導尿を行うとき、無菌操作なのはなぜ?

『根拠から学ぶ基礎看護技術』より転載。
今回は導尿に関するQ&Aです。

 

江口正信
公立福生病院診療部部長

 

導尿を行うとき、無菌操作なのはなぜ?

 

導尿時には尿路感染を引き起こす可能性が高いためです。

 

〈目次〉

 

尿路感染症とは

導尿時あるいは留置カテーテルによる持続導尿時最も起こしやすい合併症は、尿路感染症です。これは身体の中に溜まった尿が、細菌が増える絶好の培地となりやすいことや、排尿による自浄作用が失われることに起因しています。

 

尿路感染症は腎・尿管から構成される上部尿路系の感染症と、膀胱・尿道から構成される下部尿路系の感染症に大きく分けられます。

 

上部尿路系の感染症では腎盂腎炎が代表的な疾患であり、尿路を介しての上行性感染(尿の流れに逆行する感染経路)を示し、起炎菌としては大腸菌が多くを占めています。

 

下部尿路系の感染症では膀胱炎や尿道炎があり、大腸菌を主体とする細菌感染によるものの頻度が高いです。

 

導尿の方法は

カテーテル挿入時には、カテーテルの先10cm程度までは滅菌ボートに寝かせるようにして汚染を防ぎ、カテーテルに塗る潤滑油も滅菌ずみのオリーブ油やグリセリンを用います。また、尿道口周囲や亀頭の消毒も綿密に行ない、外界から尿路内への細菌の侵入を防ぎます。カテーテルを抜いた後も、尿道口やその周囲を、拭き綿を1回ごとに取り替えてよく拭き、抜去後の感染症の発生を防ぎます。

 

導尿時の援助

  1. 導尿の目的・方法を説明し了解を得て協力してもらう。
  2. カーテンを閉め、プライバシーの保護をしながら羞恥心を軽減させます。
  3. 女性の場合、両膝を立て、軽く両下肢を外転し、腹部の緊張をとるとともに外陰部が露出しやすい体位をとります(図1)。
  4. 尿道口を確認し、外尿道口周囲や亀頭を含め消毒綿球でよく消毒します(図1)。
    ・女性の場合:尿道口と小陰唇内側を前から後ろに向かって、左、右、中央の順で、それぞれ消毒綿球を交換しながら消毒します。
    ・男性の場合:亀頭部を露出させて、尿道口を中心に円を描くように消毒します。
    ・カテーテルに潤滑剤を塗布する。

図1導尿時の必要物品の配置と尿道口の消毒

導尿時の必要物品の配置と尿道口の消毒

 

  1. カテーテル挿入時は、滅菌手袋を装着するか、摂子を使用して無菌操作で実施し尿路感染を予防します。カテーテルのサイズは一般的に成人では、12〜18Fを使用します。
  2. カテーテルを挿入し、尿を排泄させます(図2)。
    ・男性の場合:尿道口を上にして、15~20cm挿入します。尿道がS状に屈曲しているため、尿道をまっすぐにするために陰茎を腹壁から60°ほど持ち上げる必要があります。高齢になると前立腺肥大などで挿入が困難となる場合があるため、その際には無理に挿入しようとせず、医師に依頼します。
    ・女性の場合:外陰部を開いて、尿道口から4~6cm挿入します。
  3. 排尿されたら、尿を残さないために下腹部を用手圧迫します。導尿により滅菌尿を検体として提出する場合があります。

図2カテーテルの挿入

カテーテルの挿入

 

押さえておこう

排尿困難時は、導尿する必要があります。

 

下腹部の緊満状態、下腹部痛、不快感、最終排尿時間と尿量などを観察し、導尿の必要性を判断します。

 

尿閉の場合は、放置すると逆行性尿路感染や腎機能障害の原因となることがあります。

 

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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 根拠から学ぶ基礎看護技術』 (編著)江口正信/2015年3月刊行/ サイオ出版

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