実態や成功のコツを解説 看護師1年目で転職しても大丈夫なの?
1年目の看護師でも転職はできるのでしょうか?その実態や、転職を成功させるためのコツを紹介します。
目次
看護師1年目で転職するのって、正直どうなの?
1年目で転職を考える看護師は増えている
日本看護協会が2021年に実施した調査によると、1年目(新卒)看護師の離職率は8.2%。
ここ数年は同水準で推移しており、12人に1人ほどの看護師が1年目で退職している計算になります。
一見やや高く感じるかもしれませんが、厚生労働省の調査によると、1年目離職率の全職種平均は約11%(大卒のみ)。
他の職種に比べると、看護師の離職率はむしろやや低い傾向にあると言えます(※)。
※出典
・2021年 病院看護・外来看護実態調査|日本看護協会
・新規学卒就職者の離職状況を公表します|厚生労働省
一方で、看護roo!転職サポートのキャリアアドバイザーによると、1年目で転職を考える看護師は、2020年以降少しずつ増えてきているようです。
その理由は主に下記の3つ。
これらの背景にあるのは、やはり新型コロナウイルス感染症です。
コロナ禍で病棟全体が慌ただしくなり「先輩がいつも忙しそうで声をかけられない」「丁寧な新人教育をしてもらえない」など、教育体制に不安を感じる場面が多くなったことで、転職を考える1年目看護師が増えてきているようです。
また、世間一般で在宅勤務や外出自粛をする人が増えた結果「プチ整形」などの美容ニーズが拡大したことも理由のひとつ。
結果、臨床経験が十分でなくても応募しやすい美容クリニックの求人数が増え、1年目で転職する看護師も多くなったようです。
さらに、こうした状況で実際に1年目で転職した同期に影響されて「それなら私も考えてみようかな」と、同世代の間で全体的に転職に対する興味・感心が増していることも背景にあるようです。
キャリアアドバイザー
「まずは相談」というかたちで転職サービスを利用してみる1年目の看護師さんは、毎年増えてきている印象です。
でもやっぱり選択肢は限られる…?
1年目で転職を考える看護師は増えてきているものの、応募できる求人の種類はどうしても少なくなってしまうのが実情です。
1年目の看護師はほとんど新人、未経験としての採用になるため、
募集のある病院は下記のようなところに絞られてしまうからです。
1年目でも募集のある求人
- 教育体制が整っている規模の大きな病院
- 臨床経験があまり求められない美容クリニック
- 社会的ニーズが高まっている訪問看護ステーション
規模の大きな病院であれば、1年目の看護師でも受け入れる体制が整っているところも比較的多いでしょう。
また、美容クリニックでは医療処置を行うことがほとんどないため、臨床経験の浅い1年目でも転職しやすい傾向があります。
加えて訪問看護ステーションは、昨今のニーズの高まりにともない求人数が増えてきています。
また、慣れないうちは先輩が同行したり、症状の軽い患者さんを担当したりと、新人に対する配慮や教育が整っているところもあります。
こうした職場であれば、1年目であっても転職のチャンスがあるようです。
1年目にはハードルが高いところも
一方で、教育体制が整っていない、あるいは臨床経験が求められるような病院・施設の場合、1年目での転職はハードルが高いようです。
具体的には下記のようなところが挙げられます。
1年目だと転職が難しい求人
- 小規模のクリニック
- 効率・手技重視の健診センター
- 高度なスキルが必要な三次救急の病院
- 看護師1人体制の介護施設
- 臨床経験が必須の保健師
こうした病院・施設ではどうしても経験者が優先して採用されるため、1年目の看護師ではなかなか転職しづらいと言えます。
Point!
採血や点滴ができれば選択肢が増える?
1年目の看護師でも、採血や点滴の処置が得意だった場合、クリニックや健診センターなど、応募できる求人数が増える可能性があります。
採血や点滴は、いわば看護師の基本スキル。
それらをきちんとこなせるのであれば、1年目でも採用されるケースはゼロではないようです。
1年目でも採血や点滴を行う機会が多かった人は、転職先の選択肢が増える可能性があります。
履歴書や面接では、スキルのレベルや具体的な処置内容などについて積極的にアピールしていきましょう。
3年頑張れば、選択肢が増える!
