膀胱留置カテーテル中の蓄尿バッグは、 膀胱より高く上げてはいけないのはなぜ?
『根拠から学ぶ基礎看護技術』より転載。
今回は膀胱留置カテーテルに関するQ&Aです。
江口正信
公立福生病院診療部部長
膀胱留置カテーテル中の蓄尿バッグは、膀胱より高く上げてはいけないのはなぜ?
導尿がスムーズに行なわれ、逆流を防ぐためです。
〈目次〉
膀胱留置カテーテルによる持続導尿のしくみは
膀胱留置カテーテルによる持続導尿は、膀胱内の尿が重力によって自然に蓄尿バッグ内に流出するようになっています。蓄尿バッグには逆流防止弁がついていますが、蓄尿バッグを膀胱より高く上げると、カテーテル内の尿は膀胱内に逆流します。その結果、膀胱内に尿がうっ滞した状態となり、スムーズな導尿が不可能となります。蓄尿バックは膀胱より高く上げてはならず、必ず下垂し、床の上に倒して置かないようにしなければなりません(図1)。
これは蓄尿バッグの逆流防止弁の汚染を防ぎ、尿路感染の発生を防ぐためです。
同様に排尿チューブの長さの調整も大切です。チューブが長すぎてたるむと尿流が停滞し、逆行性感染を生じやすくなります。また、チューブの先端が尿中に浸かったり、蓄尿バッグからはずれて、不潔にならないように、固定も十分に行ないます。
膀胱留置カテーテル使用時の注意点
ほかに膀胱留置カテーテル使用時、尿路感染を防ぐうえで必要なこととして、次のようなことがあげられます。
①カテーテルの早期抜去:適切な適応に対してのみカテーテルを挿入し、早期に抜去する。
②カテーテルの閉鎖を保持:カテーテルと蓄尿バッグの接続部は外さない。
③ただし、陰部洗浄は清潔の保持、不快感の緩和を目的として毎日行う。
以上の感染防止処置に加え、尿検査(赤血球、白血球、細菌、その他の沈渣)を行ない、尿路感染が明らかな場合は、細菌培養・薬剤感受性検査を行ない、最も適切な抗生剤を投与します。また、感染予防のため抗生剤投与をあらかじめ行なう場合もあります。
一般的に基礎疾患のない単純性感染は8割が大腸菌によりますが、膀胱留置カテーテル使用時は複雑性感染も起こりやすくなります。起因菌の多くは、緑膿菌、セラチアなどの弱毒菌やエンテロコッカス・フェカリス菌(E.faecalis)で、菌交代も起こりやすく、薬物選択が難しい場合も多くあります。
膀胱留置カテーテルを挿入する必要性について
膀胱留置カテーテルを挿入する目的は、尿閉などの排尿困難の場合、尿量を正確に把握する必要がある場合などがあります。時間尿を正確に把握する必要がある場合は、微量計を使用することもあります。
尿路感染のリスクが高くなるため、膀胱留置カテーテルを挿入する必要性を明確にし、必要最小限の期間にしましょう。
膀胱留置カテーテル挿入時・挿入中の患者の看護
- ①カテーテルを挿入したら、尿の流出を確認してから滅菌蒸留水を注入し固定します。尿の流出を確認する前に固定水を注入すると尿道を損傷する危険があります。また、固定水として生理食塩液を使用すると、固定バルン内で結晶化して固定水の注入口を閉鎖し、固定水を排出できなくなります。
- ②挿入したカテーテルが抜けないことを確認し、カテーテルを固定し(図2)、蓄尿バッグと接続します。
・女性の場合、カテーテルによる物理的刺激を最小にするために足側に固定します。
・男性の場合は、陰茎を頭側に引き上げるようにし、ゆとりをもたせて固定する。カテーテルを足側に固定すると、尿道の屈曲が生じて組織の壊死や潰瘍を形成する場合があります。
- ③留置中は、尿と流出状態、尿量、比重、尿の色・性状(混濁および浮遊物の有無など)をみて、尿路感染の有無などを観察します。
- ④陰部洗浄の際には、カテーテルの過度な伸展や強い摩擦により、尿道粘膜を損傷しな いようにやさしく洗浄する。尿道口周囲の消毒は不要である。
- ⑤水分を十分に補給し、尿量を保つようにします。しかし、疾患によっては、水分制限がある場合があるため注意しましょう。
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 根拠から学ぶ基礎看護技術』 (編著)江口正信/2015年3月刊行/ サイオ出版