がん薬物療法看護認定看護師の役割は?取得の流れやメリットも解説

看護師が取りたい資格図鑑「がん薬物療法看護認定看護師」の記事のMV

 

がん薬物療法看護認定看護師は、抗がん剤治療を受ける患者さんが安全に治療を進められるよう、投与管理や副作用の緩和マネジメントの方法を学ぶ認定看護師資格です。

 

この記事では、がん薬物療法看護認定看護師になるための方法試験の内容メリットなどを解説します。

 

 

がん薬物療法看護認定看護師とは?

がん薬物療法看護認定看護師とは、主に抗がん剤などの投与管理・副作用の緩和・セルフケア支援などの方法を学ぶ認定看護師資格の一つです。

 

がん薬物療法薬を使用する患者さんの治療が、安全かつ確実に行われるために、がんや薬物の高度な知識と看護ケアの技術が求められます。

 

がん化学療法看護認定看護師は1,576人、がん薬物療法看護認定看護師は205人が資格を取得しており、認定看護師の中でも取得を目指す看護師さんが多い分野です。

 

なお、制度変更により、2019年に「がん化学療法看護認定看護師」から「がん薬物療法看護認定看護師」に名称が変わりました。

 

がん化学療法看護認定看護師も受験することは可能ですが、2026年度には教育が終了するため、今後はがん薬物療法看護認定看護師が増えていくでしょう。

 

 

がん薬物療法看護認定看護師の役割

認定看護師になると、「実践」「指導」「相談」の3つの役割が求められます。

 

日本看護協会は、認定看護師の役割を次のように定義しています。

 

認定看護師の役割を表した図版。1実践、2指導、3相談がある

出典:日本看護協会「認定看護師

 

がん薬物療法看護認定看護師に求められる役割はどのような内容なのでしょうか。具体的に解説します。

 

 

がん薬物療法看護認定看護師の役割①「実践」

「実践」では、専門性の高い知識とスキルを活かし、抗がん剤による副作用の緩和などの看護を行います。それにより、患者さんのQOLを維持し、その人らしい生活を支援します。

 

また、患者さんが自宅療養や普段の生活でセルフケアが実践できるよう、支援や相談を行うこともあります。

 

 

がん薬物療法看護認定看護師の役割②「指導」

「指導」では、ほかの看護師に対して、抗がん剤治療に関する教育などを行います。薬物の危険性や管理方法、投与方法についての周知や指導をします。

 

そのほかに、新薬などに関する講習会や勉強会を率先して企画・主催し、看護師の知識の底上げに貢献することもがん薬物療法看護認定看護師の役割です。

 

 

がん薬物療法看護認定看護師の役割③「相談」

「相談」では、医師、薬剤師など多職種と連携し、看護ケアを考えます

 

医師が抗がん剤の投与量や投与方法を検討できるよう患者さんの情報を共有したり、副作用を緩和させるために必要なケアやサポートの仕方を職種をまたいで考えたりと、コンサルテーション力を発揮することが役割の一つとなります。

 

 

がん薬物療法看護認定看護師になるには?

がん薬物療法看護認定看護師になるには、どういったステップを踏めばいいのでしょうか? ここでは、資格取得の流れや通う学校、試験内容などを解説します。

 

 

がん薬物療法看護認定看護師になるまでの流れ

認定看護師資格を取得するまでには4つのステップがあります。

 

認定看護師になるまでの流れを表した図版。実務経験を満たす→教育機関に入学し、カリキュラムを修了→認定審査を受ける→登録を行う

参考:日本看護協会「認定看護師

 

がん薬物療法看護分野の実務経験については、次の実績や勤務状況であることが望ましいとされています。

 

  • がん薬物療法を受けている患者の多い病棟・外来・在宅ケア領域における看護実績
  • がん薬物療法を受けている患者の看護を5例以上担当
  • がん薬物療法薬の経静脈投与管理の実績が1例以上ある
  • 現在、がん薬物療法を受けている患者の多い病棟・外来で勤務している

参考:日本看護協会「特定看護分野の実務研修内容の基準」

 

 

がん薬物療法看護認定看護師になるための学校や勉強内容

がん薬物療法看護認定看護師の学習ができる学校は、2024年4月時点で全国に4カ所あります。

 

  • 千葉県:国立がん研究センター東病院認定看護師教育課程
  • 静岡県:静岡県立静岡がんセンター認定看護師教育課程
  • 兵庫県:日本看護協会神戸研修センター
  • 福岡県:久留米大学認定看護師教育センター

出典:日本看護協会「認定看護師教育機関別の開講状況・定員数一覧(特定行為研修を組み込んでいる教育機関:B課程認定看護師教育機関)

 

今後の募集については日本看護協会の分野別教育機関一覧を確認しましょう。

 

教育期間では、がん薬物療法の治療計画や適切な投与管理、リスクマネジメント等に関する知識を身に付けます。

 

また治療を受ける患者さん・ご家族の意思決定支援の仕方や、療養生活のサポートの仕方を考える力も伸ばします。

 

詳しくは日本看護協会の認定看護師教育基準カリキュラムを確認しましょう。

 

 

がん薬物療法看護認定看護師の試験内容と難易度

認定審査の試験内容は、例年以下のように設定されています。

 

