活性化凝固時間測定

『ICU看護実践マニュアル』(サイオ出版)より転載。
今回は「活性化凝固時間測定」について解説します。

 

比留間達也
市立青梅総合医療センター 看護師

田代勇気
市立青梅総合医療センター 臨床工学技士

 

 

 

Key point
  • 体外循環を行う際に投与されるヘパリン効果を判断する。

 

 

活性化凝固時間測定の目的

活性化凝固時間(ACT,activated clotting time)測定は、開心術、ECMOや血液透析など体外循環を行う際に投与されるヘパリン効果を判断するために用いられる。

 

 

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活性化凝固時間測定の測定原理

活性化凝固時間(ACT)は、セライト、カオリン、ガラス粒、シリカなどの活性化剤と、全血試料を混合して凝固を活性化させる検査法である。

 

活性化剤と全血試料が接触すると内因系凝固因子が活性化し、最終的に凝血塊が形成するまでの時間を表示する。

 

手技も簡便なためPoint of care testとしては有用だが、一方でACTはヘパリン以外にも多くの因子に影響を受ける感度、特異度ともに低い検査である。

 

 

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活性化凝固時間測定の実際

必要物品

  • 凝固測定用経過時間タイマー(ACT測定器、図1

 

図1ACT測定器

ACT 測定器 (アクタライクMINIⅡ:トライティック社)

アクタライクMINIⅡ:トライティック社

 

 

 

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測定手順

  1. 1物品準備(テストチューブに破損がないか確認する)
  2. 2テストチューブ内にある凝固活性剤を底に集める。
  3. 3血液サンプルを採取し、2mLをテストチューブに入れてスタートボタンを押す。
  4. 4凝固を促進するために攪拌する。
  5. 5テストチューブ内のマグネットの引っ掛かりがないことを確認し、テストチューブをテストウェルに入れる。ディテクターランプが緑色に点灯することを確認する。
  6. 6テストチューブ内に凝血塊を検出すると測定終了し数値が画面に表示される(基準値:90~120秒)。

 

 

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留意点

1ACTの問題点

テストチューブの種類や測定機器の違いにより同一検体を用いたとしても値が大きく異なる。

 

異常値を示した時は再測定を行う。さらにヘパリンの半減期を見越した測定間隔に注意を払う。

 

2抗凝固治療中のACTが延長しない

アンチトロンビンⅢの産生低下や消費亢進の状態(事前のヘパリン投与や感染性心内膜炎をはじめとする凝固亢進状態)、不十分な活性化時との混合、プロタミン誤投与などが原因の可能性がある。

 

3抗凝固治療中のACTに過度な延長がみられる

採血時のプライミング液の混入による血液希釈、低体温による凝固因子の不活性化、低血小板数、ワルファリンや抗血小板薬等の薬剤の影響などが原因の可能性がある。

 

※とくに過度に延長する場合には、ACT値のみで、ヘパリン投与量を調節すると、血栓症につながる可能性がある。

※人工心肺の場合、人工心肺が終了してプロタミン投与後も、血小板の減少、プロタミンの過剰投与などで、 正常値よりも過度に延長する可能性もある。

 

対策

測定値が短縮または過度に延長することの対策として、以下の方法がある。

  • ヘパリンの半減期を見越した追加投与、ヘパリンなど抗凝固薬投与プロトコールの再検討
  • プロタミン投与プロトコールの再検討
  • アンチトロンビンⅢ製剤の投与
  • 活性化剤との混合方法の再確認
  • 機器設置環境の確認(採血場所のすぐ手元にACT測定器を設置する)
  • 抗リン脂質抗体症候群、接触因子(XII因子など)低下症では、直接Xa活性を測定するなどの方法が必要

 

 

4エラーメッセージについて

「- S - 1」というメッセージはテストチューブ内のマグネットの引っ掛かりを意味する。

 

引っ掛かりが解除されないまま85秒を経過した場合、エラーメッセージが表示されるとともに停止する。

 

 

引用・参考文献 閉じる

1)血液凝固測定器アクタライクMINI Ⅱ,簡単操作マニュアル,株式会社JMS
2)宮田茂樹監修:活性化凝固時間(ACT)の測定について,http://jasect.sakura.ne.jp/wp/wp-content/uploads/2018/08/anzenseij-youhou-7.pdf
3)武田純三編:麻酔科医・集中治療医に必要な血液凝固、抗凝固、線溶系がわかる本,改訂第2版,真興交易医書出版部,2015

 

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本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『ICU看護実践マニュアル』 監修/肥留川賢一 編著/剱持 雄二 サイオ出版

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