呼吸器疾患看護認定看護師とは?役割や取得の流れ、活動内容を解説

 

看護師が取りたい資格図鑑「呼吸器疾患看護認定看護師」の記事のMV

 

呼吸器疾患看護認定看護師は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)など、呼吸器疾患のある患者さんの看護を行うエキスパートです。

 

この記事では、呼吸器疾患看護認定看護師資格を取る方法カリキュラムを受けられる学校取得のメリット資格取得後の仕事内容について解説します。

 

 

呼吸器疾患看護認定看護師とは?

呼吸器疾患看護認定看護師は、呼吸器疾患のある患者さんやその家族のQOLを維持・向上するための看護を提供し、治療のサポートや重症化の防止などを行う認定看護師資格の一つです。

 

制度変更により2019年に、「慢性呼吸器疾患看護認定看護師」から「呼吸器疾患看護認定看護師」に名称が変わりました。急性と慢性、連続性を持った病態であるため、区分せずに専門的なケアを行う必要があるためです。

 

慢性呼吸器疾患看護認定看護師も受験することは可能ですが、2026年度には教育が終了するため、今後は呼吸器疾患看護認定看護師が増えていくでしょう。

 

慢性呼吸器疾患看護認定看護師は274人、呼吸器疾患看護認定看護師は99人が取得しています。

 

 

呼吸器疾患看護認定看護師の役割

認定看護師になると、「実践」「指導」「相談」の3つの役割が求められます。

 

日本看護協会は、認定看護師の役割を次のように定義しています。

 

認定看護師の役割を表した図版。1実践、2指導、3相談がある

出典:日本看護協会「認定看護師

 

呼吸器疾患看護認定看護師に求められる役割はどのような内容なのでしょうか。具体的に解説します。

 

呼吸器疾患看護認定看護師の役割①「実践」

「実践」は、高度な知識とスキルを生かして、急性増悪期の患者さんの人工呼吸器管理を行ったり、病状の悪化防止に務めたりして、適切な看護ケアを提供することです。

 

また、患者さんが退院後も快適に日常生活を送るために、セルフマネジメント支援教育的支援を実施する役割もあります。

 

 

呼吸器疾患看護認定看護師の役割②「指導」

「指導」は、ほかの看護師に対して、日々の業務の中でケアの仕方や患者さんとの関わり方をレクチャーすることです。

 

急変しがちな呼吸器疾患のケアについて、理解を深めるための院内勉強会を実施したり、研修会の講師を務めて、病棟内の意識を高める働きかけをしたりします。

 

 

呼吸器疾患看護認定看護師の役割③「相談」

「相談」は、患者さんのケアについて、医師、薬剤師などの多職種と呼吸サポートチーム(RST)を作り、コンサルテーションを行ったり、治療のサポートを行ったりすることです。

 

呼吸器疾患のある患者さんは長期的な治療が必要な場合が多く、多方面から呼吸ケアを考え、サポートすることが大切です。

 

 

呼吸器疾患看護認定看護師になるには?

呼吸器疾患看護認定看護師になるには、どういったステップを踏めばいいのでしょうか? ここでは、資格取得の流れや通う学校、試験内容などを解説します。

 

 

呼吸器疾患看護認定看護師になるまでの流れ

認定看護師資格を取得するまでには4つのステップがあります。

 

認定看護師になるまでの流れを表した図版。実務経験を満たす→教育機関に入学し、カリキュラムを修了→認定審査を受ける→登録を行う

参考:日本看護協会「認定看護師

 

なお、A課程とB課程で学習方法や学習時間が異なりますが、認定を受けるまでの流れは同じです。

 

呼吸器疾患看護分野の実務経験については、次の実績や勤務状況であることが望ましいとされています。

 

  • 呼吸障害を持つ患者が多い部署での看護実績
  • 呼吸障害のある患者の看護を5例以上担当
  • 現在、呼吸障害を持つ患者の看護に携わっている

参考:日本看護協会「特定看護分野の実務研修内容の基準

 

 

呼吸器疾患看護認定看護師になるための学校や勉強内容

呼吸器疾患看護認定看護師の授業を開講している学校は、2024年4月時点で「福井大学大学院医学系研究科附属地域医療高度化教育研究センター 看護キャリアアップ部門」の1カ所となっています。

 

教育機関では、呼吸器に疾患を持つ患者さんの重症化を防ぐの看護ケアの仕方や、症状緩和のための知識やスキル、療養生活を支援する実践力などを身に付けます。

 

また多職種と協働し、チーム医療のキーパーソンとして役割を果たす方法や考え方なども学習します。

 

詳しくは日本看護協会の認定看護師教育基準カリキュラムを確認しましょう。

 

 

呼吸器疾患看護認定看護師の試験内容と難易度

認定審査の試験内容は、例年以下のように設定されています。

 

  • 試験時間:100分
  • 会場:都道府県ごとの所定の会場
  • 試験形式:筆記試験(マークシート方式・四肢択一式)
  • 問題数:計40問(150点満点)
  • 合格率:日本看護協会からの発表はなし

参考:日本看護協会「2024年 第32回認定看護師認定審査実施概要」

 

難易度は易しくはないようです。合格率の公式発表はありませんが、入学試験の準備や800時間に及ぶ教育課程での専門的な学習などがあるため、相当量の学習は必要でしょう。

 

認定審査では認定看護師教育基準カリキュラムに沿った基礎知識を中心に出題されます。カリキュラムをしっかり受講して、試験に備えましょう。

 