  • 試験時間:100分
  • 会場:都道府県ごとの所定の会場
  • 試験形式:筆記試験(マークシート方式・四肢択一式)
  • 問題数:計40問(150点満点)
  • 合格率:日本看護協会からの発表はなし

参考:日本看護協会「2024年 第32回認定看護師認定審査実施概要」

 

難易度は易しくはないようです。合格率の公式発表はありませんが、入学試験の準備や800時間の教育課程での学習などがあるため、相当量の学習は必要でしょう。

 

認定審査では「認定看護師教育基準カリキュラム」に沿った基礎知識を中心に出題されます。カリキュラムをしっかり受講して、試験に備えましょう。

 

 

がん薬物療法看護認定看護師になるためにかかる時間と費用

がん薬物療法看護認定看護師の資格を取る場合、どれくらいの時間や費用がかかるのかを解説します。

 

 

がん薬物療法看護認定看護師になるまでにかかる時間

がん薬物療法看護認定看護師の資格取得までには、2年近くかかります。

 

資格取得までのスケジュール例

時期 できごと
4月 入学
5月  共通科目開始
8月 特定行為研修、区分別科目開始
9月~11月 専門科目開始
12月 実習
翌年1月~3月 統合演習、修了試験、修了式
10月 認定審査
12月 認定審査の合格発表、認定看護師認定証交付・登録

参考:国立がん研究センター東病院『認定看護師教育課程(がん薬物療法看護)募集要項

 

また、教育機関に通っている間の約1年間は、休職や一時的な退職を考える必要がありそうです。

 

病院によっては、認定看護師取得のための休職の受け入れや、勤務扱いとして対応してくれるところもあります。受験を考える際は、ご自身の病院の制度などについて事前に確認しておきましょう。

 

 

がん薬物療法看護認定看護師になるまでにかかる費用

認定看護師になるには、教育機関の入学金と授業料、認定審査を受けるための検定料など総額で110万円程度かかります。

 

認定看護師の資格取得にかかる費用の例

項目 金額
入学試験の受験料 5万円
入学金 5万円
受講料 90万円
認定審査の受験料 5万円
認定料 5万円

参考:国立がん研究センター東病院『認定看護師教育課程(がん薬物療法看護)募集要項

 

さらに、ここに数万円の教材費と、遠方の学校に通う場合は引っ越し費用や通学のための交通費なども発生します。

 

費用の工面は、日本看護協会による「認定看護師教育課程奨学金」などを活用することも、選択肢の一つです。詳しくは、日本看護協会のホームページを確認しましょう。

 

 

また、勤務先の病院で補助制度を設けているケースもあります。自分の勤務先の制度を確認してみてもよいですね。

 

 

がん薬物療法看護認定看護師の仕事内容

がん薬物療法看護認定看護師は、抗がん剤治療を受ける患者さんの看護を行う点ではほかの看護師と変わりません

 

ただ、それに加えて、がん薬物を安全に取り扱い、患者さんが安心して治療を続けられるよう、投与管理や副作用緩和のマネジメントを行うことが大きな役割として期待されています。

 

薬物の危険性や管理方法、抗がん剤を投与する時に注意するべきことなどを指導し、ばく露防止対策や血管外漏出対策などを考え、教育するのも重要な仕事です。

 

また、がん薬物療法看護について抗がん剤投与中・投与後に必要な看護ケアや、患者さんのセルフケア支援のポイントなどについて、セミナー講師や指導役を務めたりと、がん薬物療法の看護ケアについて知見を広める仕事も担います。

 

 

がん薬物療法看護認定看護師になるメリットとは

がん薬物療法看護認定看護師の資格取得には、次のようなメリットがあります。

 

がん薬物療法看護認定看護師になるためのメリットを解説した図版。1)スキルアップにつながる、2)キャリアアップにつながる

 

スキルアップにつながる

がん薬物療法看護認定看護師の勉強を通じて、抗がん剤に関する知識が深まり、がん看護分野でのスキルアップが期待できます

 

また、専門知識やスキルを磨くことで、薬の副作用について適切に説明する能力や、患者さん・ご家族に寄り添い、最適な看護ケアを考える能力が向上します。

 

看護師としてのスキルをさらに伸ばすことができるでしょう。

 

 

キャリアアップにつながる

高度な看護ケアを提供できる存在として、看護師としてのキャリアに磨きをかけることも望めます

 

がん治療や抗がん剤に関する知識が増えることで、患者さんへもより自信を持って対応できるようになり、看護師としても成長できるでしょう。

 

また、抗がん剤の取り扱いに関するマネジメントが重要な看護分野であることから、看護スキルに加えて若手の指導スキルも磨かれます

 

後進育成や、リーダー・看護師長などのキャリアを考える場合に、スキルや知識が役立ちます。

 

 

まとめ

がん薬物療法看護認定看護師は、抗がん剤治療を受ける患者さんへの看護スキルはもちろん、マネジメントスキルも伸ばしたいという方にもおすすめの資格です。

 

「抗がん剤治療を受ける患者さんと関わる中で、苦痛や不安に寄り添えるようになりたい」と考える看護師さんは、挑戦してみてもよさそうです。

執筆:看護roo!編集部

 

 

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