経鼻経管栄養場面のポジショニング
『写真でわかる看護技術 日常ケア場面でのポジショニング』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は経鼻経管栄養場面でのポジショニングについて解説します。
栁井幸恵
綜合病院山口赤十字病院/皮膚・排泄ケア認定看護師
ポジショニングのポイント
- 経管栄養時(胃瘻、NGチューブ等による)や、病態的に医師の指示による安静度制限の際、または、口腔期から咽頭期における食塊の送り込みの障害時は頭側挙上30度で行う。
- 頭側挙上30度は経管栄養を行う患者でよく用いられる角度であるが、患者によって適切な角度は異なる。まずは、30度をめやすに行い、仙骨~尾骨等骨突出部の下に手を挿入し、圧を確認してその患者に適切な角度を決定する必要がある。
- 頭側挙上30度は褥瘡予防にも好ましい体位とされている。
- 経管栄養時は注入時間など長時間にわたり同一体位をとるケースも少なくないため、より安楽な姿勢保持が必要である。
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ポジショニング開始前の準備
患者がベッドのどの位置に寝ている状態で頭側挙上を行うかは注意すべき点である。
リクライニングポイントを確認し、適切な位置から足上げ、背上げを開始する必要がある。
患者の体格によっては、下肢の挙上ポイントと膝の屈曲ポイントが合っていない場合がある(図1)。そのため、適切な位置で下肢が屈曲せず、伸展位になる。
下肢が伸展位のまま頭側挙上を行うと、頭側挙上の際に身体が尾側へずれ、褥瘡発生の原因になるとともに、余計な筋緊張がかかる。
下肢の屈曲点が合わない場合は、ピロー等で大腿部を挙上し、下肢を伸展位ではなく、軽度屈曲位に保つ。
注入による頭側挙上が持続するケースでは、マットレスに体圧分散用具を用いて、仙骨・尾骨・踵部の圧分散を行うことが望ましい。
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ポジショニングの進め方(背上げ30度)
1 患者の位置を確認したのち、背上げを開始する
下肢の挙上から開始する(図2-①)。これは、患者が尾側にずれるのを防ぐためで、患者に声をかけながら少しずつ行う。
この際、下肢の屈曲ポイントが合っていなければ大腿部にピローを挿入し、ずり下がりを防ぐ(図2-②)。
下肢を少し挙上したのち、背上げを少しずつ行う行為を交互に繰り返し、徐々に30度まで頭側挙上を行う(図2-③)。これは下肢と頭側挙上をそれぞれ行うよりずれが少なくできるからである。
下肢を挙上しすぎると腹部に圧迫がかかるとともに下肢の重さが仙骨~尾骨にかかってしまうので、患者の意思が確認できれば腹部圧迫感を確認するとともに、背抜きの際に殿部圧を確認する。
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2 背抜き・足抜きを行う
患者の背中とマットレスのはりつきを解除する(図3-①)。患者の背中とマットレスの間に手を入れ、背部を大きくなでるようにマットレスと離す。
この際、手のひらがマットレス側に向いているとマットレスを強く押さえることができ、背抜きが行いやすい。
一方、皮膚が脆弱な患者などには手のひらを患者の背中側に向け、介助者の爪等が皮膚の刺激にならないように行う。
殿部から下肢においては足抜きを行う(図3-②)。
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3 軽度側臥位に向け、再び圧抜きを行う
栄養剤注入時は、軽度右側臥位の体位にする(図4)。これは消化管の通過を促すためとされる(胃~十二指腸への流れが促進される)。
その後も下側になった右肩峰部や右大転子部、腸骨稜右外踝部に圧がかかっているため、同部の圧抜きを行う。
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4 注入に長時間を要する場合の方法
消化機能低下や下痢予防のために、注入が長時間かかる場合は、側臥位の角度を変えたり、肩峰部や大転子部の圧抜きを行い、同一部位が長時間圧迫されないようにする。
圧抜きを行う間隔は患者によって異なるが、訪問ごとに患者の身体の下に手を入れ、圧抜きを行う習慣をつけるとよい。
または、2時間をめやすに下側になっていた皮膚を確認し、発赤等を認めれば、30分ずつ間隔を短くしていき、患者に合った時間を決める方法もある。
5 注入終了後、消化を促すために、背上げ状態を続ける
この時間は、患者によって異なるため、30~60分をめやすに医師に確認する。
6 ベッドを平坦に戻す
終了時ベッドを平坦にした後、身体を側臥位に向け寝衣を整えて圧抜きを行う。
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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『写真でわかる看護技術 日常ケア場面でのポジショニング』 編著/田中マキ子/2014年8月刊行/ 照林社