バッグバルブマスクでの人工呼吸。バッグを押しても胸が膨らまない…。
『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回はバッグバルブマスクを押しても胸が膨らまないときの対応について解説します。
髙西弘美
高槻病院 看護部/救急看護認定看護師
バッグバルブマスクでの人工呼吸。バッグを押しても胸が膨らまない…。
気道確保が確実にできており、マスクがしっかり密着していても胸が膨らまない場合は、気道異物を疑って対応しましょう。
まずは「正しい手技か」確認
バッグバルブマスクを用いた人工呼吸で胸が膨らまない原因の多くは、不十分な気道確保です。まずは、気道確保がしっかりできているか、再度確認する必要があります。
次に、患者の顔にしっかりマスクが密着しているか確認しましょう。バッグバルブマスクでの人工呼吸の基本は、母指と示指をマスクに乗せ、残りの3指で下顎骨を保持し、下顎を挙上するEC法(図1)です。
しかし、その場にスタッフが2人以上いる場合は、1人が両手でマスクを保持し、もう1人が換気を行います(母指球法、図2)。そのほうが、気道確保を維持でき、マスクを顔にしっかり密着させながら換気することができます。
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考えられるその他の原因
1 気道異物
それでも胸が膨らまないときや、バッグを押したときに抵抗を感じるときは、気道異物による気道閉塞が考えられます。
気道異物を疑ったら、口腔の異物の有無を確認し、必要であれば背部叩打や口腔吸引を行って異物の除去に努め、人工呼吸を再開します。
2 過量換気
また、不適切な換気方法による過量換気が原因のこともあります。
ガイドラインでは、一回換気量は「胸の上がりがみられる量*1」を約1秒かけて送気することとなっています1)。
短時間で一気に送気したり、バッグを握りつぶすように強く送気したりすると、過量換気となり、気道内圧が過度に上昇します。すると、気道確保が確実になされていても、食道送気となって胃が膨満した結果、横隔膜が挙上して換気が障害されてしまいます。加えて、胃内容物が食道に逆流し、誤嚥の原因ともなります。
換気はバッグを握りつぶさず、約1秒かけてていねいに送気しましょう。
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引用・参考文献
1)日本蘇生協議会 監修:JRC 蘇生ガイドライン 2015.医学書院,東京,2016:14-41.
2)American Heart Association:BLSヘルスケアプロバイダー受講者マニュアルAHAガイドライン2010準拠.シナジー,東京,2011:14-17.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社