頭部CT検査(頭部コンピュータ断層撮影検査)|脳・神経系の検査
『看護に生かす検査マニュアル』より転載。
今回は、頭部CT検査(頭部コンピュータ断層撮影検査)について解説します。
高木 康
昭和大学医学部教授
〈目次〉
頭部CT検査とはどんな検査か
頭部CT検査では頭部をX線で撮影しコンピュータ処理することで頭蓋骨内部の断層画像を描写し、器質的障害を確認する。最近は、マルチスライスCT(computedtomography)と呼ばれる検出器が64〜256列程度の装置が一般的に用いられており、一度に多数の断面を撮影することが可能で、詳細な画像や3次元血管造影(3D-CTA)が可能である。また、検査時間の短縮や放射線被爆量を少なくすることが可能となっている。
頭部CT検査の目的
頭部外傷、脳腫瘍、脳出血などの診断を行う。一般的なスクリーニングでは単純CT検査を行うが、詳細な診断ではX 線吸収値の高い造影剤(主にヨード剤)を用いて正常組織と異常組織との間でX 線の吸収値の差を大きく描写する。特に腫瘍性病変の診断には造影が不可欠である。
頭部CT検査の実際
CT装置に設置された検査台に横になり、ドーナッツ型の装置の中に頭部を置き装置を回転させて360°からX線を照射し撮影する。造影CTでは、末梢静脈路を確保し造影剤を注射し撮影する。血管を造影する場合は注射直後、脳実質を造影する場合は注射から週十秒後に撮影する。造影剤は基本的に脳血液関門(brain blood barrier; BBB)を通過しないが、脳腫瘍などでBBB が機能しなくなると病変部が造影される。
頭部CT検査前後の看護の手順
1)検査前の看護
- 検査そのものは痛みを伴うことがないこと、検査中に頭部を動かすと正確な検査ができないことを説明する。
- 放射線を用いるため検査室は厚い扉で仕切られるが、検査室は操作室から常に観察しており会話も可能であることを説明する。
- 造影する場合は、数時間の絶食ができていること、造影剤へのアレルギーの有無や、造影剤との併用禁忌薬がないことを確認する。
- 小児や精神疾患患者など、協力を得ることが困難と予想される場合には、あらかじめ医師と鎮静などの事前処置について確認する。
- 眼鏡、義歯、カツラ、ヘアピンなどアーチファクトとなりうる金属類を外す。
- 検査室は装置の発熱にあわせ室温が低いことがあるため保温に注意する。
2)検査後の看護
- 検査を終えたことをねぎらう。一般状態に変化がないか確認する。
- 造影剤を注射した場合には、血管外漏出や出血の有無、アレルギー症状の出現を観察する。また、造影剤の排泄のため水分摂取を促す。必要に応じて点滴を行う。造影剤の副作用は、しばらく時間が経ってから気分不快、嘔吐、蕁麻疹などの症状が出ることがあるため継続的に観察する。外来患者の場合には、何か症状が出た際には、すぐに病院に連絡するよう説明する。
頭部CT検査において注意すべきこと
医療者は、簡便な検査と思い込みやすいが、初めての検査の場合や閉所恐怖症などがある場合、患者の不安は大きいことを念頭に置く必要がある。
CT検査で診断される疾患には、脳出血(くも膜下出血や脳内出血など)、脳腫瘍、脳萎縮、水頭症などがあるが、発症直後の脳梗塞では、器質的変化が進んでおらず描写されず、発症後約6時間で軽度吸収域と脳浮腫を認め、徐々に明確になってくる。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
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[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版