クリティカルケア認定看護師になるには?取得の流れやメリットなどを解説
クリティカルケア認定看護師は、急性期にある患者さんの看護を行うスペシャリストであることを証明する資格です。
この記事では、クリティカルケア認定看護師の役割や試験の流れ、勉強内容や取得にかかる費用、仕事内容などを解説します。
目次
クリティカルケア認定看護師とは?
クリティカルケア認定看護師とは、急性期にある患者さんに対して、専門性の高い看護を実践するための資格です。
この資格を持つ看護師は、ICUにいる救急対応が必要な患者さんなどに対し、重篤化回避や早期回復を支援するといった役割を担います。
もともとは、A課程と呼ばれる「救急看護」と「集中ケア」という2つの分野に分かれていましが、2019年よりB課程の「クリティカルケア認定看護師」に統合されました。
A課程は現在でも有効ですが、2026年には教育が終了するため、今後はB課程のクリティカルケア認定看護師を取得する人が増えていくでしょう。
2023年12月時点で、A課程・B課程を合計して2,816名が登録されています。
クリティカルケア認定看護師の役割
認定看護師になると、「実践」「指導」「相談」の3つの役割が求められます。
日本看護協会は、認定看護師の役割を次のように定義しています。
クリティカルケア認定看護師に求められる役割はどのような内容なのでしょうか。具体的に解説します。
クリティカルケア認定看護師の役割①「実践」
「実践」は、急性期にある患者さんに対して、症状に適した看護を行うことです。
患者さんの症状や重症度・緊急度に合わせて、高い臨床推論力と病態判断力に基づいた適切な初期対応を行い、重篤化回避や早期回復に努めます。
クリティカルケア認定看護師の役割②「指導」
「指導」は、ほかの看護師へ最適なケアの方法を指導することです。
看護師に対して、クリティカルな状態にある患者さんの重症化や合併症の予防、早期回復に向けた看護の方法や考え方をレクチャーします。
クリティカルケア認定看護師の役割③「相談」
「相談」は、さまざまな職種と連携しながら、患者さんにとって最適な看護の方法を考えることです。
患者さんが退院したり、慢性期病棟に移ったりする際は、理学療法士などのリハビリテーションスタッフや管理栄養士などと協力し、治療の引き継ぎや連携のためにチームを調整することもあります。
クリティカルケア認定看護師になるには?
クリティカルケア認定看護師になるには、どういったステップを踏めばいいのでしょうか? ここでは、資格取得の流れや通う学校、試験内容などを解説します。
クリティカルケア認定看護師になるまでの流れ
認定看護師資格を取得するまでには4つのステップがあります。
なお、A課程とB課程で学習方法や学習時間が異なりますが、認定を受けるまでの流れは同じです。
クリティカルケア認定看護師になるための学校や勉強内容
認定看護師を取得するには、指定された教育機関でカリキュラムに沿って学習する必要があります。クリティカルケア分野の対象学校は次の4箇所(2024年4月時点)です。
A課程(救急看護・集中ケア)の対象学校
- 神奈川県:東海大学看護師キャリア支援センター
B課程(クリティカルケア)の対象学校
- 東京都:日本看護協会看護研修学校
- 東京都:昭和大学認定看護師教育センター
- 大阪府:大阪府看護協会認定看護師教育課程
クリティカルケア認定看護師の資格を取得するには、1年以内に800時間程度の教育課程を修了する必要があります。
詳しくは日本看護協会の認定看護師教育基準カリキュラムを確認しましょう。
なお、教育課程入学時には以下の実績や勤務状況であることが望ましいとされています(B課程の場合)。
- 通算3年以上、クリティカルケア部門(救急・集中治療部門など。ただし、手術室・NICU は除く)での看護実績があること
- 疾病、外傷、手術などにより高度な侵襲を受けた患者の看護を5例以上担当した実績(人工呼吸器などの生命維持装置を装着した患者の看護を1例以上含む)があること
- 現在、クリティカルケア部門で勤務していること
- 救急蘇生(二次救命処置など)に関する知識・技術を持っていること
クリティカルケア認定看護師になるための学習内容
教育機関での学習内容は、「共通科目」「専門科目」「実習・演習」の3つに分かれています。
授業では、クリティカルな状態にある患者さんの全身管理や、身体所見から病態を判断する方法など、救急看護に必要な知識を身に付けます。
さらに、重篤化した患者さんに不可欠な看護技術を包括的に学びます。
例えば、人工呼吸器管理とその調整・離脱の知識と技術、持続点滴中の薬剤(カテコラミン・降圧剤・電解質・利尿剤など)の投与量の調整方法なども学びます。
クリティカルケア認定看護師の試験内容と難易度
認定審査の試験内容は、例年以下のように設定されています。
- 試験時間:100分
