在宅で急変発生。どう対応すればいい?

『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は在宅での急変対応について解説します。

 

清末定美
社会保険大牟田天領病院 看護部/救急看護認定看護師

 

在宅で急変発生。どう対応すればいい?

 

フィジカルアセスメントと救急受診の判断がポイントです。
DNARでないなら一時救命措置を行いつつ、在宅医と救急隊に連絡します。

 

 

急変は「死に至る可能性のある状況の変化」で、緊急度が高い状態です。

 

在宅医療を受けている患者は、何らかの疾病をもち、身体組織や臓器の予備力が低下しているため、必要な処置を受けられないと悪化し、重篤化しやすい状態にあります。

 

最近は、終末期患者の意思決定支援プロセスであるアドバンスケアプランニング(ACP)も実施されています。

 

在宅での急変の報告を受けた場合は、基礎疾患を含む患者状態の変化を確認し、患者・家族の意思に沿った適切な緊急対応の実施が必要です。

 

フィジカルアセスメントがカギ

病院と在宅で、急変対応のおおまかな流れに違いはありません。

 

ただし、在宅では、病院のようにモニタや医療機器がないため、看護師による五感を使ったフィジカルアセスメントが非常に重要となります。

 

1 バイタルサインの確認

一般に、緊急を要する状態は、外観や意識・呼吸・循環の状態に現れます。これは、生体が意識・呼吸・循環という生命維持のしくみから成るからです。生命維持の異常はバイタルサインなどに現れるため、平常との比較も必要です。

 

なお、呼吸脈拍は必ず1分間測定しましょう。脈拍の緊張が弱い場合は、血圧変化を予測しながら血圧測定を行います。その際、皮膚状態も忘れずにアセスメントします(表1)。

 

表1 在宅ケアにおけるアセスメントの基本事項

在宅ケアにおけるアセスメントの基本事項

 

2 症状の把握

自覚症状があれば、その症状が「はじめてか、過去にも出現したか」、また、症状の性質や変化・発症時間を把握します。その際、会話の仕方や表情・行動が普段と異なるかアセスメントします。家族からの情報収集も必要です。

 

 

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救急受診の判断

在宅での急変対応では「蘇生処置を受けるか」という患者本人と家族の意思の確認も必要です。それにより、「誰に連絡するか」が変わってきます。

 

対応に困ったら、まずは訪問看護ステーションの管理者に相談してみるとよいでしょう。

 

1 DNARのある場合

急変時に蘇生処置を受けない意思(DNAR)がある場合、患者や家族が戸惑わないよう「今後どのような状態・経過が予測されるか」を在宅医とともに説明します。

 

なお、現時点ではDNARでも「病状が進行するなかで、患者と家族の気持ちは揺れ動く」ことを受け止めて対応してください(詳しくは「DNARの患者が心停止。すると家族が『助けてください』と言いだした。気持ちはわかるが、どうすれば?」) 。

 

2 DNARでない場合

DNARでない場合や病院搬送希望の場合は、BLS(一次救命処置)を実施して在宅医に報告し、救急要請を行います。

 

病院搬送後は、普段の患者の状態や生活状況、家族の反応など、在宅と救急医療との連携・情報提供を密に行い、チーム医療が展開されます。

 

ワンポイント

●ACP(アドバンスケアプランニング)は、将来の意思決定能力の低下に備え、療養者本人・家族・医療者が、今後の治療・ケア・療養に関する意向や代理意思決定者などについて、あらかじめ話し合うプロセスです。

 

●厚生労働省より、2018年3月に「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」の改訂版が発表されています。

 

 

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引用・参考文献

1)日本訪問看護財団 監修,道又元裕 編著:訪問看護のフィジカルアセスメントと急変対応.中央法規出版,東京,2016.

2)笹山志帆子:高齢者・認知症患者の「いつもと違う」を発見して救急・急変に備える.救急看護ケア・アセスメントとトリアージ 2015;5(2):104‐107.

3)American Heart Association:AHA心臓蘇生と救急心血管治療のためのガイドライン 2010.シナジー,東京,2012.


 

本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社

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