バイタルサインがもともと悪い患者の場合、「急変かどうか」を、どう判断する?
『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回はバイタルサインがもともと悪い患者の急変対応について解説します。
森安恵実
北里大学病院 集中治療センター RST・RRT室係長/集中ケア認定看護師
バイタルサインがもともと悪い患者の場合、「急変かどうか」を、どう判断する?
「現時点での患者の状態」から判断します。生命維持のための代償機転がはたらいているのかをアセスメントすることも大切です。
バイタルサインがもともと悪い患者が「急変したかどうか」を判断するのは、簡単ではありません。治療やケアを行いつつ経過を注意深く観察している場合も、悪化の一途をたどると予測しつつ治療やケアを差し控えている場合もあります。
このような患者では「急変」という言葉の定義、すなわち「どこからが急変か?」の判断がとても困難です。個別性を抜きにして、一般論として表現するのは困難ですが、ここでは、バイタルサイン(主に血圧)に的を絞って説明します。
血圧と急変
1 現在のバイタルサインで状態を考える
心臓は、いわばポンプです。肺で取り入れられ、ヘモグロビンと結合した酸素を、生命活動に必要な臓器などに送ることが、心臓の役割です。その末梢側の動脈圧力が、普段われわれが測定している血圧です。つまり、血圧は循環を評価するための1つの指標となるのです。
そのため、血圧が低くても、臓器が機能不全となっていなければ、需要に見合った酸素が届いているので、問題はありません。そのため「現時点での臓器虚血(低酸素)がどの程度か?」を考える必要があります。
2 判断のポイント(図1)
血圧低下時は、末梢の皮膚(色、温度)、尿量、意識を観察します。
また、人体には、生命を維持するために代償的にはたらくシステム(代償機転)があります。血圧低下の場合、頻脈や頻呼吸がそのシステムに該当します。その代償システムがはたらいている状態か(余裕があるか、崖っぷちでがんばっている状態か)を早めに察知する必要があります。
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看護師は、バイタルサイン測定のプロです。身体の機能や代償機転をふまえ、他の身体的所見も意図的に観察することで、急変する前に察知できるようになります。これが、看護師が測定するバイタルサインの質なのです。
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[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社