソジン)
- ・処置用シーツ ・滅菌手袋 ・滅菌ガーゼ
- ・鑷子 ・滅菌スピッツ ・絆創膏
- ・膿盆、鋭利物廃棄ボックス
- ④医師が施行しやすい環境をつくる。
- ⑤無菌操作で行える空間をつくる。
3)検査中
- ①不必要な露出は避け、保温に注意する。
- ②患者の体位の介助をし、適時声かけを行い不安の軽減に努める。
- ③穿刺中の患者の状態を観察し、異常時は医師に報告する。
4)検査後の管理
- ①バイタルサインを測定し、疼痛、熱感、発赤、出血などの有無を観察する。
- ②ナースコールを患者の手元に設置し、何かあれば押すように説明する。
- ③検査翌日、穿刺部位を観察し、感染兆候、疼痛、熱感、発赤、出血などがなければ入浴を許可する。
関節穿刺において注意すべきこと
- 穿刺による化膿性関節炎を生じないように、無菌的操作、感染予防に努めることが必要である。
関節穿刺における患者さんとの問答例
針を刺して検査をすると聞きましたが、痛いですか。
少し痛いと思いますが、痛みが強かったり、気分が悪くなるようでしたら、そばにいますので我慢なさらずにおっしゃってください。
処置をした後、お風呂に入ることができますか。
針を刺していますので、そこから細菌が入って感染を起こす可能性がありますので、今日はお風呂に入ることはできません。
明日、針を刺したところに異常がなければ、お風呂に入ることができます。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版