ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)|消化器系の検査
『看護に生かす検査マニュアル』より転載。
今回は、ERCP検査(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)について解説します。
高木 康
昭和大学医学部教授
〈目次〉
- ERCP検査とはどんな検査か
- ERCP検査の目的
- ERCP検査の実際
- ERCP検査前後の看護の手順
- ・ERCP検査に関する患者への説明
- ・ERCP検査で準備するもの
- ・ERCP検査前後の管理
- ERCP検査において注意すべきこと
- ERCP検査現場での患者との問答例
- ERCP検査に関する患者への説明用資料
ERCP検査とはどんな検査か
ERCPは、内視鏡を十二指腸まで挿入し、ファーター乳頭開口部からカテーテルを挿入し、造影剤を注入することにより胆管・膵管を造影し、形態の観察・疾患の診断を行う検査である。
検査は30〜60分と時間がかかり、内視鏡下で行うことから患者の負担が大きいため、十分な説明と援助が必要である。また、検査後の合併症に注意し管理することが必要である。
ERCP検査の目的
造影により胆管・膵管の形態の変化を観察する。
ERCP検査の実際
- ①医師の指示により前投薬を投与する。
- ②患者を検査台に寝かせ仰臥位をとらせる。顔の下に処置用シーツを敷き、ガーグルベースンを顔の横に準備する。
- ③咽頭麻酔(キシロカインスプレー)を行い、マウスピースを噛ませる。
- ④医師の指示により鎮静剤を投与する。
- ⑤内視鏡を挿入する。挿入時の体位は左側臥位とし、患者に声をかけ、必要時介助する。内視鏡挿入時は身体の力を抜くように声をかける。
- ⑥十二指腸乳頭部まで内視鏡を挿入後、鉗子口からカテーテルを挿入し造影剤を注入する。この際、患者の体位は腹臥位となるよう介助する。また、内視鏡挿入・造影時は患者の表情を観察し、手を握るなど苦痛の緩和に努める。
- ⑦造影剤を注入後、X線撮影を行う。
- ⑧造影が終了したら静かに内視鏡を抜去する。
- ⑨患者に検査が終了したことを説明し、体位を整える。
ERCP検査前後の看護の手順
ERCP検査に関する患者への説明
- 内視鏡を挿入・造影剤を注入してX線撮影をすることにより、胆管・膵管の状態を調べる検査である。
- 検査前に前投薬を注射し、検査中は体位の変換を行う。
- 検査後、膵炎を予防するための点滴を行う。
- 身体の力を抜いてリラックスしてもらう。
ERCP検査で準備するもの
・十二指腸ファイバースコープと付属品・造影剤 ・医師の指示により鎮静剤、前投薬・キシロカインスプレー ・マウスピース・アルコール綿 ・処置用シーツ ・ガーグルベースン
ERCP検査前後の管理
1)検査前日
- 夜9時以降は禁飲食とする。
- 検査の目的と方法を説明し、同意を得るとともに不安の軽減に努める。
2)検査前
- 朝から禁飲食とする。
- 感染症の有無、既往歴を確認する。
- 内服薬の確認をする。
- 検査中は会話ができないため、苦痛があるときには手を軽くあげ合図をするよう説明する。
- 検査中は看護師がついていることを説明し、不安の軽減に努める。
3)検査中
- 内視鏡挿入時、造影剤注入時は患者の手を握るなどして、不安の軽減に努める。
- 造影剤注入時は副作用の有無を観察する。
- 検査中は声をかけ、必要時体位の変換を介助する。
- 撮影時は動かないよう説明する。
4)検査後
- 安静:検査終了後から3時間はベッド上安静とする。
- 食事:検査終了後3時間は禁飲食とする。腹痛、発熱のないことを確認した後、水分から摂取させる。
- 観察:検査終了後と安静解除前にバイタルサインを測定し、腹部症状、造影剤の副作用を観察する。腹痛・発熱を生じた場合は、検査後膵炎を起こしている可能性があるため、速やかに医師に報告し対処する。
- 合併症(検査後膵炎・胆管炎・造影剤の副作用など)が生じた場合は、速やかに医師に報告し対処する(表1)。
- 検査終了時は病棟までストレッチャーで搬送し、安静を保つ。
- 検査後は膵炎の予防のため、抗生物質と蛋白分解酵素阻害剤の点滴を行う。
- 造影剤の排泄を促すため、なるべく水を飲むように説明する。
ERCP検査において注意すべきこと
- 検査後膵炎を生じた場合は、禁飲食とし点滴管理とする。
- 高血圧・心疾患などの内服薬は医師の指示に従い内服させる。
- 苦痛を伴う検査であるため、常に声をかけながら行うよう努める。
ERCP検査現場での患者との問答例
明日は内視鏡的逆行性胆管膵管造影という検査を行います。
どんな検査ですか。
口からカメラを挿入して造影剤を入れ、胆管と膵臓の状態をレントゲン撮影する検査です。
苦しいですか。
のどにも麻酔をしてカメラが入りやすいようにします。検査中は看護師が常についていますので、つらい時は手をあげて教えてください。医師の指示により鎮静剤も使用します。
何か準備をしておくことはありますか。
夜9時以降は飲んだり食べたりしないでください。
検査が終わってから制限はありますか。
検査が終わってから3時間安静にしていただきます。点滴をする予定です。
わかりました。
ERCP検査に関する患者への説明用資料
説明用資料ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)を受ける方へ
この検査は内視鏡を口から十二指腸まで挿入し、ファーター乳頭という部分から造影剤を使用することにより、胆管や膵臓の状態を調べるものです。
【注意事項】
略語
- ERCP:endoscopic retrograde cholangiopancreatography
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版