急変対応は「何か変」と気づくことからはじまる。でも、そもそも「何か変」と気づけない…。
『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は急変に気づく視点について解説します。
山本美紀
米沢市立病院 ICU 副看護師長/集中ケア認定看護師
急変対応は「何か変」と気づくことからはじまる。でも、そもそも「何か変」と気づけない…。
日ごろから「正常を理解する」「普段と比較する」「“何か変”の状態を知る」「さまざまな指標を知る」ようにすると、気づきの視点が養われます。
正常(基準値)を理解する
患者に積極的にかかわり、普段の会話や行動をとおして、その患者の正常な状態を理解することが大切です。例えば「今までベッドを平らにして寝ていたのに、少し頭を起こして寝るようになった」「会話時に肩が上がっている」「トイレに行くとき、ときどき立ち止まる」などの些細なことです。
そういう患者なのだ、と思ってしまったら変化をとらえることはできません。しかし、普段の状態を理解していれば、変化や違和感を感じとること、すなわち「何か変」という気づきにつながります。
もちろん、バイタルサインの基準値を理解しておくことも大切です。
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普段と比較する
患者の症状は、刻々と変化しています。昨日と比べて、さっきと比べて「変わったところはないか」という視点をもつと、変化に気づきやすくなります。普段の状態やバイタルサインなど、とにかく比較することです。
例えば「収縮期血圧が、午前中は160mmHg、午後は100mmHg」だった場合、この変化をどう考えますか?「160mmHgは少し高いが、100mmHgならちょうどいい」でしょうか?違いますね。もし、その患者の普段の収縮期血圧が160mmHgだった場合、その基準値を理解していれば「100mmHgって低すぎない?何か変だ!」と気づくことができます。
つまり、生命徴候を現すバイタルサイン(血圧・脈拍数・呼吸数・体温)の変化をていねいにみていくことが、患者の「何か変」に気づくことへとつながるのです。
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「何か変」の状態を知る
急変が起こる6~8時間前には、呼吸・循環・意識に何らかの異常(=「何か変」の徴候)が現れるといわれています。
この何らかの異常がどのような状態かを知ると、観察の幅が広がり、異変を早期にとらえられます。
呼吸の異常、循環の異常、意識・外見の異常に分け、意図的に観察することが大切です(表1)。
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さまざまな指標を知る
指標は、判断や評価のための目じるしです。指標にあてはまったとき、その疾患や状態を疑うことができます。
バイタルサインから評価する指標も多いため、「何か変」を見抜くにあたって、バイタルサインはとても重要です。ここでは、急変対応を考えるうえで重要な「何か変」を見抜く指標の例として、ショック指数とqSOFA(quick SOFA)スコアを紹介します(表2)。
患者に何らかの症状がみられたとき、まず疑うべきは「緊急度の高い疾患ではないか」ということです。常に最悪の事態を想定して行動することが、急変アセスメントでは、最も重要になります。
以下に、代表的な症状を引き起こしうる緊急度の高い疾患の例をまとめますので、参考にしてください。
(道又元裕)
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[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社