中心静脈圧測定
『ICU看護実践マニュアル』(サイオ出版)より転載。
今回は、「中心静脈圧測定」について解説します。
間野田晶代
市立青梅総合医療センター 看護師
- 中心静脈圧(CVP:central venous pressure)値そのものは絶対値ではなく、経時的な変化をとらえ、観察していくことが重要である。
中心静脈圧測定の目的
その基準値は、3~8mmHg(4~10cmH₂O)である。
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中心静脈圧測定の実際
必要物品
- 圧力モニタリングキット
- 三方活栓
- 耐圧延長チューブ
- 輸液ルート
- ヘパリン加生理食塩液(ヘパリン3000単位+生理食塩液500mL、※ヘパリンの量は医療施設の基準に応じる)
- 水準計またはレーザーポインタ
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手順
1患者の体位は水平仰臥位とする。
ファーラー位など頭部を挙上している場合はその位置で2に進む。
2一定の基線を確保するため、第4肋間と中腋窩線の交点をゼロ点(基準点)とする。
3圧力モニタリングキットのゼロ点調節用三方活栓をゼロ点架台に付け、ゼロ点を合わせる。
4ゼロ点調節用三方活栓を患者側にoffとし、三方活栓のキャップを緩めて、トランスデューサー内の気泡を抜くためにフラッシュシステムでフラッシュし、大気に一気に開放する。
開放側が三方活栓で閉塞されていないかを確認する。
5モニター本体の「校正ボタン」を押す。「ゼロ点校正終了」と表示が出たら基本画面に戻し、モニター画面のゼロの表示と、ゼロ基線上に圧波形が直線となって描かれていることを確認する。
6三方活栓のキャップを閉め、三方活栓の方向をもとに戻し、CVP値と圧波形がモニター画面に表示されるかを確認する。
圧トランスデューサーを用いる場合、図1参照
図1圧トランスデューサーを用いたCVP測定
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留意点
1測定時の体位は基本原則として仰臥位である。体位によって測定値が異なるので、同一体位で測定する。
また、体位変換・吸引などの処置も測定値に影響するため、必ず安静時に測定する。
2患者が水平位置から起き上がったときの右心房の高さやトランスデューサーのゼロ点は、患者が起き上がっても水平のままである。
異なる高さでも正確にモニタリングするためには、トランスデューサーを右心房の高さに合わせる(図2)。
図2水平位置から起き上がったときの右房の位置
3右側臥位でのゼロ点は第4肋間と胸骨中央部の交点、左側臥位でのゼロ点は、第4肋間と左傍胸骨線の交点である(図3)。
図3側臥位でのゼロ点(基準点)
4体動・努責などが加わると、正確な測定値が得られないので、患者に目的・手順を説明し協力を得る。
5測定時間がかかると血液の逆流によりカテーテルが閉塞するため、手際よく行う。
6降圧剤・昇圧剤系の薬剤を投与しているルートでは測定しない。
CVPを測定すると薬剤が一時的にoffになり、測定後に開放することで、降圧剤や昇圧剤系の薬剤をフラッシュしてしまい危険である。
7CVPは、測定値そのものよりも経時的な変化をみていく。
CVPは循環血液量を反映するが、右心室の収縮力、静脈系の緊張度、胸腔内圧などの因子に大きく影響を受けるため、経時的な変化を捉え、尿量や他の指標と合わせて総合的に評価をすることが重要である。
8測定のタイミングは呼気終末がよい。CVPは胸腔内圧や心臓の周囲の圧にも影響を受ける。
自発呼吸、陽圧換気下において、胸腔内圧が最も大気圧に近づくのは、呼気終末であるため、その値を用いる。
9測定する前やCVP波形が正しく表示されない場合は、モニターを見ながら急速フラッシュ状態を1秒間保った後終了するダイナミックレスポンステスト(スクウェアウェイブテスト)を実施する(図4-a)。
図4心電図波形とCVP波形
問題解決には、採血時に血餅が採取されていないか、回路内に気泡がないかカテーテル先端からトランスデューサーまで確認し、必要に応じて除去していく。
また、接続部に緩みがないか、ラインに屈曲がないか確認する。短い耐圧チューブを使用するなど対応する。
気泡の混入や接続部の緩みがある場合などは、真の値よりも低く表示されてしまい(オーバーダンピングシステム、図4-b)、感度が良好過ぎて軽微な振動を拾うことで、異常に尖った波形で収縮気圧が高く表示される(アンダーダンピングシステム、図4-c)現象が起きる。
図4心電図波形とCVP波形(再掲)
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観察
表1CVP値変動の要因
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本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『ICU看護実践マニュアル』 監修/肥留川賢一 編著/剱持 雄二 サイオ出版