なぜキャバクラ嬢は看護師を目指し、看護師はキャバクラ嬢になってゆくのか

はじめまして、依里楓といいます。水商売を卒業して、看護師になって5ヶ月が経ちます。プロセスレコードというブログを運営しています。

元キャバクラ嬢のいち看護師から見た看護師の世界について、書いていければと思います。

 

元キャバ嬢ナースのとある視点

Vol.1 なぜキャバクラ嬢は看護師を目指し、看護師はキャバクラ嬢になってゆくのか

最近、というか学生の頃から疑問に思っていたことといえば、なぜ看護師を目指すキャバクラ嬢やホステスがこんなにも多く、一方看護師を辞めて水商売を始める女性もこんなにも多いのかということです。

 

 

私は学費の事情で看護学生と水商売の掛け持ちを始め、学生時代に在籍したキャバクラやクラブは3店ですが、派遣キャバクラ嬢という、キャスト(店に在籍する女の子)が足りない店に単発でお手伝いに行くというややニッチな働き方をしていた時期に数十店舗のお店を回らせていただきました。

 

派遣キャバクラ嬢の時に、派遣先でキャストさんやお客様に「看護学生なんです」と話すと、キャストさんから「看護師さんとか看護学生さんとか多いよね~この仕事」と言われ、お客様から「前指名していた子、看護師になるって言ってキャバクラ上がったよ!」と話されることが多く、最初は驚いたものです。どこのお店にも大抵ひとりは、「看護」に関わった経験のあるキャストさんがいる、というのはどうやら単なる思い込みでは無いみたい。

 

最初は、女性の7人に1人が看護師という、単純に就業者数が多い仕事だから、そこを目指す人もドロップアウトする人も多いのかしらと思っていたのですが、看護師になって、それだけではないなと感じます。

 

なぜ看護師を目指すキャバクラ嬢がこんなに多いのか

私自身は看護学生になってから水商売を始めましたが、夜の仕事の中で、ある程度の年齢になったキャストが看護師を目指しはじめるのはよくある話。若さと美しさが仕事に大きな影響を与える水商売は、稼げる期間の寿命が極端に短く、20歳前後のキャバクラ嬢なんてそこら中にゴロゴロいても、35歳を超えて水商売1本で食べていける女性はほんの一握り、いやひとつまみくらいです。

 

ですから、20代後半あたりになると、それまでは水商売だけで何となく成り立っていた生活から、どうにか安定した仕事に就かなければという気持ちが生まれるキャストは少なからずいて。しかし、例えば18歳から25歳まで水商売をしていた時、履歴書に何と書いて就活をすれば良いのでしょうか。大卒でさえ就職し辛い社会的な状況の中、昼の仕事で正社員として働き始めることはそう簡単ではありません。

 

そんな時に看護師といえば、大学・専門学校が乱立しているお陰か、学力的な偏差値が相当低くても、履歴書の空白にも寛容に入学可能で、専門学校であれば学費もほとんどかからず、万年人手不足なので就職できないなんてことはまずありません。大卒20代の正社員女性の平均給与が200万円台前半(注1)のこのご時世において、専門卒でも1年目から300万円程度の年収(注2)が稼げる上、結婚や子育てで一旦離職しても資格を生かしてすぐに再就職が可能な、ライフワークバランスを取るには最適な仕事ともいえます。

 

水商売の特性上、人とコミュニケーションを取る能力には欠けていない彼女達ですから、そういったメリットに引き寄せられて看護師になることは自然なことだといえるでしょう。

 

この記事を読んでくださっている皆様の周りにもひとりくらいはいるはずです、元キャバクラ嬢、あるいは元ホステスの看護師。

 

なぜ看護師を辞めて水商売に就く女性がこんなにも多いのか

一方で、「元々看護師だったけど、続かなくて今は水商売をやっている」という女性も相当数いるのが夜の世界です。

 

元看護師のキャバクラ嬢なんてどこにでもいましたし、以前働いていたお店のママだって看護学校中退でしたし、「本当は助産師なんだけどちょっと疲れちゃったから休職して水商売やってる」という女性にも出逢いました。

 

確かに看護学校での生活、特に実習期間って寝られないし、何もできないし、理不尽に叱られることも多いし、ものすごく辛い。毎年ドロップアウトしていく同級生がいました。看護師になってからも、女性特有の人間関係の面倒くささや患者様の命に関わるプレッシャーで辞めてしまう方も多く、離職率は11%と10人に1人以上が看護職を離れている現状です(注3)。

 

そして自分が看護師になって周りを見渡すと、看護師さんのほとんどは「看護師辞めて何するの?」と考えているのだなと感じます。個人的には別に、事務職に就くなり一般企業の中途採用を目指すなりいろんな選択肢があるとは思うのですが、確かに病院付属で就活をせずに看護師になれる学校が多い環境で一度看護師を目指してしまうと、普通の就活がどんな仕組みで行われているのかもわからなくなってしまうし、看護職以外の昼の仕事が自分の選択肢から遠い存在となってしまうこともまた事実なのかなと実感します。

 

そんな中、水商売といえば面接1本で履歴書もいらず、手っ取り早く稼げるイメージを持たれがちです。「とりあえず普通の仕事をするまでのつなぎに…」と働き始めて、そのままずるずると働いている元看護師のキャストも多いです。

 

20代前半で看護師を辞めて水商売の世界に入って、30歳くらいでだんだん稼げなくなってきた時に彼女達が看護師として再就職するのか、全く別の仕事に就く努力をするのかは分かりません。何にせよ、本人が幸せだと思える選択ができれば良いなと思います。

 

白衣の天使と夜の蝶と

水商売から看護師を目指す女性、看護師から水商売に向かう女性、個人的にはどちらも人間味があって素敵だなあと思うところではありますが、「白衣の天使」と言われる真っ白な(振る舞いをしなければいけない)業界と、「夜の蝶」と呼ばれる極端に色鮮やかな業界の距離が案外近いというのは、それだけ看護師を目指す道のりや看護師としての生活がアンバランスでリスキーだということのような気もしています。

 

現在看護師を目指している学生さんや、看護師として働いている方々につきましては、患者様の心身だけでなく自分の心身も大事に、バランス感覚を大切にしながら日々の生活を送っていって欲しいなと、入職3ヶ月目のある日突然ストレスで全身に蕁麻疹を出しながら出勤した新人看護師として感じる次第です。

 

 

【著者】依里楓

東京から2時間くらいの場所にある総合病院の内科系病棟で働く看護師。水商売をしていました。

ブログ:プロセスレコード

 

(注1)平成 25 年賃金構造基本統計調査(全国)の概況(厚生労働省)

(注2)データ集~看護師の給与事情~(日本看護協会)

(注3)「2014年 病院における看護職員需給状況調査」速報日本看護協会News Release)

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