肺機能検査|呼吸器系の検査

『看護に生かす検査マニュアル』より転載。
今回は、肺機能検査について解説します。

 

高木 康
昭和大学医学部教授

 

〈目次〉

肺機能検査とはどんな検査か

肺機能とは通常、肺の呼吸機能をいう。

 

呼吸機能の異常は、換気(肺胞の空気の出入り)、肺循環、ガス交換、呼吸中枢の機能障害の4つに大別される。

 

肺機能検査は、肺への空気の出入りに関する機能を調べる検査である。呼吸計(スパイロメーター)による呼吸曲線(スパイログラム)によって測定する。

 

また、アイソトープを用いた肺換気シンチグラフィーの進歩により肺局所の換気機能を知ることができる。

 

肺機能検査の目的

肺機能検査はこれら生理機能を臨床的に評価する検査法で、疾病の病態把握、診断、治療法の選択、経過観察、手術適応の決定に有用となる(COPD、肺結核、気管支喘息、肺気腫、気管支拡張症など)。

 

換気機能はスパイログラム、ガス交換機能は動脈血ガス分析を中心に行う。

 

〈換気機能検査、表1表2

 

  1. 肺活量:深く息を吸い込みすべて吐き出した際の空気量。
  2. %肺活量:年齢・性別から算出した予測肺活量(基準値)に対しての実測肺活量の比率。
  3. 努力性肺活量:深く息を吸い込み一気に吐き出した空気量。
  4. 1秒量:努力性肺活量のうちの最初の1秒間に吐き出した空気量。
  5. 1秒率:努力性肺活量に対する1秒量の比率。
  6. 残気量:息を吐ききった後に肺内に残っている空気量。

表1肺活量

肺活量

 

※全肺気量…深く息を吸い込んだ時に肺にたまった空気量のこと

 

表2検査値の判定

検査値の判定

 

図1肺気量分画

肺気量分画

 

肺機能検査の実際

  • 肺機能検査の多くは呼吸に関するものであり、患者にとってはかなり苦痛な呼吸を要求されることが多い。
  • また、患者の意志や感情によって大きな影響を受ける。

 

肺機能検査前後の看護の手順

患者への説明

初めに肺活量を測定するため、をノーズクリップでとめ、呼吸管に接続したマウスピースを口にくわえ、静かな呼吸を数回繰り返した後、一度大きく息を吐き(最大呼気)、次に大きく行きを吸い(最大吸気)、さらに大きく息を吐く(肺活量)。これを2〜3回繰り返すことを伝える(図2)。

 

次に、努力性肺活量、1秒量を測定するため、静かな呼吸を2〜3回繰り返し、大きく息を吸い、一気に強い息を全部吐き出す(努力性肺活量)ように伝える。

 

図2スパイロメーターによる検査

スパイロメーターによる検査

 

準備するもの

 スパイロメーター

 

検査後の管理

呼吸状態の変化に注意する。

 

肺機能検査において注意すべきこと

  • 骨折、肺炎気胸禁忌
  • 3回施行して最もよい値を参考にする。
  • 疲労感が強いときはピークフローを行う。

〈メモ:ピークフロー、図3

 

スパイロによる苦痛が強く検査が不可能なとき

 

図3ピークフローメーター

 

  • 検査の目的:ピークフロー値の客観的データに基づいて喘息の重症度の判定が可能である。ピークフローの測定記録により、気道の閉塞状態を知ることができる。
  • 検査の実際:ピークフローの値として喘息状態が把握でき、自覚症状だけでは難しい発作の予測が可能である。
  • ピークフロー値の減少:予測値や個人の最高値から喘息発作が始まることが考えられる。

 

肺機能検査現場での患者との問答例

これから呼吸状態をチェックします。全力で息を吐かないと測定できません。苦しくなったら言ってください。検査は10分くらいで終了します。

 

辛いですか。

 

大きく息を吸って完全に吐いてを繰り返すので苦しいと思います。3回繰り返し一番よい値を参考にします。まず、身長、年齢を教えてください。鼻をクリップで止めます。思いっきり吸って、吐いて見てください。よろしいですか。

 

はいわかりました。

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版

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