- 会場:都道府県ごとの所定の会場
- 試験形式:筆記試験(マークシート方式・四肢択一式)
- 問題数:計40問(150点満点)
- 合格率:日本看護協会からの発表はなし
難易度は易しくはないようです。合格率の公式発表はありませんが、入学試験の準備や824時間に及ぶ教育課程での専門的な学習などがあるため、相当量の学習は必要でしょう。
認定審査では認定看護師教育基準カリキュラムに沿った基礎知識を中心に出題されます。カリキュラムをしっかり受講して、試験に備えましょう。
クリティカルケア認定看護師になるためにかかる時間と費用
クリティカルケア認定看護師の資格を取る場合、どれくらいの時間や費用がかかるのかを解説します。
クリティカルケア認定看護師になるまでにかかる時間
クリティカルケア認定看護師の資格取得までには、約2年かかります。
表資格取得までのスケジュール例
時期 | できごと |
---|---|
4月上旬 | 入学式、eーラーニングでの授業開始 |
5月~7月 | 集合研修による講義・演習・科目試験 |
8月下旬~9月中旬 | 専門科目の臨地実習 |
10月上旬~12月上旬 | 特定行為研修の臨地実習 |
12月上旬 | 統合演習 |
12月下旬 | 修了試験 |
翌1月末 | 修了式 |
10月 | 認定審査 |
12月 | 合格判定通知 |
翌々年2月 | 認定証通知 |
また、教育機関に通っている約10カ月間は、休職や一時的な退職を考える必要がありそうです。
病院によっては、認定看護師取得のための休職の受け入れや、勤務扱いとして対応してくれるところもあります。受験を考える際は、ご自身の病院の制度などについて事前に確認しておきましょう。
クリティカルケア認定看護師になるまでにかかる費用
認定看護師になるには、教育機関の入学金と授業料、認定審査を受けるための検定料など総額で140万円程度かかります。
表認定看護師の資格取得にかかる費用の例
項目 | 金額 |
---|---|
入学試験の受験料 | 5万円 |
入学金 | 5万円 |
受講料 | 120万円 |
認定審査の受験料 | 5万円 |
認定料 | 5万円 |
さらに、ここに数万円の教材費と、遠方の学校に通う場合は引っ越し費用や通学のための交通費なども発生します。
費用の工面は、日本看護協会による「認定看護師教育課程奨学金」などを活用することも、選択肢の一つです。詳しくは、日本看護協会のホームページを確認しましょう。
また、勤務先の病院で補助制度を設けているケースもあります。自分の勤務先の制度を確認してみてもよいですね。
クリティカルケア認定看護師になるメリット
クリティカルケア認定看護師の資格取得には、次のようなメリットがあります。
スキルアップにつながる
クリティカルケア分野の看護技術・知識を包括的に学べ、看護師としてのスキルを上げることができます。
資格取得に向けて座学で専門知識を学べるほか、実習を通して看護実践の振り返りができるのも魅力です。
患者さんの社会復帰の方法まで幅広く学べる
クリティカルケア認定看護師の教育課程では、患者さんの緊急搬送から退院、その後の社会復帰にわたる一連の看護についての知識を身に付けることができます。
集中治療室から一般病棟へ移る患者さんの治療や、退院する患者さんの日常生活・社会復帰の支援がどのように行われるのかを学べます。
急性期の治療だけではなく、回復後のことも考えながら患者さんをケアできるようになります。
キャリアアップにつながる
クリティカルケア認定看護師資格を取ることで、看護師としてのキャリアアップにつながります。
資格を取るまでに得た知識や技術、経験は、集中治療室や救急センターはもちろん、どの診療科でも生かすことができます。
また、リーダーシップや後輩指導についても学べるため、看護部長などマネジメント職へのキャリアを考えている人にもおすすめです。
クリティカルケア認定看護師の仕事内容
クリティカルケア認定看護師の仕事は、認定看護師の役割の中でも「実践」が他の看護分野よりも高い比率で求められます。
看護実践では、特定行為実践や医師の診療の補助を行い、タイムリーな処置を行います。
特定行為研修で学んだ医学的知識や技術を生かして人工呼吸器の設定を医師に提案し、指示のもと変更するといったこともできるようになります。
まとめ
クリティカルケア認定看護師になると、集中治療室などの急性期医療の場はもちろん、在宅医療などのあらゆる場で必要とされる知識や技術を身に付け、患者さんに質の高い看護を行うことができます。
取得のハードルは低くはありませんが、その分取得する意義のある資格とも言えます。
さらなるスキルアップやキャリアアップを考えている看護師さんは取得を考えてみてもよいかもしれません。
執筆:看護roo!編集部
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