救命救急センターで感じたアロマの有効性|日本アロマセラピー学会認定看護師【後編】
東京都葛飾区の「朱クリニック」で、日本アロマセラピー学会認定看護師として勤務する小山めぐみさん。小山さんはイギリスでメディカルアロマセラピーを学び、クリニックでアロマセラピストを勤めるかたわら、学会の理事やアロマセラピースクール副校長を兼任。認定資格制度の整備にも携わりました。
日本アロマセラピー学会認定看護師・小山めぐみさんインタビュー【後編】
ICUの患者さんにアロマで生きる力を
今でこそアロマセラピーを取り入れる医療施設は増えてきていますが、それはごく最近のこと。教育施設も資格制度もなかったとき、小山さんはあることがきっかけで医療現場でのアロマセラピーに興味を持ったといいます。
「全身熱傷の患者さんが運ばれてきたんです」
小山さんが救急救命センターに勤務していた頃でした。最先端医療での治療を行っていましたが、患者の目に映るものは病室の壁だけ、聞こえてくるのはモニタリングの音だけ。食事もできないため味覚の刺激もなく、包帯でぐるぐる巻きの体では触れても温かさを感じることができない…。
そんな状況で、小山さんは唯一残った嗅覚を刺激することで、生きる力を持ってもらえるのではないだろうか、と考えました。
さらにアロマセラピーは、熱傷の急性期からトリートメントを行うことで関節拘縮を予防できたり、足浴や手浴といった看護に幅を持たせることができたり、「看護に活きる」ものだと思いついたのです。
アロマセラピーを学びたいと思った小山さんですが、当事の日本では医療現場で使える技術を教えてくれる人はいませんでした。
そこで、小山さんはアロマセラピーを医療の分野で導入していた、イギリスへの留学を決意します。選んだのはアロマセラピーだけでなく、マッサージや栄養学など、幅広い分野をカバーしている「レイワース・センター」。多角的にアロマを学べるのではないか、という考えからでした。
施術を行うベッド。アロマセラピーを通じて、患者の隠れていた悩みや症状がわかることも
医療分野のアロマセラピーの確立
1990年代、日本では、アロマセラピーを行うエステサロンやマッサージ店などではかゆみやかぶれといったトラブルが頻出していました。アロマセラピーそのものではなく、精油の管理や使い方の知識が不十分なことによる問題が起きていたのです。
そこで、臨床医が中心となり、正しい知識を普及させ事故を防止するため、医療分野のアロマセラピーを確立させるため、最新のメディカルアロマセラピーを研究する「日本アロマセラピー学会(JSA)」を設立しました。
時を同じくして帰国した小山さんは、すぐに発足したばかりのJSAに入会。イギリスで取得した「IFA国際アロマセラピスト資格」を活かし、体制の構築や教育制度の整備、資格制度の樹立などに携わります。
「学会の中でも職種によって目指す方向が微妙に違っていて、さらに圧倒的に看護師の会員が多かったので、まず看護師部会を立ち上げました。患者さんに安心・安全にアロマセラピーを行うにはどうしたらいいかということを、看護師の目線から技術だけでなく広く研究しています」
クリニックに併設の体にやさしくおいしい食事を提供する「syu-cafe」。ここにもセラピールームがあり、精油を購入することもできる
看護技術の一つとしてアロマを学ぶには
日本アロマセラピー学会認定資格の取得方法は、まず学会の正会員となり、定められた全12コマの基礎セミナーを受講。JSA基礎認定試験に合格後、所定の手続きを取れば学会の認定資格が得られます。基礎セミナーはアロマセラピーの基礎に加え、解剖学や薬理学についても学ぶ、医療現場での展開に即した内容です。
1カ月に1回程度の開催のため、「忙しい看護師さんでも無理なく通えると思います」と小山さん。さらに実践的な知識を身に付けたい人のためには、トリートメント(マッサージ)セミナーも開講しています。
現在、JSA基礎認定を取得した看護師は約370名。アロマに興味を持っていることはもちろんですが、医療現場で自分の理想とするケアと現実の板挟みでの葛藤や、もう一歩進んだ看護をしたい、という思いで資格取得を目指す看護師が多いようです。
「実際に医療現場で取り入れるには医師の許可が必要にはなりますが、アロマセラピーは確実に看護技術の1つです。痛みや不安などの緩和にも効果を発揮しますし、もちろん筋緊張やむくみにも有効です。アロマセラピーを通すことで、ホリスティックに患者さんと向かい合えるということが何よりの魅力ですが、それは看護師が一番やりたいことではないかな、と思うんです」
【前編はこちらから】
看護としてのアロマを実践する | アロマセラピー学会認定看護師・小山めぐみさんインタビュー
<プロフィール>
小山 めぐみ(こやま めぐみ)さん
看護師、アロマセラピスト、日本アロマセラピー学会理事、オリエンタル・アロマセラピィ・カレッジ副校長。
日本大学板橋病院救命救急センター勤務を経て、イギリスへ留学。自然療法の専門学校「レイワース・センター」でアロマセラピーを学び、IFA国際アロマセラピスト資格を取得。統合医療を行う「朱クリニック」で看護師兼アロマセラピストとして勤務中。
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