外来や健診センターでの急変。情報や医療機器が不十分だが、どうすれば?
『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は情報や医療機器が不十分な場合の急変対応について解説します。
髙西弘美
高槻病院 看護部/救急看護認定看護師
外来や健診センターでの急変。情報や医療機器が不十分だが、どうすれば?
応援要請後、ABC(気道・呼吸・循環)を確認し、心肺停止なら心肺蘇生を開始します(図1)。心肺停止でない場合には、救急外来などに搬送します。
対応の原則は同じ
1 応援要請→BLS
まずは、応援とAED(自動体外式除細動器)を要請します。決してその場を離れず、大きな声で応援を要請しましょう。
次に、蘇生の必要があるかどうか、つまり、ABCの確認を行います。心肺停止状態であれば、すぐにBLS(一次救命処置)を開始します。
2 ALSを実施できる場所に移動
とはいえ、病棟以外の急変で悩むのは「BLSが必要ではない場合」でしょう。本来なら、救急カートやモニタなどを集め、すみやかにALS(二次救命処置)に移行しますが、そういった医療機器がない場所の場合には、対応可能な場所(救急外来など)に搬送します。
病院と離れた場所(健診センターなど)の場合には、救急車の要請が必要かもしれません。
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応援到着までにできること
病棟と違って機器もなく、他の患者も多い状況では、プライバシー保護が困難です。そのため、衣服を脱がせなくても観察できる部位から身体情報を収集します。
1 バイタルサインの予測①:循環(図2)
脈拍触知ができる部位から、収縮期血圧が予測できます。頸動脈が触れれば約60mmHg、大腿動脈が触れれば約70mmHg、橈骨動脈が触れれば約80mmHgです。
CRT(毛細血管再充満時間)から、末梢循環の状態が把握できます。爪床を圧迫して離した後、色調の回復までに2秒以上かかる場合は、末梢循環不全を示唆します。
2 バイタルサインの予測②:呼吸(図3)
酸素解離曲線を使用すると、症状からSaO2とPaO2が予測できます。チアノーゼや意識障害のある患者の場合、SaO2約75%、PaO2約45Torrです。
3 既往歴の予測
既往歴は、カルテや家族・付き添い者より聴取するのが基本ですが、身体所見からの予測も可能です。すぐ確認できる部位からわかることの例を以下に示します。
①指先に針刺しの痕がある=糖尿病で血糖測定をしている
②腕にシャントがある=腎不全で人工透析をしている
③四肢関節の拘縮=脳出血や脳梗塞による麻痺がある
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応援が到着したら行うこと
応援が到着したら、プライバシー保護、蘇生続行やその他の処置を行うため、処置室に移動します。
移動後、モニタ装着や酸素投与と同時に、衣服を脱がせて全身を観察し、患者の状態、手術痕(術式や疾患の予測)、褥瘡や筋萎縮(ADLの予測)などを確認します。
患者の状態が落ち着くか、搬送体制が整ったら、早急に対応可能な施設に搬送するのが理想です。
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[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社