【2024】看護必要度 ココが変わる!7対1病棟の「B項目廃止」でどうなる⁉
2024年度の診療報酬改定で「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)が変更されます。
7対1の病棟では「看護必要度のB項目の評価がなくなる」など、かなり大きく見直される今回の改定。変更点とポイントをまとめました。
目次
2024年度 看護必要度 早わかり表
【編注】
※表は「一般病棟」の看護必要度です。
※看護必要度は「Ⅰ」と「Ⅱ」の2種類あります。Ⅰは看護師が一部項目の評価をつける方式、ⅡはDPCデータを評価に活用して評価する方式。
※2024年4月から原則、急性期一般入院料1(7対1)のすべて、急性期一般入院料2~3(10対1)で200床以上の病院、急性期一般入院料4~5(10対1)で400床以上の病院はⅡでの評価が義務となります。
※経過措置のため、適用は2024年10月から。
より「急性期らしさ」を評価する指標に
看護必要度は「急性期の入院患者の重症度や看護の必要量」を測定するためのものです。A項目(モニタリング・処置など)、B項目(患者の状態・介助の実施など)、C項目(手術などの医学的状況)の3つを組み合わせて評価します。
今回の改定では、大幅な見直しから細かな調整まで多くの変更がありますが、そのいずれも「本当に急性期で受け入れるべき患者かどうか、これまで以上に厳密に見ますよ!」という狙いは共通です。
看護必要度は、よりいっそう「急性期らしさ」を評価する指標になっていくと言えるでしょう。
それでは、具体的な変更点について、現場ナースに影響の大きいポイントを詳しく見ていきます。
ポイント① 7対1病棟で「B項目」の評価がなくなる
なんといっても最大のポイントは、7対1病棟(急性期一般入院料1)で評価する看護必要度から「B項目」がなくなること。かなり大きな変化です。
B項目は患者さんのADLと、それに伴う看護師のケア業務を評価しますが、
「急性期医療のニーズを測る指標にしては『介護』の評価に近く、ふさわしくないのでは?」
という指摘が以前から挙がっていました。これに対して「急性期看護にかかる手間も評価してほしい」「術後の痛みなどを測るためにも大切な指標だ」との反論も強く、実は長年、議論が続いていたのです。
しかし、その間にも「7対1病棟は、急性期医療にもっと集中するべき」という機能分化の流れはどんどん強まり、今回、とうとう7対1病棟の評価からB項目が外されたというわけです。
ただし、急性期の中でも10対1病棟(急性期一般入院料2~5)では、B項目は引き続き評価します。
また、7対1でも「評価」はなくなりますが、B項目の「測定」そのものは引き続き求められる予定で、記録業務の負担が軽くなるわけでもなさそうです。
ポイント②「看護必要度を満たす」基準が変わる
7対1病棟では、B項目がなくなったことによって「看護必要度を満たす患者」の基準も変わります。
急性期病棟は「入院患者のうち、看護必要度を満たす患者が◯%以上」と基準が細かく決まっています。基準を下回ると、病院の収入が減らされる仕組みです。7対1病棟では、次のような基準に変わることになります。
これまであった「A項目2点以上かつB項目3点以上」の基準はなくなります。
看護必要度を満たすうえで「A項目2点以上かつB項目3点以上」によるカウントが多かった7対1病棟では、今後、どんな患者さんの入院を受け入れるか、見直しが進む可能性もありそうです。
特に、新基準を満たしやすいC項目に該当する手術入院の受け入れが積極的になっていくかもしれません。
ポイント③ A項目「救急搬送後の入院」は2日に短縮
変化があるのは7対1病棟だけではありません。上の早わかり表で見た通り、A項目・C項目そのものの内容も見直されています。
特に影響が大きいのは、A項目にある「救急搬送後の入院/緊急に入院を必要とする状態」。評価日数が5日から2日に短縮されることになりました。
これはつまり、緊急入院の3日目以降は「看護必要度を満たす患者」にカウントされにくくなるということ。搬送後、あまり処置・管理の必要がない状態で落ち着いた患者さんなどは、急性期病棟からの転棟・転院を早めに促す動きが強まっていきそうです。
こんなふうに、今回の改定では急性期病棟、とりわけ7対1病棟に対して、「急性期らしい、短期集中型の入院医療に特化して!」というメッセージがあちこちに散りばめられています。
実際、7対1病棟の「平均在院日数」の条件は18日から16日へ、さらに短縮されました(急性期一般入院料1)。7対1病棟の現場では、入退院の入れ替わりがますます目まぐるしくなるのは間違いありません。
ポイント④ A項目「注射薬剤3種類以上」は静脈栄養を除外
もうひとつ、現場ナースが気になる変更は、A項目「注射薬剤3種類以上の管理」です。
今回、評価期間が7日間までと上限が設けられたのに加え、「アミノ酸・糖・電解質・ビタミン」など静脈栄養系の薬剤は、対象から除外されることになりました。
3種類以上の薬剤を同時に使用する患者さんについて、データを厚労省が詳しく調べたところ、
- 重症度・緊急度が低い病棟ほど、3種類以上の薬剤の使用期間が長い
- 使用期間が長いほど、抗菌薬・抗ウイルス薬などよりも静脈栄養系の薬剤が多くなる
という傾向があるとわかったのです。そこで、急性期としての評価に見合うように対象期間・薬剤を限定する形となりました。
7対1、10対1に迫る大再編の波
このほかにも、C項目の対象となる手術も対象手術が見直されたり、評価日数が短縮されたりなどの変更があり、改定後の看護必要度は大きく様変わりしそうです。
また、7対1病棟の基準でも少し触れましたが、10対1を含む急性期病棟の患者割合の基準も変わります(下図)。一見すると、ゆるくなったように映るものの、実際は「看護必要度を満たす患者」そのもののハードルが上がるため、これまでよりも基準をクリアするのが難しくなっています。
看護必要度の項目・基準を厳しくすることで、国は「病院・病棟の役割分担を進め、急性期のベッド数を減らす」という方針を、何とか実現しようとしています。
7対1の病棟では、より重症度・緊急度の高い患者さんを、より短期の入院日数で受け入れる役割が求められ、現場ナースの業務密度はさらに高まっていくでしょう。
さらに、10対1病棟にも今後、大きな変化が待っています。というのも、2024年4月から、看護配置10対1の新しい病棟「地域包括医療病棟」が誕生することになったのです。
新しい病棟は「高齢者の救急搬送」のメインの受け皿となる想定で、現在の10対1病棟や7対1病棟の一部を、いずれ新しい病棟へと集約する狙いがあるのは明らか。次回2026年度の改定以降、急性期病棟の大再編が予想されます。
看護師にとって現場での業務はもちろん、これからの働き方・キャリアプランにも影響は小さくなさそうです。
看護roo!編集部 烏美紀子(@karasumikiko)
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(参考)
令和6年度診療報酬改定について(厚生労働省)
令和6年度診療報酬改定の概要 入院Ⅱ(急性期・高度急性期入院医療)(厚生労働省)
令和6年度診療報酬改定の概要 入院Ⅰ(地域包括医療病棟)(厚生労働省)
個別改定項目について(厚生労働省)
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