注目の在宅サービス「看多機」運営のポイントは?|事業者交流会が初開催

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医療依存度の高い在宅療養者を最期までサポートするため、通い・泊まり・訪問介護・訪問看護を一体的に提供する「看護小規模多機能型居宅介護(看多機、旧複合型サービス)」(関連記事:看護師が開設する『複合型サービス事業所』)。同サービスは2015年度介護報酬改定で名称変更され、さらに定員増や加算が創設されるなど、普及に向けた取り組みが実施されている。

(富永 紗衣=日経メディカル)

 

日本看護協会は11月17日、看護小規模多機能型居宅介護事業者交流会を初めて開催した。参加者は看多機の事業者や開業を目指す看護職など130人以上。厚生労働省の担当者や看多機運営者、市町村の担当者などと活発な議論を交わした。 

 

 

会の冒頭、日看協常任理事の齋藤訓子氏は「看多機は非常に期待が寄せられているサービス」と挨拶。しかし事業所数は全国で218カ所とまだ少ないことから、「日看協が提案したサービスであり、生みの親の責任としてもっと事業所開設数を伸ばしたく、交流会を企画した。疑問が解決し開設が進む良い機会となれば」と会の趣旨を説明した。

 

日看協の齋藤訓子氏

会の冒頭で「看多機は非常に期待が寄せられているサービス」と挨拶する日看協の齋藤訓子氏。

 

「看多機(複合型サービス)が創設されて3年半経ち、現場の状況に合うよう制度には様々な変更が加えられている」と話すのは、厚生労働省老健局老人保健課看護専門官の猿渡央子氏。猿渡氏は2015年度介護報酬改定の内容を中心に、看多機の概要と今後の展望について講演した。

 

厚生労働省老健局老人保健課の猿渡央子氏

「看多機については、現場の状況に合うよう必要な体制を整備していきたい」と話す、厚生労働省老健局老人保健課の猿渡央子氏。

 

2015年度介護報酬改定では看多機(複合型サービス)事業所に対して厚労省が事前に運営状況の調査を実施。結果を踏まえて、よりスムーズな運営が可能となるよう改定を行った。 

 

改定の主なポイントは、

  1. (1)名称の見直し
  2. (2)登録定員数の緩和
  3. (3)外部評価の効率化
  4. (4)総合マネジメント体制強化加算の創設
  5. (5)事業開始時支援加算の延長
  6. (6)提供される看護の実態に合わせた加算と減算の実施
  7. (7)同一建物居住者へのサービス費変更

――の7点。

 

(1)については、従来名称の「複合型サービス」ではサービス内容がイメージしにくいとの意見が出されたため。通い・泊まり・訪問介護を提供する小規模多機能型居宅介護サービスに、訪問看護も提供できるようになったとして名称を「看護小規模多機能型居宅介護」と変更した。

 

(2)の登録定員は、これまで上限が25人(通いは15人、泊まりは9人)だった。しかし調査で、8割以上の事業所が登録定員の上限に達していた(参考:厚労省介護給付費分科会資料)ため、登録定員の上限を29人に増やし、1人当たり3m2以上の面積を確保している場合は通いサービスの定員を18人まで認めることととした。

 

また(3)外部評価は、運営推進会議で既に第3者による評価を受けているとの観点から、これまでの「都道府県が指定する外部評価機関において行うサービスの評価を受けなければならない」という規定が廃止。事業所の全職員が対象の自己評価を実施して運営推進会議にかけるという、効率化が図られた。様式例は厚労省のウェブサイトからダウンロードできる。

 

他にも、一定の基準を満たすと月1000単位の加算ができる総合マネジメント体制強化加算が創設されたり、事業開始後1年未満で登録者が定員の70%以下の事業所では月500単位の加算ができる事業開始時支援加算が2018年3月31日まで延長となるなど、事業所開業を促進する改定となっている(詳細は厚生労働省のウェブサイトを参照)。

 

さらに、地域医療介護総合確保基金における看多機事業所への配分基礎単価(補助金)の上限が、今年度から3200万円に増額された。猿渡氏によると、さらなる助成金を準備している自治体もあるという。

 

また今年度から、あくまで定員内での運営で、自治体から基準該当の指定を受ける必要はあるが、障害児・者向けにも看多機事業所としてサービスを提供できるようになった。猿渡氏は「現場からの要望や調査結果を基に、2018年度の介護報酬改定も見据えて、必要な体制を整備していきたい。調査などにぜひ協力してほしい」と呼びかけた。 

 

「看多機は『在宅の限界を高める』もの」

会では実践報告として、東京都新宿区健康部参事の矢澤正人氏と、看多機事業所(複合型サービス)わいはと目白訪問看護ステーションを運営する株式会社リープ(東京都新宿区)代表の細谷恵子氏が登壇。自治体の側と、実際に運営する側からの意見をそれぞれ語った。

 

細谷氏は「自治体の様々な補助金に助けられた」としながらも、看多機が新しいサービスであるため建築の基準が定まっておらず、特に高齢者障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法) や東京都の独自基準で、特別養護老人ホーム並みの基準を求められるなど「事業所建設に対しての障壁が大きかった」と苦労を語った。

 

看多機の強みである、利用者の事情に合わせて「訪問」「通い」「泊まり」のサービスを柔軟に利用できる仕組みについても、在宅中の利用者から、排便後に看護師に介助を求める電話がかかってきたなど実際の体験談を踏まえ、「利用者が『何でもあり』と誤解し、スタッフが疲弊する」と指摘。

また訪問看護に慣れている看護師でも、「通い」など利用者と日中に多くの時間を過ごすサービスでは戸惑うなど、人材マネージメントの難しさを語った。

 

このように運営上の苦労は多い一方で、地域のニーズは高く成果は着実に上がっている。要介護4でろう実施中の利用者が、経口摂取可能になり事業所を“卒業”した。看取りも使命と思い、積極的に行っている。細谷氏は「看多機は『在宅の限界を高める』もの。小規模ではあるが、地域の大きな力となれるよう運営を続けていきたい」と締めくくった。

 

<掲載元>

日経メディカルAナーシング

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