1年目での転職を決断する前に、ひとまず今の職場で丸3年頑張れば、転職先の選択肢がぐんと増えることも知っておきましょう。
実態として「臨床経験3年以上」を応募の必須条件としている求人が多いからです。
逆に美容クリニックなど、医療処置が比較的少ない病院・施設はたしかに1年目でも転職しやすいものの、軽い気持ちで転職するのはおすすめできません。
そうした病院・施設ではどうしても看護師としてのスキルを身に付けにくく、1年目で転職した場合、次に転職するときの選択肢が限られてしまうからです。
再び病棟勤務に戻ることが難しくなるケースもあります。
看護師1年目で転職すべきかどうか迷っている場合は、看護師としてどのようなキャリアを歩んでいきたいかをきちんと考えた上で、慎重に判断しましょう。
それでも辞めたいなら「臨床経験」が積めるところに転職
それでもやっぱり「先輩が厳しすぎて出勤するのがつらい」「残業が多すぎて体調を崩している」など、とても今の職場で頑張れる気がしないという場合、少しでも労働環境が良い病院に転職し、臨床経験を積むのがおすすめ。
たとえその転職先が理想の職場ではなくても「病院での臨床経験3年」は、次の転職で非常に大きな武器になります。
将来的に自分の望む職場で働くためのステップとして、まずは3年の病院勤務を乗り切れないか、考えてみましょう。
キャリアアドバイザー
1年目での転職は求人選びに難しさがあるものの、内定が出ないというわけではありません。
より良い職場で働くために、次の章では転職成功のポイントや注意点を解説していきますね。
1年目看護師が転職を成功させるためのコツ
1年目の看護師が転職を成功させるために大切なポイントを3つ紹介します。
一つずつくわしく見ていきましょう。
退職理由を具体的に伝える
1年目で転職する場合、上の年次に比べて面接では退職理由についてかなり詳しく聞かれます。
その際、採用側に納得してもらえるよう、退職理由を具体的に伝えることがポイントです。
1年目の看護師が転職する場合、採用側は経験年数そのものよりも「どうして1年未満で辞めたいのか」という退職理由を気にしています。
「1年も続けられないなら、ウチもすぐに辞めてしまうのでは?」と思われないよう、退職理由を具体的に伝えて納得感を持ってもらう必要があります。
また、退職理由だけを語ってしまうとどうしてもネガティブな印象になってしまうので、退職理由を述べたあとは、続けて応募先への前向きな志望動機を伝えるようにしましょう。
具体的には、下記のような伝え方をしましょう。
「残業が多かった」退職理由の伝え方
業務の効率化を図っても、どうしても残業時間が60時間を超える月が続いており、業務外で勉強する時間が取れなかったり、十分な看護ができていないことにもどかしさを感じておりました。「患者との対話」を看護方針として掲げている貴院であれば、より患者一人ひとりに合わせたケアを実践できると思い、転職を決めました。
キャリアアドバイザー
上記の伝え方はあくまで一例です。何をどこまで伝えるかは、転職時の状況や応募先によって変えましょう。心配な場合、看護roo!転職サポートまで気軽にご相談ください。
長く働きたいという意欲を示す
1年目で転職する場合、履歴書や面接では「次こそは長く働き続けたい」という意欲をはっきりと示すことが大切です。
採用側は「ウチもすぐに辞めてしまうのでは?」と考えているため、そうではないことを強調する必要があるからです。
そのためには「貴院の◯◯という看護観に惹かれた」「在宅医療でその人らしい生活のサポートや、看取りを学んでいきたい」といった応募先への前向きな志望動機を伝えることが鉄則。
同時に「今回は短期での離職になってしまいましたが……」などと話し始めに添えることで、自責の念を伝えることもポイントです。
キャリアアドバイザー
一方、今の職場への不満を長々と話すのはNG。
前向きで健気な印象を持ってもらえるよう、応募先への熱意や長期就業への意気込みなど、ポジティブな内容を伝えましょう。
3~4つの病院に同時に応募する
1年目に限らず、転職活動では3~4つほどの病院に同時に応募するのがおすすめ。
とくに1年目の場合、他の職場や働き方をよく知らないがゆえに、自ずと選択肢を狭めてしまっていることも。
いくつかの病院を「併願」し、それぞれの特徴やメリット・デメリットを比較検討しましょう。
そうすることで自分にあった働き方や職場の条件が少しずつ明確になっていき、長く働き続けられる職場が見つかりやすくなります。
