地域別・年代別データと離職理由 【最新】看護師の離職率は高い?
看護師は離職率が高いと言われますが、実際はどのくらいなのでしょうか?
看護師の離職率の最新データと離職理由について見てみましょう。
目次
看護師の離職率はどれくらい?
まずは、看護師全体の離職率について見てみましょう。
看護師の離職率は11.6%
日本看護協会の全国調査によると、2021年度の看護師の離職率は11.6%でした。
看護師の離職率は例年、11%前後で横ばいの傾向ですが、最新の離職率は過去10年で最も高い数値となりました。全職種※の平均離職率(11.1%)も上回っています。
※パートタイム労働者をのぞく
看護師の離職率が全職種の離職率を上回るのは、過去10年のうち2019年度に続いて2回目。日本看護協会は「新型コロナウイルス感染症の影響が一定程度あった」と見ています。
ただし、この10年全体で見れば、看護師の離職率は全職種の平均より低めの傾向ではあり、必ずしも「看護師の離職率は高い」とは言い切れないようです。
都道府県別の看護師の離職率
ここでは、都道府県別の看護師の離職率を一覧で紹介します。
2021年度の看護師全体の離職率を見ると、最も高い東京と神奈川(いずれも14.6%)をはじめ、大阪(14.3%)、千葉(13.5%)、埼玉(13.3%)などの首都圏をはじめとする都市部で高い傾向があります。
これは「通勤できるエリア内に医療機関が多く、次の就職先が見つかりやすいかどうか」といった地域事情が影響しているとみられます。
病床規模・設置主体からみる看護師の離職率
離職率の高い病院・低い病院には、どんな特徴があるのでしょうか?
看護師の離職率を、病床規模と設置主体別に紹介します。
「規模の小さい病院」は離職率が高い
病床規模の小さい病院は、看護師の離職率が高い傾向があります。
規模の小さい病院では、入職後の教育・研修体制が大病院ほど手厚くない場合もあり、給与などの待遇面でも不満を感じやすいことが離職につながっているとみられます。
「民間病院」は離職率が高い
国公立病院か民間病院かなどによっても離職率に差があります。
例年の傾向からみると、看護師の離職率は、自治体病院や日赤病院で低め、医療法人や個人病院などの民間病院で高めとなっています。
2021年度のデータをみると、離職率が高い順に「個人」(14.6%)、「医療法人」(14.4%)、「済生会」(12.3%)でした。
一方、離職率が低いのは「公立」(8.0%)、「会社」(9.3%)、「日本赤十字社」(9.4%)でした。
公的病院よりも民間病院の離職率が高い傾向にある背景には、民間病院は都市部に多く、次の転職先が見つかりやすいことや、公的病院に比べて規模の小さい病院も多いことなどが影響しているとみられます。
1年目の看護師の離職率はどれくらい?
厳しい看護実習や国試を乗り越え、晴れて看護師として働き始めたものの、理想と現実のギャップに悩み、退職を考える新卒看護師も少なくありません。
続いて、1年目の看護師の離職率について見てみましょう。
1年目で辞める新卒看護師は10.3%
日本看護協会の全国調査によると、2021年度の新卒看護師の離職率は10.3%でした。
新卒看護師のおよそ10人に1人が1年以内に病院を辞めている計算になります。
看護師全体の離職率と同じく、1年目の看護師の離職率もここ数年横ばいが続いていましたが、同一の集計方法を取ってきた2005年度以降、初めて10%を上回りました。
ただ、例年の傾向から全職種の新卒者と比べると、新卒看護師の離職率が特段高いわけではありません。
看護師の場合、一定期間勤務することで返還が免除される病院の奨学金を利用している人も多く、「返還免除の期間を過ぎるまでは…」と踏みとどまるケースがあることも影響しているでしょう。
都道府県別の新卒看護師の離職率
新卒看護師の離職率は、都道府県によってかなりばらつきがあるようです。
2021年度のデータを見ると、新卒看護師の離職率が最も高かったのは香川(17.1%)で、全国平均を約7ポイント上回っています。次いで栃木(14.3%)、長崎(13.3%)での離職率が高くなっています。
病床規模・設置主体からみる新卒看護師の離職率
新卒ナースの場合も全体の傾向と同じく、「病床規模が小さいほど離職率が高い」「公的病院より民間病院のほうが離職率が高い」傾向です。
特に「99床以下の小規模病院」では例年、新卒の離職率の高さが目立ちます。
「看護師の離職率は高い」と思われている訳
他職種と比べて、実はそこまで差がない「看護師の離職率」。
それでも「看護師の離職率が高い」というイメージがあるのは、なぜなのでしょうか?
