症状がわかりにくい患者や、ナースコールを押せない患者の急変サイン、どう察知する?

『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は症状を訴えられない患者の急変サインの察知について解説します。

 

森安恵実
北里大学病院 集中治療センター RST・RRT室係長/集中ケア認定看護師

 

症状がわかりにくい患者や、ナースコールを押せない患者の急変サイン、どう察知する?

 

「何か変」という自分の感覚を信じて観察することが大切です。
治療やケアによって、背景に隠れている所見があるかもしれません。

 

 

自覚症状は重要な情報です。「頭が痛い、重い、ぼーっとする」「おなかが痛い、◯◯のように痛い」など、自覚症状を訴える患者がいれば、その情報をさらに詳細に聴取し、バイタルサインの観察やフィジカルイグザミネーションを行って、現時点で起きている事象をアセスメントします。それが、さらなる検査や診察につながり、急変を防ぐことになるのです。

 

しかし、意識障害加齢認知症せん妄不穏精神疾患などのため、症状を訴えられない患者もいます。また、脳卒中の後遺症による運動麻痺脊髄損傷神経筋疾患などにより、ナースコールがうまく押せない患者もいます。ナースコールのセッティング不備によって、自覚症状が出たときに呼べない患者もいます。

 

症状を訴えられない患者の場合

自覚症状を訴えられない、人を呼べない患者がいることを、まず、認識しましょう。ナースコールのセッティング不備が原因の可能性があるなら、事前にその情報をチームで共有し「いつでもナールコールで呼べる」状態にしておきます。

 

それ以外の「自分で症状を訴えられない患者」の場合、看護師が察知する必要があります。また、緊急入院で状態把握がまだできていない患者、急性期の患者、急変リスクが高い患者の場合は、モニタ装着も必要です。

 

1 察知した違和感に目をつぶらない

急変の内容にもよりますが、急変には、そこに至る原因があります(図1)。

 

図1 急変の原因と前兆の例

急変の原因と前兆の例

Lynn LA,Curry JP.Patterns of unexpected in-hospital deaths:a root cause analysis.Patient Saf Surg 2011;5(1):3.

 

その原因によって、患者のバイタルサインに現れる異常が異なりますから、「あれっ?」と感じたときに、それをまず表出することが大切です。「たぶん大丈夫だろう」と思い、察知のタイミングが遅れると、急変と認識したときはすでに手に負えない状態に陥ってしまいます(図2)。

 

図2 「思い込み」は危険

「思い込み」は危険

 

2 隠れている症状はないか観察する

「おかしい?」と感じた自分の感覚を信じることが大事です。その感覚を否定するようなバイタルサインの解釈をする必要はありません。

 

患者の様子が「おかしい?」と思ったものの、原因を言語化できないとき、多くの看護師はバイタルサインを測定するでしょう。そのとき、血圧が維持されていて脈拍もあれば、「なんだ、大丈夫」と思いがちです。でも、それでは急変の予防・早期発見はできません。

 

私たち看護師が「おかしい?」と思う背景には、頻呼吸努力呼吸頻脈末梢冷感顔色不良意識の混濁などの所見が隠れています。バイタルサインに異常がなくても、それらの所見を無意識のうちに察知して「おかしい」と感じているのです。

 

原疾患治療の影響で一見、正常値のように「みえているだけ」ということも、少なくありません。

 

3 観察を継続する

なぜ「おかしい」と思ったか、よく観察し続けると、言語化できるようになります。つまり、それまでは「何かおかしい」と他者に伝えていたことが、患者が表現できない自覚症状の訴えの入口であることに気づくのです。

 

患者からの訴えがなくても、積極的に自分から観察するように訓練すると、症状がわかりづらい患者に対しても、躊躇なく対応できることでしょう。

 

 

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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社

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