真面目な看護学生よりも遊べる看護学生を

こんにちは、依里楓です。水商売を卒業して、看護師になって8ヶ月が経ちました。

 

最近、看護学生が実習に来るようになりました。

1年目の私が指導につくことはないものの、5人+先生なんかの大所帯で来る上に私自身が昨年まで自分が学生だったこともあって、何かと気になるものです。

医学生はナースステーションの隅で寝ているのに看護学生はいつも怯えたような顔で「すみません」を連発しているのが納得いかなくて、処置の見学に両者が来るとつい看護学生を見やすい位置に引っ張っていってしまいます。

 

元キャバ嬢ナースのとある視点

Vol.4 真面目な看護学生よりも遊べる看護学生を

 

真面目であることと患者のニーズをくみ取れることは別だ

9月に、九州の某大学の2年生の授業設計に参加しないかとお誘いいただき、「初めての実習がうまくいかなくて精神的に潰れそうな時にどうストレスに対応していくか」というテーマのケーススタディで使用する事例の作成をさせていただきました。

 

ちょうど仕事が休みだったので授業の見学に行ったのですが授業の感想といえば、いやあ看護学生はなんて真面目なんだろうなあと。

 

私自身は学生時代決して真面目な方では無く、最低限単位を取れる程度にしか学校に行かずに実習中すら週3でキャバクラ出勤という生活をしていたので、ケーススタディの事例作成を依頼された時に1番に考えたことといえば、「授業に参加する気がなくても、プリントを捨てる直前くらいにさくっと流し読みしただけで実習中のストレスについて考えることができるようなケースを作らなければ」だったため、実際に授業見学をしてみて、学生全員がきちんと授業に参加している状況に唖然としてしまいまして。

 

自分を棚に上げつつ今になって回りをみたところ、看護学生といえば、看護師人生の中で1番真面目な時期ではないかな、と感じます。看護師になればある程度のことは「仕事」と割り切り、遊びとのバランスを取りにいくものの、学生のうちは大量のレポートやテスト、そして実習と、追われるものの多さに常に辟易。いつも「仕事したくない」と言っている職場の某先輩でさえ、「学生の時が1番真面目だったなあ」と話してくださいます。

 

そして現場に出て思うことは、学生の時の真面目さが常にプラスの方向に働くわけでもないなという、少し悲しい現実だったりもするのです。

 

例えば、安静度は病棟内なのに売店までお買い物に行ってしまう、何度言っても指示の守れない患者様って割とよくいまして、真面目な看護師ほど「あなたの身体のためを想って言っているのですよ」というスタンスで患者様にお説教をするのですが、社会人を相手にするのであれば「あなたの身体はあなたのものだから何しようと文句言えないけれど、指示を守らないせいであなたに何かあればこちらの仕事が増えるので不本意です」と伝えた方が効果的で、且つ本人からの信頼を得られる場合もあります。

 

そういった意味で、私にとっては教科書に載っていた「~な患者への接し方」よりも、夜の仕事で人と話し続けた日々や一般企業でインターンシップをしていた時に放り込まれた異業種交流会の連続の方が具体的な血肉になっているというのが正直なところですし、コミュニケーションなんてイレギュラーの連続ですから、机にへばりついて勉強しているよりも積極的に外に出て人と話す経験を重ねた方が手っ取り早く身に着くのではないかと感じます。

 

 

「看護師ではない自分」を持つことがストレス軽減に繋がる

看護学生が学業のみに対して真面目であるよりも、外に出て他人と交流する方が良いと私が思う理由はもうひとつ。

 

新人看護師は就職して、思い描いていた自身の看護と実際の現場とのあまりの差にリアリティショックを受ける、という論文は数多く執筆されています。

リアリティショックの原因は「技術の不足」「責任の重さ」「業務の多忙さ」「患者の死」「職場の人間関係」など多岐に渡り、人の生死に関わる現場ならではのものも多くありますが、人間関係や責任の重さによるストレスは、良く言えば真面目な、悪く言えば考え込みすぎる性格の看護師に起こりやすいように思います。

 

現場に出れば最初は本当に何もできないものです。最初の3ヶ月、先輩から「最初は誰でもできないし技術なんて慣れだから!絶対できるようになるから今は耐えるの!あなたの今の目標は毎日職場に来ることだけでいいの!」と懇々と言われたものですが、仕事のストレスを取り戻すかのように休日に遊びまわっていた私ですらストレスで全身に蕁麻疹を出したり突然40度近い熱を出したりしましたから、看護学生の時に学業に真面目に取り組むことを極端に是として、「真面目に勉強している自分」に自信を持っていた人にとっての辛さは想像を絶します。

 

看護の現場は責任の重いものだからこそ、自身の精神を保つためには看護と全く関係のない立場にいる自分を持つ時間が必要だと思いますし、そういった立場を育む時間は、就職してからではなかなか持てません。狭い業界の中で「自分は駄目だ」と思いこむ羽目にならないためにも、学生のうちからの「遊びの余裕を持つ習慣」を身に着けておいた方が健全に仕事できるのではないかと感じます。

 

 

効率的に時間を使う学生生活を

看護学生は忙しいんだからそんな時間無いよ、と言われそうですね。個人的には、看護学生、ひいては看護師は、時間を区切ってものを考えることをあまり意識しないように思います。実習中は睡眠3時間なんてよく聞く話ですが、眠る時間をそこまで削って勉強する、そのうちの何時間が本当に集中している時間でしょうか。人間の集中力はそんなに長くは持ちません。

 

睡眠を削っての勉強が「がんばった」と言われる、逆に言えば時間を区切って「何時までにここまで絶対に終わらせるのだ」という、自分を焦らせるための決意の起きにくい環境が、看護学生から時間を奪っているように感じます。看護学生の目標は、まずは単位を取得して看護師国家試験に受かることですから、看護に関することに対してもそうでないことに関しても経験値を上げるために、効率よく時間を回す方法を考えてみても良いのではないかと思う次第です。

 

また、現役の看護師の先輩方は学生時代をどう振り返るのでしょうか。おそらく多くの方がリアリティショックを経験済みで、もしかしたらバーンアウトの状況にあるかもしれません。学生の時に死ぬほど勉強したから今の自分があるんだと思う方、もっと遊んでおけば良かったと思う方、真面目に過ごさなかったことを後悔している方、それぞれの気持ちがあると思います。私も含め、看護の仕事が全く分からない看護学生時代は過ぎてしまいましたが、その当時の経験を上手に消化しながらこれからの看護師資格取得者としての人生を歩んでいけたら素敵だな、と感じます。

 

【著者】依里楓

東京から2時間くらいの場所にある総合病院の内科系病棟で働く看護師。水商売をしていました。

ブログ:プロセスレコード

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