とくに面接で実際の職場に足を運ぶと、スタッフの人柄や院内の雰囲気など、さまざまな発見があるでしょう。
面接を受けたからと言って、必ずしも転職しないといけないわけではありません。
情報収集のつもりで、まずはいくつかの病院に応募してみると良いでしょう。
キャリアアドバイザー
一つずつの応募だと、他の候補者に先を越されてしまうことも。
応募しているのは自分以外にもいることを前提に、フットワーク軽くスピーディに行動できるかもポイントです。
いくつかの病院に応募してみた結果「やっぱり今の職場で頑張ってみよう」と考え直すこともあるでしょう。
その選択もまったく問題ではありません。
とくに1年目は新卒で入職した病院以外の職場について、知らないことばかりなのは当然です。
転職活動を通じてさまざまな病院に出会う中で、初めて自分の職場を客観的に見つめることができるようになります。
もし「他の病院と比べたら恵まれているんだな」と、今の職場の良さに気付けたなら、その思いはコツコツ頑張るための原動力になるでしょう。
「辛いけど転職すべきかどうかわからない」とモヤモヤしている場合、実際に転職するかどうかにかかわらず、まずは転職活動を始めてみると良いかもしれません。
早くも辞めたい…1年目看護師によくある悩み
最後に、看護roo!が約1,300人を対象に行ったアンケート結果から見えてきた、1年目の看護師が抱えがちな5つの悩みを紹介します。
業務量が多く、残業しがち
1年目看護師に最も多い悩みが「業務量が多く、残業しがち」というもの。
1年目は入職したてで業務に慣れていないため、ひとつひとつの処置や連絡などにどうしても時間がかかります。
その上、とりわけ教育体制の整っていない病院や人手不足の病院では、1年目の看護師でも他の看護師と同様の業務量を任されることが多いため、任された仕事が業務時間内に終わらず、結果として残業せざるを得なくなってしまうのです。
加えて1年目看護師のほとんどが「夜勤あり」で働いているため、生活リズムの変化にカラダがついていかず、業務量や残業時間の多さと相まって、体調を崩してしまう人もいます。
先輩・上司が怖い
「先輩・上司が怖い」というのも、1年目看護師によくある悩みです。
日常的に忙しい医療現場では、人の命を預かっているという緊張感や業務量の多さゆえに、どうしても落ち着いて丁寧に指導する余裕がないケースも少なくありません。
そうした実情を頭ではわかっていても、張り詰めた雰囲気や厳しい指導に萎縮し、つらくなってしまう1年目看護師が多いのも事実。
中には適切な指導の域を超え、他のスタッフの前で厳しく叱責されたり、挨拶や報告を無視されたり、他の同期と扱いの差をつけられたり……といったパワハラ行為が繰り返された結果、退職や体調不良に至ってしまうケースもあります。
給料・ボーナスが低い
1年目看護師からは「給料・ボーナスが低い」という声もよく聞きます。
前提として、1年目看護師の平均月給は23万7,600円、平均ボーナスは年間4万8,700円。
全業種の1年目社員の平均月給は21万4,000円、平均ボーナスは年間2万3,400円なので、看護師が同年代の他の職種と比べて給料・ボーナスが低いわけではありません(※1)。
ただ、看護師は責任が重い仕事であることに加え、夜勤があり残業も多くなりがちなことから、仕事内容や労働時間に見合っていないと感じることが少なくないようです。
また、極端な例ではありますが、アンケートでは「残業代の支給は3ヶ月目からと言われた」「1年目はボーナスが支給されなかった」といった声もありました(※2)。
そうした説明が入職前にされていない場合、いざ給料日やボーナス支給日になったとき、ショックを受ける1年目看護師が多いようです。
(※1)
・出典:令和3年 賃金構造基本統計調査|厚生労働省
・月給・ボーナスの金額は看護師と全業種でそれぞれ、経験年数(勤続年数)が「0年」かつ年齢階級が「20~24歳」の男女の「所定内給与額」「年間賞与その他特別給与額」を参照
・「所定内給与額」には残業代や手当は含まれない
(※2)法律上、勤続期間がどれだけ短くても、残業代が支払われないのは違法です。一方、ボーナスについての法律はないため、その有無や金額は病院の裁量に委ねられており、違法になるケースは少ないでしょう。
責任・プレッシャーがキツい
「責任・プレッシャーがキツい」という1年目看護師も少なくありません。
慣れない中で、とりわけ救急対応や重症患者の多い部署や病棟などに配属された場合「自分のミスが患者さんの生死を分けるかもしれない」などと、精神的な負担が大きくなるのは当然でしょう。
