患者家族の「何かおかしい、つらそうだ」という訴えから急変を見抜くポイントは?
『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は患者家族の訴えから急変を見抜くポイントについて解説します。
石井恵利佳
獨協医科大学埼玉医療センター ICU師長/救急看護認定看護師
患者家族の「何かおかしい、つらそうだ」という訴えから急変を見抜くポイントは?
家族の訴えを軽視せず、必ず看護師の視点で「キラーシンプトム」がないか、迅速評価を行いましょう。該当する症状があれば、すみやかに応援要請、必要物品を確保して、一次評価をします。
重篤な有害事象や院内の予期せぬ死亡のうち、60~70%は、突然発生するのではなく、心停止の6~8時間前に急変の前兆(呼吸・循環・意識の異常や悪化)が認められるといわれます。
「何かおかしい、つらそう」な患者の急変を見抜くポイントは、はじめに呼吸、循環、意識を評価することです。
迅速評価が最も大切(詳しくはこちら)
1 迅速評価
呼吸、循環、意識が安定していなければ生命は維持できません。
はじめに呼吸、循環、意識・外見を視覚と聴覚を使ってすばやく評価(迅速評価)し、生命の危機に結びつく危険な徴候(キラーシンプトム)があるか否かを判断します。
2 一次評価
迅速評価でキラーシンプトムがあったら、応援要請して必要物品を確保します。その後、まずは気道(A)、呼吸(B)、循環(C)、中枢神経系(D)を確認し、そのうえで衣服を脱がせ、外表・体温(E)の視点から詳細に観察し、評価(一次評価)を行います。
一次評価は、聴診器、血圧計や心電図モニタなど、ベッドサイドですぐに使える機器を用いて行います。
なお、評価は ABCDEの順番で行いますが、それぞれの過程で異常があれば、即時に対処します。
一次評価では、評価・判断と救急処置を同時に行い、呼吸と循環の安定を図ります。
3 医師への報告
一次評価でキラーシンプトムがあれば、医師へ要領よく手短かに患者の状態と要望を明確に報告しましょう。
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「家族の訴え」も重要
家族から「何かおかしい」と訴えられた場合、家族の言葉をしっかりと受け止め、患者の状態を確認する必要があります。それは、長年、患者の傍らで患者をみてきた家族だからこそ気づける、われわれ看護師が見逃してしまいそうな「ちょっとした変化」である可能性が高いためです。
まずは、「どのようにおかしいのか?」「普段と、どのように違うのか?」と問いかけ、家族が感じたことを述べてもらいましょう。
「家族の思い込み」「心配性な家族だから」などと安易に判断することは危険です。
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[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社