看護師は白衣の天使なのか、それとも白衣のOLなのか

こんにちは、依里楓です。水商売を卒業して、看護師になって8ヶ月が経ちました。

 

看護学生の時に、先生方から「患者さんのために」と何十回、何百回も言われた経験は看護師なら誰でも持っているでしょう。「患者さんのため」を想って厳しい実習に耐え、看護師資格を取り、「患者さんのために」と病院で日々走り回るのが「白衣の天使」としての看護師。

 

でも最近、看護師は白衣の天使じゃなくて白衣のOL、もしくはサラリーマンだと思った方が良いのではないか、なんて感じてしまうことが多々あります。今回は、普段自分が持っている、看護師という「職業」に対する違和感について考えてみようと思います。

 

元キャバ嬢ナースのとある視点

Vol.3 看護師は白衣の天使なのか、それとも白衣のOLなのか

自分の安全を確保できない臨床の日々

例えば私は今内科系の病棟に勤務しているため、抗癌剤の点滴を毎日患者様に繋いでゆくことが仕事のひとつです。抗癌剤を投与している患者様の排泄物を片付ける時、本来であれば自分が曝露しないためにゴーグル、エプロン、マスク、手袋が基本装備なわけですが、実際には目が回るほど忙しい業務の中でそんなことをしている暇は無く、手袋プラスマスクがせいぜいになっています。

 

また仕事が時間内に終わることなんて滅多に無く、最初は慣れないせいだと思っていたのですが、私だけでなく先輩方も当たり前のように3、4時間の残業をしている様子をみると、労働基準法的にどうなのよ、と。

 

入職直後は、自分の安全も時間の確保もできない環境やそれを当たり前に受け入れている先輩方をみながら「なんで忙しいからって自分を犠牲にしなきゃいけないの…っていうかこんなに危険な仕事してるのに給料低すぎるでしょう…」と悶々としていたのですが、人間どんな環境にでも慣れてくるもので、だんだんとそれが当たり前になってきており、だからこそ危ないなという気もしています。

 

実態調査が他人事のように思えてしまう理由

看護師を対象にした労働実態調査では、7割以上の看護師が「辞めたい」と思っている、約7割の看護師が慢性的に疲労を抱えている、切迫流産は約3割、残業の2/3は賃金不払いのサービス残業等々、看護の労働現場の環境の衝撃の劣悪さが並びます。調査を読んでいて、こんなにひどい環境の中で私も働いているのかと危機感を覚えるくらいです。しかし、どことなく「まあこんなものだよね」と他人事のように感じてしまう自分もいて。

 

人の命に関わる現場であり、その上まだまだ女性が大半を占める職場の緊張感は一般社会からみたら特殊なものですし、看護師を必要とする患者様がたくさんいる現状で私達の承認欲求のようなものは満たされやすいと思います。だからこそ、その特殊さに慣れてしまうことで自分自身の心身の状態に鈍感になり、実態調査がどことなく空虚なものであるように感じてしまうのだとも考えられます。

 

そしてそんな鈍感さの積み重ねは、いつか看護師自身の身体的・精神的な破綻に繋がってしまうのではないかと不安になるし、余裕のない状況にある看護師が患者様にとって良いケアを行えるわけがありません。リスクを考えたからって忙しさが変わるわけでも環境が変わるわけでもありませんが、自分達を医療機関の一従業員、つまり「白衣のOL・サラリーマン」として自覚しなおした方が良いようにも思います。

 

患者様にとっての天使であり、社会の中でのOLであるために

そんな風に思っていても、退院する患者様に、「治療は地獄だったけどあなたがいてくれたから耐えられたのよ。ありがとう」と言われた時にはとてもとても嬉しかったし、逆に患者様が急変して亡くなれば家でこっそり泣いてしまう。仕事とはいえ人と関われば自分の感情が大きく揺れることもしょっちゅうで、そのせいで「私が頑張らなきゃ!」と必死になったりもします。

 

何を割り切って何を大切にすれば、自分にとっても患者様にとっても良い看護ができるのか分からないのは新人の今だからなのかもしれません。それでも、患者様にとって「白衣の天使」でいながら、「白衣のOL・サラリーマン」として自分を損なわずに働く方法を模索していきたいし、できることなら多くの看護師の皆様が思考停止することなく、良い働き方を見つけていくことができれば素敵だなと感じる次第です。

 

【著者】依里楓

東京から2時間くらいの場所にある総合病院の内科系病棟で働く看護師。水商売をしていました。

ブログ:プロセスレコード

 

(参考資料)

日本医療労働組合連合会(2014).医療労働 臨時増刊.

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