公認心理師に看護師がなるには?受験資格や年収・メリットを解説
公認心理師は、心理カウンセリングを行う資格の中で、唯一の国家資格です。臨床心理士と並び、心理カウンセラーを目指す方などに人気の資格ですが、キャリアアップを目指す看護師さんにも注目されています。
この記事では、公認心理師になるための受験資格、仕事内容、試験の難易度、看護師が取るメリットなどを解説します。
目次
公認心理師とは
公認心理師とは、心理学に関する専門知識や技術を用いて、うつ病などの精神疾患や、統合失調症などの精神障害など、心理的な支援を必要とする人をサポートする専門家です。
公認心理師は、公認心理師法に基づく心理分野における唯一の国家資格です。心理系の大学の履修などを終えて、国家試験に合格すると資格を取得できるようになります。
公認心理師の資格は2017年に創設され、現在までに約7万人の公認心理師が誕生しています(2024年8月現在)。
看護師さんの取得者もおり、心療内科や精神科でのスキルアップやキャリアアップを考える方におすすめの資格です。
公認心理師の仕事内容は?
公認心理師の仕事は、精神科や心療内科などに入院・来院する患者さんの悩みや病いに寄り添い、自分らしい日常生活を送れるようサポートすることです。
具体的には、悩みを抱える人に対しての面談やカウンセリング業務を行います。
「心理検査」などの査定(アセスメント)を行って、患者さんの心の問題の全体像や原因を探ったり、認知行動療法などの心理療法を行ってメンタルヘルスの回復を支援したりする業務も行います。
病院やクリニックに所属している場合、医師の診察の補助となる外来予診や、多職種カンファレンスなども行います。
公認心理師に看護師がなるには
公認心理師は、受験資格を満たし、公認心理師試験に合格することで取得できます。受験資格は、A・B・Cいずれかのルートで取得し、試験に挑みます。
なお、2022年度までは、「看護師として5年以上の実務経験」と「現任者講習の受講」によって受験資格を得られる「Gルート」と呼ばれる特別ルートがありましたが、現在は廃止されています。
看護師が取得できる公認心理師の受験資格
看護師として働いている人が、公認心理師の受験資格を得る方法は、Aルート・Bルートの2つのどちらかが考えられます。
なお、通わなければならない4年制大学については、心理学部が併設されている大学出身の看護師さんで、心理系科目を履修している場合、受講科目を減らせるかもしれません。受験を考える方は出身大学に確認をすると良いでしょう。
また、Bルートにおける、実務経験は、厚生労働省が指定する施設でなければ認められません。Bルートでの受験を考えている人は、厚生労働省のホームページで事前に施設を確認しておきましょう。
公認心理師試験のスケジュール・試験内容・試験会場など
公認心理師の試験は、年1回、東京と大阪で行われます。試験の申し込みから資格取得までの流れは、以下のようになっています。
公認心理師試験の開催時期は毎年異なります。具体的なスケジュールは日本心理研修センターのホームページを確認しましょう。
試験の概要については以下の通りです。
- 試験会場:東京、大阪
- 試験時間:午前と午後、それぞれ120分ずつ
- 試験形式:マークシート方式
- 受験料:28,700円
公認心理師試験の出題範囲は「ブループリント(公認心理師試験設計表)」と呼ばれる項目に沿うこととなっています。
心理学に関する知識・技能について、心理に関する支援や職責の自覚など24項目にわたり幅広く、専門的な内容となっています。
中でも、「心理に関する支援(相談、助言、指導その他の援助)」「健康・医療に関する心理学」「福祉に関する心理学」「教育に関する心理学」の4項目は出題割合が高くなっています。
また、試験に合格した場合、受験料に加え、公認心理師の登録免許税として15,000円、登録手数料として7,200円がかかります。
公認心理師の合格率と難易度
公認心理師の平均の合格率は60%ほどになっています。
ただし、年によって46%~79%と開きがあります。
表公認心理師の合格率の推移
実施回数 | 合格率 |
---|---|
第7回(令和6年3月実施) | 76.2% |
第6回(令和5年5月実施) | 73.8% |
第5回(令和4年7月実施) | 48.3% |
第4回(令和3年9月実施) | 58.6% |
第3回(令和2年12月実施) | 53.4% |
第2回(令和元年8月実施) | 46.4% |
第1回(平成30年12月実施) | 64.5% |
第1回(平成30年9月実施) | 79.6% |
なお、合格基準は総得点の6割程度以上となっており、その年の問題の難易度によって補正されます。
合格率は高くはなく、受験資格を得ることも難しいことから、取得の難易度は高めといえるでしょう。
公認心理師と臨床心理士の違いは?