さらにコロナ禍で病棟全体が慌ただしかったり、人手不足だったりで教育体制・研修制度が整っていない病院では、適切な指導やフォローが受けられないことも。不安を誰にも打ち明けることができない孤独感の中「私は看護師に向いていない」などと、精神的に疲弊してしまう人もいます。
考え方・看護観が合わない
1年目看護師の悩みとして「考え方・看護観が合わない」というものもあります。
例えば「仕事の進め方を先輩から否定される」といったものから「急性期で業務量が多く、患者さんとじっくり関われない」といったものまで、悩みの内容はさまざま。
とくに1年目看護師の場合、学生時代に考えた自分なりの「看護」を実践したいと意気込んでいたものの、実際の病棟は忙しすぎてそうした余裕がなく、理想と現実のギャップに悩むケースが多いようです。
1年目で転職した看護師の体験談
最後に、実際に1年目で転職した看護師の体験談を3つ、ご紹介します。
人間関係が改善されストレス軽減
(総合病院→療養型病院 20代後半女性)
もともとの希望とは違ったICUで重症患者の対応をしなければならず、責任やプレッシャーが重いと感じていました。
コロナ禍ということもあり病棟全体が忙しく、先輩や医師からはそっけない態度を取られ、適切な指導を受けることもできませんでした。
そうした理由で転職を決断したのですが、転職エージェントの担当者には、とにかく人間関係を改善したいと伝えました。
連日面接が入って転職活動はかなり大変でしたが、最終的に今の療養型病院に決まりました。
療養型病院で医療処置が少ないということもあり、仕事内容には少し物足りなさを感じることもありますが、プライベートで自主的な勉強を心がけています。
課題だった人間関係はかなり良くなり「仕事がつらい」という思いは軽減されたので、転職に成功できたと感じています。
やりがい重視で子どもと関わる職場へ
(総合病院→保育園 20代前半女性)
もともと小児科を希望していましたが、新卒で入職した病院の小児科は今後なくなることが決まっていたため、転職を考え始めました。
転職サポートを使わずに自己応募だったため、転職先の情報収集には苦労しましたが、さまざまな求人を比較検討しながら、自分はどんな働き方がしたいのかを少しずつはっきりさせていきました。
「子どもと関わりたい」という思いのもと、最終的には保育所への転職が決まりました。労働時間は大幅に減り、病院で働いていたときにはなかった精神的な余裕がある上に、大好きな子どもと関われる喜びがあり、とても満足しています。
理想の看護が実践できるように
(総合病院→訪問看護ステーション 20代後半女性)
転職前は病院全体が人手不足だったということもあり、業務量が多く、十分なケアや看取りができないことにもどかしさがありました。
忙殺される日々の中「自分の望む看護ができていないのでは?」と、転職を考えるようになりました。
転職活動では、自分が本当は何をしたいのかを紙に書き出し、自問自答しました。
結果、ひとりひとりの患者さんとじっくり向き合うことのできる訪問看護の道を選びました。
1人での訪問は責任やプレッシャーを感じるものの、自分の看護観に合った働き方ができているように感じます。
キャリアアドバイザー
上記の3人の方のように「転職によって何を叶えたいのか」をはっきりさせ、その軸をしっかり持っていれば、1年目での転職も成功させることができます。
そうした「転職の軸」を相談しながら見つけた上で、条件に合う転職先を一緒に探していきましょう。
転職すると決めたら、まずは流れをチェック
実際に転職すると決めたら、次は転職活動の流れをチェックしておきましょう。
転職活動は下記のような流れで進むことが一般的です。
まずは具体的な応募先を決め、履歴書を作成・提出したのち、面接を行います。無事内定が出たら、退職手続きを進めましょう。
看護roo!転職ガイドでは、転職活動にまつわるさまざまな記事を用意しています。
具体的なノウハウや気になるポイントをわかりやすく解説しているので、転職活動を進める上で、ぜひ活用してみてください。
※アンケートについて
・転職サポートサービスを提供する看護roo!が、看護roo!ユーザーを対象に、転職活動における悩みや転職のきっかけなどについてのアンケートを実施。
・実施時期:2022年7月
・対象:看護roo!ユーザー(3年以内に転職経験のある看護師・准看護師さんのみ)
・回答者数:1,338人