看護師さんよ、DV(ドメスティック・バイオレンス)に気を付けて!

こんにちは、依里楓です。水商売を卒業して、看護師になって7ヶ月が経ちます。

 

看護学生時代、なんでこの人と付き合ってるの?と訊きたくなるような相手とお付き合いしている同級生をたくさん見てきました。具体的にいうと、貸したお金が返ってこないとか、帰りが遅くなると殴られるとか、洋服を掴んで投げ飛ばされるとか。

それ、DV(ドメスティック・バイオレンス)だよね?別れた方が良いんじゃない?と恐る恐る言うと、決まって返ってくるセリフは、「うーん、でも好きなんだよね」だったの、懐かしい。

 

看護学生、つまり将来的な看護師はDVに遭いやすいということなのか、私の通っていた大学が何か特殊だったのか、偶然そういった子が周りに集まっていただけなのかはよく分かりませんが、最近「看護師は共依存傾向が強い」といった内容の論文を読んでいて成程面白いなあと感じたので、今回は看護師と共依存について書かせていただければと思います。

 

元キャバ嬢ナースのとある視点

Vol.2 看護師さんよ、DVに気を付けて!

DV(ドメスティック・バイオレンス)と共依存

そもそもDVは共依存だということはどれくらい一般に認識されているのでしょうか。

 

DVのサイクルは主に、

①加害者のストレスがたまる時期(緊張形成期)

②加害者側のストレスが爆発して、パートナーに対して言葉・もしくは身体的に激しい暴力を振るう時期(急性暴力期)

③我に返って、あるいは計算的に加害者側がパートナーに「もう2度としない」「君じゃなきゃだめなんだ」等甘い言葉で安心させる時期(ハネムーン期)

を繰り返しますが、その中で被害者が、パートナーに繰り返し暴言を浴びせられ、殴られても「自分がしっかりしないから殴られるんだ」「この人には私が必要なんだ」と思ってしまい、自分自身の身に危険が及んでもパートナーと離れられないことを、DVの共依存といいます。

 

こういった書き方をするとDVは被害者にも非があるように読まれてしまいがちですが、被害者の共依存は相手からの暴力の中で自分の心身を守ろうとする反応だと考えると、DV被害者の苦痛は決して軽視してはいけないものです。

 

そしてDVを受けやすい、共依存関係に陥りやすい人間の特徴というものが、看護師を目指す人間の特徴ととてもよく似ているのです。

 

看護師は共依存になりやすい?

私とは別の病院で看護師をしている友人が、付き合い始めた恋人のことを話していました。

自炊できなくてお酒に弱くて、目標を持って仕事を頑張っていて、でも「会いたい」って言うとすぐ来てくれる優しい彼氏さん。彼から電話がくれば私と話している時でも「ごめん」と言ってすぐに電話に出るその友人の嬉しそうな顔がとても素敵で、だからこそ、だんだん彼氏さんからの「今すぐ会いたい」が増えていてちょっと疲れる、という愚痴も微笑ましく聞いていたし、「連絡返さないと後から怒鳴られるんだよね、まあしょうがないんだけど」と言うようになった友人の言葉への違和感に私自身なかなか気付かずにいました。

 

そして、酔っ払った彼に首を絞められたと聞いた時にはさすがにこれは駄目だと思いながら、「でも翌日には謝ってくれるし」「彼にこういうことさせるのは私が悪いんだと思う」と自分を責めてどんどん傷付いていく友人を見ていると、極端に他人に依存的な性格では決してないと思っていた彼女が日に日に冷静さを失っていく様子に焦りを覚えたし、“DV”という言葉は知っていたのにどうしてもっと早く気付けなかったのかと悔しかったし、近くにいるのに何もできない自分が嫌で嫌で仕方ありませんでした。

 

 

共依存関係に陥りやすい人間の特徴は、自己肯定感、つまり「自分はかけがえのない存在だ」と思う気持ちが低い、他人の面倒をみたがる、誰かに頼られていないと不安になる、怒りの感情を表現することが苦手、等が挙げられます。

