「緊急コール」か「ドクターコール」か、判断が難しい…。
『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は緊急コール、またはドクターコールをする判断について解説します。
杉本尚子
元・東京都立広尾病院 救命救急センター・ICU/救急看護認定看護師
「緊急コール」か「ドクターコール」か、判断が難しい…。
気道閉塞・呼吸停止・心停止・死戦期呼吸・意識消失は「緊急コール」、呼吸や循環が何とか維持できていたら「ドクターコール」です。
緊急コールかドクターコールか。判断のカギは、緊急度です(図1)。
緊急度とは、生命の危機や、臓器・身体部位の障害や損傷を、回避または減少できる時間的余裕の度合いを指します(くわしくは「その症状が「緊急」か「少し様子をみていい」かは、どう判断すればいい?」)。
「緊急コール」する場面
緊急度がきわめて高い状況として挙げられるのは、気道閉塞や呼吸停止、心停止、死戦期呼吸、意識消失です。これらは、救命処置が遅れると死に直結する病態であり、迅速かつ的確に対応するためには、複数の医師や看護師が必要となります。
緊急コールは、施設によって、コードブルーやスタットコールなど、さまざまな名称で呼ばれています。このシステムによって、当該部署以外からの医師や看護師、多職種(薬剤師、検査技師、放射線技師など)が駆けつけ、蘇生や治療のためのマンパワーを確保できます。そのため、緊急度の見きわめが重要で、生命の危機的状況だと判断した場合には、躊躇せず緊急コールを行う必要があります。
なお、施設によって、緊急コールシステムが異なるため、院内のコール基準を把握しておくことも重要です。
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「ドクターコール」する場面
院内の予期せぬ死亡症例のうち60~70%では、心肺停止に至った6~8時間前に急変の前兆(呼吸、循環、意識の異常・悪化)が認められています1)。この急変の前兆を見抜くことができれば、ドクターコールで対応できます。
危険な徴候はあるものの、呼吸や循環が何とか維持できている場合はドクターコールを行いますが、急激に症状が進行し、生命の危機的状況が予測される場合には、緊急コールに切り替える判断も必要です。
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引用・参考文献
1)池上敬一,浅香えみ子 編著,日本医療教授システム学会 監修:患者急変対応コースfor Nursesガイドブック.中山書店,東京,2008:34‐38,44‐47.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社