「身体拘束の最小化」が全病棟で義務化へ…! 看護の現場はどうなる?|2024診療報酬改定

2024診療報酬改定「身体拘束の最小化」の対策強化ポイントまとめ。1)「身体拘束の最小化」が原則すべての病棟・病室で施設基準に 2)基準をクリアできないと減算もも

2024年度の診療報酬改定で、「身体拘束の最小化」に取り組んでいるかどうかが、入院医療全般に厳しく問われることになりました。

 

急性期から慢性期までの病棟だけでなく、救急病棟やICU・HCUなども対象です。

 

認知症の入院患者さんが増えていく中、そう簡単な話ではありませんが……。改定のポイントをわかりやすく解説します。

 

 

 

「身体拘束の最小化」クリアしないとペナルティも

今回の改定で、急性期、回復期、慢性期のすべての病棟・病室にとって「身体拘束を最小化するための体制を整えること」が施設基準に加わり、つまり義務となりました。これは、かなり大きなテコ入れです。

 

※精神科病院・精神病室のある病院はのぞく(精神保健福祉法の規定が別途あるため)

 

施設基準とは、看護配置のように「その病棟がまず守るべき、根本的な基準」のこと。これを満たせないとなれば、診療報酬(入院料)が算定できない・減算されるなどのペナルティがあります。

 

今回の身体拘束に関しても、基準をクリアできなければ減算(1日あたり40点)となっています。

 

では、「身体拘束の最小化」の基準とは、どんなものなのでしょうか。厚生労働省からは次のように示されました。

 

「身体拘束の最小化」の基準まとめ。▼患者または他の患者の生命・身体を保護するために緊急やむを得ない場合をのぞき、身体拘束を行ってはならない▼身体拘束を行う場合、状況や時間、やむを得ない理由などを記録する▼専任の医師と専任の看護師による「身体拘束最小化チーム」を設置する―など

 

しばらくは経過措置の期間があり、実際に基準が適用されるのは来年20256月から。これから1年あまりの間、全国の病院・病棟では、身体拘束の最小化に向けた体制づくりが重要課題の一つになってくるでしょう。

医療機関の身体拘束、実態は?

そもそも医療機関では、身体拘束はどのように行われているのでしょうか。

厚労省の調査によると、

 

  • 身体拘束の実施率は、ほとんどの病棟で10%未満
  • 9割の病院が、最小化のためのマニュアルなどを策定済み

 

などとなっていました。

※実施率=入院患者のうち身体拘束を実施した患者の割合

 

今回の改定で求められるような「身体拘束の最小化」は、すでに多くの現場では取り組まれていると言えるでしょう。

 

ただ一方で、

 

  • 中には、身体拘束の実施率が50%を超える病棟・病室もある
  • 慢性期、ICUHCUSCU、救急では身体拘束の実施率が高い
  • 認知症、BPSD、せん妄のある患者は身体拘束の実施率が高い

 

という傾向も、同じ調査であらためてうかがえました。

身体拘束の義務化で、看護現場はどうなる?

自己抜去や転倒・転落の防止など、患者さんの安全を守るために「緊急やむを得ない理由」が発生しやすい現場では、今後も、適切な身体拘束は否定されるものではないはずです。

 

しかし、身体拘束を実施した場合には詳細な記録が義務となり、看護師にとっては業務負担が増えるほか、病院全体としても「入院料の減算リスクを避けてほしい」という要望が現場に向かうことにはなるでしょう。

 

点滴の自己抜去で出血している患者さんに対応する看護師のイラスト
 

看護の現場では、「緊急やむを得ない理由」に当たるかどうかの判断力をチームで上げていく、身体拘束が必要になる場面をそもそも減らすケアのスキルアップ研修を行う―などの動きが活発になっていくのではないでしょうか。

 

また、「最小化チーム」の設置が義務化されることもあり、認知症ケア専門士、認知症看護認定看護師、精神看護専門看護師、老人看護専門看護師といったエキスパートへの注目度もさらに増していきそうです。

 

「現場の看護師だけの責任」ではない

今回、「身体拘束の最小化」が入院料の施設基準として加わったことは、ある意味、認知症や術後せん妄のある患者さんへの対応は「病院全体で取り組むべきことですからね! 現場の看護師だけの責任にしてはダメですよ!」というメッセージも込められたと言えます。

 

高齢化で増える認知症などの患者さんのケア。今回の改定が、現場ナースが前向きに取り組めるような変化になることを期待したいです。

 

看護roo!編集部 烏美紀子(@karasumikiko

 

 

(参考)
令和6年度診療報酬改定について(厚生労働省)

令和6年度診療報酬改定の概要 重点分野Ⅱ(厚生労働省)

令和5年度第3回 入院・外来医療等の調査・評価分科会(厚生労働省)

個別改定項目について(厚生労働省)

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