頭部MRI検査(頭部磁気共鳴画像検査)|脳・神経系の検査
看護師のための検査本『看護に生かす検査マニュアル』より。
今回は、頭部MRI検査(頭部磁気共鳴画像検査)について解説します。
高木 康
昭和大学医学部教授
〈目次〉
頭部MRI検査とはどんな検査か
頭部磁気共鳴画像検査(magnetic resonance imaging:MRI)は、強い磁気と電波(ラジオ波)を利用して頭部の構造を描写するが、CT検査と異なり撮像条件を変えることで様々な画像を得ることができる。
CT検査と同様に水が黒、脳が灰色に描写される「T1強調画像」、T1強調画像を白黒反転させたような「T2強調画像」、脳梗塞の病巣がよりはっきりわかるようにした「フレアー画像」、新しい病巣だけが描写される「拡散強調画像」などを用いることで脳梗塞や出血の有無だけでなく、病変が新しいものなのか古いものなのかも予測することができる。さらにMRIは脳を水平断だけでなく、矢状断や冠状断画像を得ることもできる。
頭部MRI検査の目的
CT検査と異なり、骨のアーチファクトがない。またCTでは描写できない発症直後の脳梗塞や微小な病変も描写することができ、脳梗塞、脳腫瘍などの診断をするために行われる。
頭部MRI検査の実際
仰臥位で専用コイル(マスクのようなもの)を被せ頭部を固定し、大型の装置(ガントリー)に入って撮像する。頭部のMRI検査では約15〜30分程度の時間を要し、その間、ガントリーからトントン、カンカンなどの騒音が生じる。検査目的によりT1短縮型造影剤を用いることがある。
頭部MRI検査前後の看護の手順
頭部MRI検査前の看護
- 痛みは伴わないこと、検査の方法、所要時間を説明する。
- 閉所恐怖症がないか確認し、検査は機械の狭い空間内で行うことを説明する。また、連絡用ボタンの使用方法や操作室とはマイクでつながっており、検査技師と会話可能であることを説明し不安の軽減をはかる。
- 小児や精神疾患患者の場合は、安静保持のため鎮静について事前に医師に相談する。
- 体内に埋め込まれている金属製の医療器具はMRI対応型かどうかを確認する。不明な場合は、メーカーに確認し、それでも不明な場合は検査を中止する。代表的な金属製医療器具は、動脈瘤クリップ、コイル、義眼、人工内耳、インプラント、歯の矯正器具、心臓ペースメーカー、人工弁、ステント、髄内釘、人工関節、人工血管などである。
- 強い磁場が発生するため、金属類を確実に除去する。メイクや刺青には金属が含まれていることが多く火傷や腫れることがある。
- 輸液ポンプやシリンジポンプを用いて点滴をしている場合は、ルートを延ばし金属製の医療機器は検査室の外に設置する。
頭部MRI検査後の看護
- 検査を終えたことをねぎらい、一般状態に変化がないか観察する。
- ラジオ波の発熱作用により熱感を訴える場合は、人体に影響することは少ないことを説明し経過を観察する。メイクや刺青など金属が体内になかったか再確認する。
- 造影をした場合は、造影剤を排泄させるため水分摂取を促す。
頭部MRI検査において注意すべきこと
検査室は強力な磁場が発生するため、患者のみならず医療者も金属類の持ち込みには十分に注意する。車いすや酸素ボンベ、点滴スタンドなどが引き込まれた場合、重大な事故となる可能性が高い。また装置を再度起動させるには莫大なコストと時間のロスが発生する。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
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[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版