「業務がハード」「資格職で転職が身近」だから
看護師の離職率が高いというイメージのひとつに、「看護師=肉体的にも精神的にもハードな仕事だから」というものがあるでしょう。
慢性的に人手不足で、忙しさと給料が見合わないと感じる看護師は多く、「辞めたい」「転職したい」という声が聞かれやすい職場環境であることが「離職率が高い」イメージにつながっているのかもしれません。
また、全国的に看護師不足が続いていることから、「看護師は求人も多く、転職が比較的容易な職種」と思われているところも、看護師の離職率が高いというイメージに影響していそうです。世間一般からも「看護師は資格職で、どこでも働ける」印象があるでしょう。
このほか、特に新型コロナの影響で離職者が相次いだニュースなどもあったことから、そのイメージがさらに強まった可能性があります。
看護師が離職する4つの理由
看護師が病院を辞める理由として、大きくわけると、主に4つが挙げられます。
勤務環境に不満がある
病院は慢性的に看護師不足で、現場は常に余裕がありません。看護師1人あたりの業務量は増える一方です。
前残業や後残業が当たり前で勤務時間が長い、夜勤の回数が多い、心身への負担が大きくボロボロ…など、過酷な勤務に離職を決意するケースが多いようです。
また、ハードワークのわりに給料が少ない、休みの日なのに院内の勉強会が多い、時間外手当がつかないなどの待遇面の不満も、離職のきっかけになります。
人間関係がしんどい
他の職種に比べ、看護師の場合、人間関係に疲れてしまったという人は多いでしょう。
看護師という命を預かる仕事の性質上、ミスに対するお互いの目が厳しくなりがち。忙しさや疲れからか、コミュニケーションにも余裕がなくなって、人間関係のきしみを感じるような職場では、なかなか踏ん張りがききません。
「患者さんのために、もっと自分らしく働ける場所」を探そうと離職する人も多いようです。
結婚・出産で続けられない
看護師は圧倒的に女性が多い職業。結婚や出産・育児のライフイベントを迎える20~30代は、離職率も高まります。
最近は希望通りに育児休業を取得できたり、院内保育所を整備したりと、復帰をサポートする病院が増えていますが、「子どもが小さいうちは復職しても夜勤ができないから」「しばらく育児に専念したい」などで、いったん看護の仕事から離れる選択をする人もいます。
スキルアップ、キャリアアップしたい
看護師はステップアップ・キャリアアップを目的とした離職が多いのも特徴です。
関心のある領域・業務に携われる病院で働いてみたい、教育・研修の体制が充実したところで認定看護師を目指したい、留学・進学したいなど、新たな経験を求めて離職する人が多いのは、資格職である看護師ならではかもしれません。
離職してもいい?今の職場を辞めるか悩んだら…
「勤務時間が長くてつらい」「人間関係に悩んでいる」など、今の職場を辞めたい場合には、まず何をしたらよいのでしょうか?
転職の目的と条件を書き出そう
今の職場を辞めたいという気持ちがあったら、まずは「なぜ転職したいのか(目的)」と「転職で叶えたいこと(条件)」を書き出してみましょう。
たとえば
- 多忙な病棟で常に慌ただしく、身体的につらい
- 職場の人間関係が悪い
- 残業や夜勤が多く、休みが少ない
- もっと給料の良い条件で働きたい
- スキルアップしたい
- 結婚・出産・育児と両立できる環境で働きたい
など、漠然とした「辞めたい気持ち」の背景にどんな理由・目的があるのか、自分の中で整理することが大切です。
転職活動とは、今の職場や働き方に抱える不満を解消するために行うものです。「なぜ転職したいのか」が見えてくれば、おのずと「転職で叶えたいこと」も自然と決まってくるでしょう。
キャリア・スキルを振り返ろう
「今の職場を辞めたい」と思ったら、自分のキャリア・スキルを振り返ることも大切です。
転職活動では「看護師として、どんなキャリア・スキルを積んできたか」を伝える場面が多くあります。
たとえば
- 看護師になった理由
- これまでどんな経験を積んできたか(病棟・領域について/患者さん・疾患について/ケア・業務について/院内の役割について…など)
- これまでの経験でどんな思いを持っているか、どんな看護がしたいか(看護観)
- 身につけたスキル、資格
などを振り返ってみると、自分の長所や強みがわかり、自分に合った職場を探しやすくなります。
まずは誰かに相談してみよう
「辞めたい」という気持ちが強くなっているときは、どうしても視野が狭くなってしまうもの。不安や悩みは一人で抱え込まず、誰かに相談することで視野が開けることもあります。
職場の人や学生時代の友人に話しづらければ、看護師の転職を専門的に支援している転職エージェントに相談してもいいでしょう。転職のプロが「本当に転職して良いのか?」アドバイスに乗ってくれます。