 

そして、ある看護学校で看護学生を対象に行った調査で、看護職を選択した理由として、「人の役に立つ職業だから」「人に必要とされたいから」「人のお世話をするのが好きだから」の3つの理由が7割近くを占めていることに表されるように、共依存関係に陥りやすい人は看護師をはじめとする対人援助職を一生の仕事として選ぶことが多いようです。

 

確かに療養上の世話という仕事の特性上、人の役に立っていると思い込みやすい部分はありますし、そもそも世間的にこれだけ3K(きつい、きたない、危険)と言われている看護師の仕事に就きたいと思う時点で、メンタルヘルスの部分に何かしら問題を抱えている可能性は少なからずあるとは思います。自分が看護師を仕事として選択してしまった手前あまり認めたくないことではありますが、患者様のことを考える以前に、自分自身の性格の特性をきちんと認識することは、看護師として仕事をするために必要不可欠なことかもしれません。

 

看護師を選ぶ人全員に共依存傾向があるとは思わないし、共依存傾向が強いからといって必ずDVを受けるということも決してありません。一方で、3日に1人、成人した男女が配偶者からの暴力で亡くなっている現状、看護師以外の職業に就いていたってDV被害を受ける危険は十分にあり得るでしょう。ただ、看護師になった私達は選んだパートナーが暴力的だった場合に自分を責めやすく、辛いと感じてもなかなか離れられないリスクが高いことはどうやら事実のようです。

 

共依存関係に陥らず、平穏な日常を過ごすには

個人的に、看護師が他人と共依存関係に陥らず、心身共に健全に過ごしていくために必要なことは、まず看護学校・大学の教育の中で、看護師は自己肯定感が低い人が多いことや共依存になりやすいことをきちんと学習することだと感じます。学生の時、先生方はやたらと「患者さんのために」と言っていましたが、「患者さんのため」を考える前に自分自身について考え、精神面に病的な何かが見つかった場合には現場へ出る前に治療する機会を持つべきでしょう。

 

また現場に出てから、患者さんのためを想ってケアを工夫する際、本当に患者さんのためなのか、独りよがりの自己満足になっていないかを考えること、プライベートでも、極端に「尽くす」立場になっていないかを日常的に振り返ることも重要だと考えています。

 

他人と深く関わる仕事をしているからこそ自分のことが見えにくくなるのが看護師の特徴だと感じます。日勤だけ、クリニック勤務等、働き方が選びやすいとはいえ不規則な勤務の現場も多く、日常を送っていくだけでも大変ではありますが、恋愛をはじめ人間関係の思わぬところで人生を転んでしまわないよう、私自身が心がけると同時に、看護職の皆様が心身を平和に過ごせるよう、願っております。

 

【著者】依里楓

東京から2時間くらいの場所にある総合病院の内科系病棟で働く看護師。水商売をしていました。

ブログ:プロセスレコード

 

(参考文献)

警視庁(2014).平成25年の犯罪情勢.

森秀美・長田久雄(2007).看護師-患者関係における共依存傾向とその影響についての検討.健康心理学研究,20(2),61-68.

大澤優子・田中瞳・松下年子・丸山昭子・篠原百合子・渡邊裕見子(2015).看護系大学生における共依存傾向と親の養育態度および自己価値観の関連性についての予備的調査.第45回日本看護学会論文集 精神看護,286-289.
斎藤学編(1999).依存と虐待.日本評論社.

山口忍・荒賀直子(2000).看護女子学生と看護以外を専攻する女子学生の共依存傾向について.順天堂医療短期大学紀要,11(2),33-39.

安田美弥子(2002).あなたも危ない!?共依存症.看護技術,47(2),198-205.

米山奈々子(2005).自分自身の生き方も見つめ直す DVと共依存の問題と出会って 私とアディクション看護.精神科看護,32(10),70-74.

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