起座呼吸ってどんなもの?横になってもらわないとわからない?
『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は起座呼吸について解説します。
山部さおり
三菱京都病院 看護部 師長/慢性心不全看護認定看護師
起座呼吸ってどんなもの?
横になってもらわないとわからない?
「息苦しくて横になれない」状態が、起座呼吸です。
仰臥位にならなくても、患者の訴えなどからわかることが多いです。
起座呼吸とは
起座呼吸は、座位をとることで心臓へ戻る血液を減らし、呼吸を楽にしようとする現象です。
起座呼吸とは、臥位になると出現し、座位になると改善する呼吸困難です。特に、心不全の診断や重症度を判断する指標となります(表1)。
1 起座呼吸の発生機序(図1)
血液は、立位や座位(=起きているとき)では、重力の関係で足のほうに多く分布します。しかし、臥位(=下肢が心臓と同じ高さになる体位)になると、足のほうにあった血液が心臓に戻ってくるため、静脈還流量(=前負荷)が増加します。
通常、臥位によって増加した前負荷は、心拍出量の増加により代償されます。しかし、心不全患者の場合、心機能が低下しているため、増加した前負荷に見合った心拍出量が得られず、臥位による容量負荷を代償しきれません。その結果、左心内から肺静脈へと血液がうっ滞し、肺の静脈圧が上昇します。すると、血液中の水分が肺胞内に滲み出て、ガス交換ができなくなってしまうのです。
特に夜間は、交感神経系が抑制されてカテコールアミンが減少し、心拍出量が低下するため、 起座呼吸 となりやすい状況にあります。
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引用・参考文献
1)日本循環器学会,日本胸部外科学会,日本高血圧学会,他:急性心不全治療ガイドライン(2011年改訂版).[2018.7.2アクセス]
2)筒井裕之,吉川純一,松崎益德 編:新・心臓病診療プラクティス.文光堂,東京,2005:131.
3)眞茅みゆき,池亀俊美,加藤尚子 編:心不全ケア教本.メディカル・サイエンス・インターナショナル,東京,2012.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社