一回換気量とは・・・
一回換気量(いっかいかんきりょう、tidal volume)とは一回の呼吸運動(呼気と吸気)で気道・肺に出入りするガスの量のことを指す。単位はmL。
成人の安静時における一回換気量は「理想体重×6mL/kg」が目安である。人工呼吸器につながれている患者の呼吸を評価する際に必要な考え方で、理想体重の求め方は下記の通りである。
男性(kg):50+0.91×(身長(cm)-152.4)
女性(kg):45.5+0.91×(身長(cm) -152.4)
一回換気量と人工呼吸器の設定
人工呼吸器を設定する際に一回換気量を決定するが、特別な肺疾患がない成人であれば「理想体重×6~8mL/kg」の値を設定する。例えば、身長170cmの男性の場合は理想体重66kgで、一回換気量は396~528mL程度になる。
「急性呼吸促迫症候群(ARDS)の患者の場合は、ARDSネットワークが実施した大規模臨床試験の結果に基づき「理想体重×6mL/kg」の一回換気量が推奨されている。ただし、この研究結果は一回換気量が「6mL/kg」よりも「12mL/kg」のリスクの高さを示すというメタ解析もあり、厳密に「6mL/kg」の数値の優位性を示すわけではないといわれている。
人工呼吸器関連肺傷害:容量傷害と圧傷害
前述した一回換気量の推奨値に従わず、「理想体重×12~15mL/kg」の一回換気量に設定した場合、肺を大きく広げすぎることによる「容量傷害」と、肺に対して高い圧をかけることとなる「圧傷害」が生じてしまう。これを人工呼吸器関連肺傷害という。この状態が長く続けば患者の予後を悪化させるため、上記に準じた一回換気量の設定が重要となる。