「准」医師ってありえますか?|医師3394人に聞く准看護師問題
【日経メディカルAナーシング Pick up】
戦後の看護職不足対策として設置された「准看護師」という資格。教育内容が全く異なるものの、法律上は看護師と同じ業務ができるこの准看護師という資格については、その是非や存在意義が数十年にわたり議論されてきた(関連記事1:今こそ准看護師の養成が必要だ、関連記事2:准看護師の養成は時代にそぐわない)。
(富永 紗衣=日経メディカル)
近年、准看護師養成所については建物の老朽化や教員確保の難しさなどの理由で年々閉鎖し、准看護師の養成人数は減少している。自然減を促す声がある中、日本医師会は補助金増額を要望するなど、准看護師養成の継続と促進を求めている(関連記事3:准看護師養成課程の応募者数が2万人割る)。
この「准看護師の新規養成を促進するか」という問題には、賛成派が医師、反対派が看護師という単純化した構図で語られることが多い。しかし、賛成する医師は本当に多いのだろうか。今回、准看護師の新規養成について、日経メディカル Onlineの医師会員を対象に調査を行った。回答者数は3394人。
まずは「准看護師の新規養成の促進に賛成か」と聞いたところ、賛成34.5%、反対32.1%、どちらでもない33.3%と、やや賛成が多いもののおおよそ3等分される結果となった(図1)。
図1 准看護師の新規養成を促進することに賛成ですか?
賛成する理由は「看護職が不足している」が最多(図2)。続いて、「准看護師が活躍できる職場がある」「実際の業務は看護師と変わらない」「短期間で養成できる」「養成ルートは多様な方がいい」という順に並んだ。
図2 准看護師の新規養成を促進することに「賛成」の理由は?
自由意見でも、賛成派では「とにかく看護師が足りない!」(40歳代開業医、眼科)という叫びが目立った。
また「病棟などでは必ずしも看護師の資格を要さない仕事も多くあるはず。正看護師にはその専門性を必要とする仕事を任せればよい」(50歳代開業医、眼科)という区別を明確にすべきという声や、「職へのルートが多いこと自体は決して悪いことではない」(50歳代勤務医、一般内科)など、多様なルートとして准看護師養成の存続を求める意見も少なくなかった。
一方、反対派の理由は「業務内容は同じなのに2つの資格があるのはおかしい」がトップ(図3)。「准医師とかもあり得ますか? あり得ないと思います」(50歳代開業医、一般内科)、「時代と逆行している。看護助手などより下位の資格をつくるなら理解できる」(30歳代勤務医、脳神経外科)という意見が挙げられた。
図3 准看護師の新規養成を促進することに「反対」の理由は?
また准看護師を新規養成しても「提供する看護の質に不安がある」とする声も多かった。「基礎知識を教えられていない医療従事者は医療安全上も危険。廃止すべき」(50歳代勤務医、小児科)、「もう准看育成レベルでは現在の医学・医療にはついていけない」(60歳代開業医、循環器内科)という厳しい意見も。
さらに反対派では、「既存の准看護師が正看護師に移行するための施策を推進してほしい」(40歳代勤務医、代謝・内分泌内科)など、新規養成よりもレベルアップに力を注いでほしいという意見が散見された。
調査では賛成、反対をまず選択してもらったが、現在の制度に全面賛成もしくは反対という医師はほとんどおらず、「賛成」とする医師でも何らかの改革が必要という意見が多かった。
「どちらでもない」とする医師についても、「きちんとした准看護師が養成されるのには賛成ですが、数だけ増やすというのは反対です」(40歳代勤務医、精神科)など、資格の名称よりも提供する医療の質を重視する声が目立った。
ただ開業医は、「賛成」47.5%、「反対」18.4%、「どちらでもない」34.0%と、「賛成」がほぼ半数という結果となった。自由意見でも「開業医は准看で十分」(50歳代開業医、一般内科)、「開業医にとって正看護師はむしろ必要なく、准看護師が最も手の動く働き手になってくれる」(50歳代診療所勤務医、一般内科)と、看護師の雇用が難しいなどの理由で准看護師を求める声が挙がっていた。
●養成促進に「賛成」派
・とにかく看護師が足りない!!(40代開業医、眼科)
・当地域では、看護師・准看護師不足です。看護職員の採用、雇用の維持に准看護師制度は継続して、診療所などでの看護職員の不足の解消ができるまで、存続させるべきと考えます。(40代開業医、消化器内科)
・「理論もしっかりの看護師,将来はリーダーシップを期待」に対して、「まずは実技実践から入る准看護師」という資格があっても良いと思う。(40代勤務医、心臓血管外科)