公認心理師と似た資格に「臨床心理士」があります。
臨床心理士は「日本臨床心理士資格認定協会」が実施する試験に合格すると取得できる民間資格です。
公認心理師が国家資格なのに対し、臨床心理士は民間資格で、ほかにも受験資格や更新の有無などに違いがあります。
表臨床心理士と公認心理師の違い
臨床心理士 | 公認心理師 | |
---|---|---|
位置付け | 民間資格 | 国家資格 |
受験資格 | 心理系大学院の修了 | 心理系大学及び大学院の修了 |
資格取得まで | 最低2年 | 6年 |
更新 | 5年ごと | 更新なし |
資格の役割 | ・心理査定(アセスメント) ・心理面接(カウンセリング) ・地域援助 ・調査、研究 |
・心理査定(アセスメント) ・心理面接(カウンセリング) ・関係者への面接 ・教育・情報提供活動 |
ただ、2つの資格の業務内容に、大きな違いはありません。実際に、公認心理師の7割が臨床心理士の資格も保有しており、医療や教育などの現場でカウンセラーとして働いています。
ただ、公認心理師が国家資格であることから、今後、有資格者の数は、臨床心理士より公認心理師の方が増えていく可能性はあるでしょう。
しかし、取得までには6年かかるため、資格の取りやすさで言えば、臨床心理士の方が挑戦しやすいという側面もあります。
臨床心理士については、以下の記事で詳しく取り上げています。
公認心理師と看護師のダブルライセンスのメリット
看護師が公認心理師の資格を取得するメリットは、以下の2つです。
1メンタルヘルスに関するスキルアップにつながる
公認心理師になれば、看護師としてのアプローチやケアができるだけでなく、心理分野における専門的視点から、心のケアも行えるようになります。
精神科や心療内科で活躍する看護師さんにとっては、うつ病や統合失調症などの精神疾患や精神障害のある患者さんへの対応スキルがアップします。
精神疾患や精神障害のない患者さんやご家族も、自身の病気や治療方針などに不安を抱える方は多いです。そうした方への適切な声かけやアドバイスの仕方などもしやすくなるでしょう。
2キャリアの幅が広がる
公認心理師の資格を取得すれば、キャリアの幅が大きく広がるでしょう。
まず、心理カウンセラーへのキャリアチェンジがしやすくなります。独立開業して、看護師とのダブルライセンスを生かしたカウンセリングルームを運営することもできるでしょう。
看護師として働く場合でも、精神科や心療内科などのメンタルヘルスの領域だけでなく、緩和ケアや認知症ケア、小児のリエゾンなど、心のケアを必要とする患者さんの多い診療科や病棟でも活躍できます。
まとめ
公認心理師は心理系唯一の国家資格として注目されており、今後も公認心理師が必要とされる場面は増えていくでしょう。
取得のハードルの高さはありますが、それだけ専門性の高い資格です。
メンタルヘルス領域でのスキルアップを目指したい、心のケアの専門性を高めたい看護師さんは、公認心理師にチャレンジしてみてもよいかもしれません。
執筆:看護roo!編集部
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