急変時には、どのような薬剤を使う?何に注意して使えばいい?

 

『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は急変時に使用する薬剤について解説します。

 

植木 玲
杏林大学医学部付属病院 HCU/集中ケア認定看護師

 

急変時には、どのような薬剤を使う?
何に注意して使えばいい?

 

心肺蘇生時はアドレナリン、ショック時はノルアドレナリンが第一選択薬です。あわてずに使えるよう、作用・用法を理解しておきましょう。

 

 

急変時には、患者の状態に応じて、さまざまな薬剤が使用されます。

 

心肺蘇生時には、血管収縮薬強心薬抗不整脈薬などの循環作動薬を使用します。これらの薬剤は心臓や末梢血管などに作用し、血圧を上昇させたり、心拍出量を増加させたりします。微量でも循環動態に大きな影響を与えるため、使用する際には注意が必要です。

 

急変時は、医療者の心理状態も通常とは異なるため、普段できていることができなくなることもあります。そのため、薬剤の作用や用法を、あらかじめ正しく理解しておくことが大切です。

 

カテコールアミン(強心薬)

カテコールアミンアドレナリン、ノルアドレナリン、ドパミンなど)は、副腎髄質から放出されるホルモンで、アドレナリン受容体に作用します。

 

アドレナリン受容体は、カテコールアミン類によって活性化される受容体*1で、心筋・平滑筋・・脂肪細胞などに存在します。

 

*1  受容体:細胞に存在し、特定の物質と結合することで反応するタンパク質のこと。例えるなら、カギとカギ穴のような関係にある。

 

循環作動薬を使用するうえで重要となるアドレナリン受容体の作用を図1に示します。

 

図1 アドレナリン受容体の作用

アドレナリン受容体の作用

 

1 心肺蘇生時の第一選択薬は「アドレナリン」

アドレナリンにはα1・α2・β1・β2作用があります。特に、末梢血管収縮(α1)作用と心拍出量増加(β1)作用が強く、投与すると血圧が上昇します。

 

また、酸素運搬量が増加しますが、心筋酸素消費量も増加します。血圧が過度に上昇すると、肺水腫不整脈心停止を起こす危険性があります。

 

心肺蘇生時には、1mgを静脈投与します。

 

2 ショック時の第一選択薬は「ノルアドレナリン」

ノルアドレナリンは、強力なα1・α2刺激作用により、末梢血管抵抗を増大させます。ただし、β1刺激作用は弱いため、心拍出量増加作用は強くありません。

 

α1・α2作用の効果はアドレナリンのほうが強いですが、平均血圧を上昇させる効果は、ノルアドレナリンのほうが強いとされています。

 

静脈投与の場合、生理食塩液や5%ブドウ糖液に溶解して使用します。

 

 

目次に戻る

抗不整脈薬

1 致死的不整脈の第一選択薬は「アミオダロン」

アミオダロン(アンカロン®)は、強力な抗不整脈作用がありますが、心機能抑制作用はありません。そのため、VT(心室頻拍)やVF(心室細動)による心肺停止、難治性のVT・VFに対して用いられます。

 

アミオダロンは、マルチチャネルブロッカーといわれ、急性作用ではKチャネル・Naチャネル・Caチャネルの抑制、慢性作用ではKチャネルとα・β受容体の抑制を示します。

 

副作用として血圧低下徐脈をきたすことがあるため、経時的なモニタリングが必要です。

 

2 「リドカイン」はアミオダロンの代替薬

リドカイン(キシロカイン®)は、心室性不整脈に対して使用します。

 

リドカインにはNaチャネル抑制作用があり、心室興奮を抑制します。即効性があり、心機能抑制作用は少ないため血行動態への影響はほとんどありません。

 

リドカインは、致死性不整脈に対して第一選択となるアミオダロンが使えないとき、代替薬として使用します。

 

副作用として、まれですが、ショック血圧低下を起こすことがあります。

 

ワンポイント

●「アドレナリン」「エピネフリン」「ボスミン®」は、すべて同じ薬剤を指しています。

 

●アドレナリンは、2006年に日本薬局方で一般名が改訂されるまで、エピネフリンという名称でした(米国では現在もエピネフリンと呼ばれています)。ボスミン®は、アドレナリンの商品名です。

 

●医師に「エピネフリン用意して」と言われても、エピネフリン=アドレナリンと理解していれば、「救急カートの中にない!」とあわてることなく用意することができます。

 

●その他の薬剤についても、どの薬を指しているのか、一般名・商品名をしっかり理解しておく必要があります。

 

 

目次に戻る

引用・参考文献

1)大野博司:ICU/CCU の薬の考え方、使い方 ver.2.中外医学社,東京,2015:278‐345.

2)田代祐子:昇圧薬.重症患者ケア 2014;3(4):569‐574.


 

本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

> Amazonで見る   > 楽天で見る

 

 

[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社

SNSシェア

看護ケアトップへ