「熟睡」と「意識レベル低下」。どうすれば見きわめられる?
『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は熟睡と意識レベル低下の見きわめ方について解説します。
田中裕子
高松赤十字病院 集中治療室 看護部/救急看護認定看護師
「熟睡」と「意識レベル低下」。
どうすれば見きわめられる?
まず「刺激を加えて覚醒するか」確認します。覚醒したら、眠る前のこと・現在の自分の状況が把握できるか尋ねてみるとよいでしょう。
辞書には「意識とは覚醒している状態で、さらに自分自身および外界を認識している状態。意識障害はそれらの障害のことで、厳密には前者の障害を意識水準の低下、後者を意識内容の変化という」1)とあります。
つまり、意識障害をとらえるには、傾眠や昏睡など覚醒の確認と、見当識など認識の程度の確認が必要です。
意識障害は、どう見抜く?
では「覚醒していない=意識障害あり」でしょうか?生理学の教科書には「睡眠は、感覚などの刺激による覚醒が可能な無意識状態と定義できる。昏睡は、その状態から覚醒できない無意識状態である」2)とあります。
つまり、昏睡は高度の意識水準の低下、すなわち意識障害(意識レベル低下)です。ゆえに、熟睡と意識レベル低下の違いは感覚刺激で覚醒するか否かとなります。
1 「いびき」は見きわめの大きなヒント
1つめのポイントは、いびきです。普段はいびきをかかない患者が、大きないびきをかいていて、刺激を加えても覚醒しない場合は、高度の意識障害が疑われます。
2 起きてすぐ、質問に正確に答えるのは難しい
ここで、Glasgow Coma Scale(グラスゴーコーマスケール)やJapan Coma Scale(ジャパンコーマスケール)を思い出してください。最初の評価は、患者に声をかけて覚醒するかの確認です。覚醒が確認できたら、見当識はあるか、会話に混乱がないかなど、認識の程度を確認します。見当識の異常・会話の辻褄(つじつま)が合わない場合は、意識レベル低下です。
ここで注意したいのは「意識に問題がなくても、熟睡中、急に起こされて質問されると、間違って答えることが多い」という点です。そのため、患者の表情や視線を見つつ、会話の過程で少し時間をとりながら、睡眠前のできごとを覚えているか、自身の状況をどのように認識しているかを確認することが大切です。
意識障害の原因は多岐にわたります(表1)。
意識障害と判断したら、まず「呼吸と脈はあるか」を確認し、心肺蘇生が必要か判断します。次に「低酸素や体温・血糖異常はないか」を判断し、医師の到着前に、看護師ができる処置や準備を行うことも重要です。
●寝ていても、脳幹機能は瞬目(しゅんもく)で評価できます。
●「睫毛(しゅうもう)に触れると目をギュッとつむるか」で、患者を起こさずに評価できます。
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引用・参考文献
1)和田攻,南裕子,小峰光博 総編集:看護学大辞典 改訂第2版.医学書院,東京,2010.
2)Guyton AC,Hall JE 著:ガイトン生理学 原著第11版.エルゼビア・ジャパン,東京,2010:775.
3)今野慎吾,北原孝雄:GCS,GOS.救急医学 2012;36(10):1216‐1217.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社