・何をできるかで分類すればいい話です。できる仕事の範囲を決める。これが重要です。(40代勤務医、消化器外科)
・病棟などでは必ずしも正看護師の資格を要さない仕事も多くあるはず。正看護師にはその専門性を必要とする仕事を任せればよい。(50代開業医、眼科)
・35歳で看護師を目指した知り合いがいる。彼女は、4年制の看護大学に行くよりも、准看でいいから早く患者さんに寄り添いたいようだ。このような人に機会を与えるためにも、准看の制度は残してほしい。(50代開業医、一般内科)
・どうせOJTで育っていくのだから、短期間でなれる道は残していい。全員が4年いける余裕があるわけではない。准看も正看も3年経てば遜色ない。(30代勤務医、麻酔科)
・正看護師が「准看護師養成反対」を唱えているのを聞くと差別意識があるのかとも思う時があります。いずれにせよ職へのルートが多いこと自体は決して悪いことではなく、准看護師・正看護師・看護大学卒・大学院卒様々な経歴の持ち主がいることで不都合があるとは思えません。(50代勤務医、一般内科)
●養成促進に「反対」派
・業務内容は同じなのに2つの資格があるのはおかしい。(40代開業医、一般外科)
・准医師とかもあり得ますか? あり得ないと思います。(50代開業医、一般内科)
・時代と逆行している。看護助手などより下位の資格をつくるなら理解できる。(30代勤務医、脳神経外科)
・看護師に一本化すべきです。今までの准看護師も経過措置で正看護師とし、正、准という呼称を廃止する。女の世界ですから、一筋縄ではいかないでしょうが、看護協会の英断を期待します。(50代勤務医、一般内科)
・そもそも、「安価に」育成できるという視点を医師、医師会は捨てるべき。患者から見てもわかりにくい制度であり、一本化してすっきりした資格にすべきである。(60代勤務医、リハビリテーション科)
・基礎知識を教えられていない医療従事者は医療安全上も危険。廃止すべき。(50代勤務医、小児科)
・もう准看育成レベルでは現在の医学・医療にはついていけない。(60代開業医、循環器内科)
・既存の准看護師が正看護師に移行するための施策を推進してほしい。(40代勤務医、代謝・内分泌内科)
・正看護師以上の知識や対応力を備えていても、経済的理由により准看護師となっている人もいる。国または地方自治体が学費などをもっと援助すべきである。(60代勤務医、総合診療科)
●どちらでもない派
・うまく活用すればいいが、安い人手と考えるなら廃止。(50代診療所勤務医、一般内科)
・きちんとした准看護師が養成されるのには賛成ですが、数だけ増やすというのは反対です。(40代勤務医、精神科)
・「准看護師」という呼称は、「看護師の亜流」といった感じで、看護師からも差別される(下に見られる)ような印象を持つ。国が介護現場での人員増強を図るならば、呼称を変えてほしいと思う。少なくとも、医師から見ると、看護師と准看護師の違いが分からない。(30代勤務医、総合診療科)
・いずれにせよ、立場と役割を明確にするべき。(50代勤務医、神経内科)
・准看護師と正看護師の知識レベルが大きく違うのであれば、新規養成の推進には反対であるが、大きな差は感じられない。大卒の正看護師であってもさほどの差は感じられない。ただ単に、看護師の地位向上を目的に准看護師制度を廃止すると、看護師不足に拍車がかかると思う。正看護師の教育内容と試験制度を見直す時期ではないかと思う。(50代勤務医、消化器外科)
・いずれの陣営も理由付けが理念的なものが多い印象です。現在と将来の社会にどれだけの「看護需要」があり、そのための資格者をどのように養成していくのか、看護師の養成のみで十分支えていくことが可能であるのか、准看護師を養成しないと需要を満たせないのか、といった議論がないように感じます。(50代診療所勤務医、総合診療科)
(調査概要)
日経メディカル Onlineの医師会員を対象にウェブアンケートを実施。期間は2015年4月27日~5月7日で、回答数は3394人。内訳は、勤務医71.5%、診療所勤務医12.9%、開業医13.8%、その他1.8%。年齢は、20歳代が2.6%、30歳代が17.9%、40歳代が30.3%、50歳代が36.6%、60歳代が11.1%、70歳以上が1.5%。
<掲載元>
Aナーシングは、医学メディアとして40年の歴史を持つ「日経メディカル」がプロデュースする看護師向け情報サイト。会員登録(無料)すると、臨床からキャリアまで、多くのニュースやコラムをご覧いただけます。Aナーシングサイトはこちら。
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