 

呼吸器疾患看護認定看護師になるためにかかる時間と費用

呼吸器疾患看護認定看護師の資格を取る場合、どれくらいの時間や費用がかかるのかを解説します。

 

 

呼吸器疾患看護認定看護師になるまでにかかる時間

呼吸器疾患看護認定看護師の資格取得までには、約2年かかります。

 

資格取得までのスケジュール例

時期 できごと
4月 入学式
7月~10月 共通科目・専門科目開始
11月~12月 実習
翌年1月~3月  修了試験、修了式
12月下旬 修了試験
翌1月末 修了式
10月 認定審査
12月  合格判定通知
翌々年2月 認定証通知

参考:福井大学大学院医学系研究科附属地域医療高度化教育研究センター「年間スケジュール

 

また、教育機関に通っている約10カ月間は、休職や一時的な退職を考える必要がありそうです。

 

病院によっては、認定看護師取得のための休職の受け入れや、勤務扱いとして対応してくれるところもあります。受験を考える際は、ご自身の病院の制度などについて事前に確認しておきましょう。

 

 

呼吸器疾患看護認定看護師になるまでにかかる費用

認定看護師になるには、教育機関の入学金と授業料、認定審査を受けるための検定料など総額で130万円程度かかります。

 

認定看護師の資格取得にかかる費用の例

項目 金額
入学試験の受験料 5万円
入学金 5万円
受講料 105万円
認定審査の受験料 5万円
認定料 5万円

 

さらに、ここに数万円の教材費と、遠方の学校に通う場合は引っ越し費用や通学のための交通費なども発生します。

 

費用の工面は、日本看護協会による「認定看護師教育課程奨学金」などを活用することも、選択肢の一つです。詳しくは、日本看護協会のホームページを確認しましょう。

 

 

また、勤務先の病院で補助制度を設けているケースもあります。自分の勤務先の制度を確認してみてもよいですね。

 

 

呼吸器疾患看護認定看護師になるメリット

呼吸器疾患看護認定看護師の資格取得には、次のようなメリットがあります。

 

呼吸器疾患看護認定看護師になるためのメリットを解説した図版。1)スキルアップにつながる、2)多職種との連携がしやすくなる、3)指導の立場として活躍することもできる

 

1スキルアップにつながる

呼吸器疾患看護認定看護師の学習を通じて、呼吸器疾患に関する知識が深まり、看護ケアのスキルの向上が期待できます。

 

看護師は、慢性呼吸器疾患に対し、安定期・増悪期・終末期と、その時の症状に対する適切なケアや情報提供が求められます

 

呼吸器疾患看護認定看護師の学習を通じて高度な知識とスキルを身に付けることで、病態を適切に判断する力が養われ、より適切なケアの提供に役立つでしょう。

 

人工呼吸器管理(喀痰吸引)をする看護師のイラスト

 

2多職種との連携がしやすくなる

呼吸器疾患看護のスペシャリストとして、医師やほかの看護師、薬剤師、理学療法士などとサポートチームを組むなど、多職種と連携した看護ケアの提供がしやすくなります

 

ほかの職種の人と関わりながら働くことで刺激も受けられ、看護師としてさらにスキルアップも目指せるでしょう。

 

 

3指導の立場で活躍することもできる

呼吸器疾患看護認定看護師の資格を持つことで、「ぜひ講師をお願いしたい」とセミナーや勉強会の依頼があるなど、指導の立場で活躍する機会が増えるでしょう

 

認定資格を取得することで、呼吸器疾患に関する知識やスキルがあると証明でき、他科の看護師や理学療法士などの信頼も得やすくなります。

 

看護についての相談を受けたり、指導を求められる機会も増え、マネジメントの立場として活躍できるチャンスが広がるでしょう。

 

またセミナーや研修会を主導で開催したりと、看護スキルを提供する役割を担う機会も増えるでしょう。

 

 

呼吸器疾患看護認定看護師の仕事内容と働く場所

呼吸器疾患看護認定看護師の仕事は、長期にわたり治療を受ける患者さんの病状を適切に管理したり、人工呼吸器の管理をしたりと、高度な知識と技術を生かした呼吸ケアを提供することです。

 

呼吸器疾患はCOPDなど、安定と悪化をくり返し、長期化する病気も多くあります。呼吸器疾患看護認定看護師は、患者さんが少しでも息苦しさを軽減し、長く病気と向き合えるような看護ケアを提供します。

 

例えば呼吸の仕方や食事の仕方などセルフケアの指導やサポートをしたり、患者さんの状態に合わせた人工呼吸器の調整や管理をしたりします。

 

次に、呼吸器疾患看護認定看護師の働く場所ですが、9割が呼吸器疾患がある患者さんが多くいる呼吸器外来や病棟に所属しています。残りの1割は、訪問看護ステーションに所属して、自宅療養を行う患者さんのケアを行う看護師さんもいるようです。

 

 

まとめ

呼吸器疾患看護認定看護師は、呼吸器疾患のある患者さんに関わり、より高度な知識とスキルを持って治療のサポートや生活支援を行いたいと考える看護師さんにおすすめです。

 

「患者さんが快適に生活を送れるよう、さらに看護スキルを磨きたい」「より高度な看護ケアを提供できるようになりたい」と考える方は、資格取得を検討してみてはいかがでしょうか。

執筆:看護roo!編集部

 

 

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