日光角化症|悪性腫瘍⑥
『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は日光角化症について解説します。
清原祥夫
静岡がんセンター皮膚科
Minimum Essentials
1表皮内に限局した早期の有棘細胞癌である。長期間の蓄積性紫外線曝露が誘因となる。
2高齢者の露光部(顔面、前額部、手背、耳介など)に好発かつ多発する、軽い鱗屑を伴う紅褐色斑。
3治療の第一選択は手術である。顔面の多発例では、凍結療法、イミキモド外用療法を行う。
4表皮内癌のうちは予後良好だが、進行すると有棘細胞癌となり予後は悪い。
日光角化症とは
定義・概念
老人性角化症、光線角化症ともよばれる。表皮内癌で、有棘細胞癌の表皮に限局したもの。進行すると有棘細胞癌となる。
原因・病態
長期間の蓄積性紫外線曝露が誘因となる。わが国では高齢化により急増している。
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診断へのアプローチ
臨床症状・臨床所見
顔面、手背などの露光部に、類円形~不整形の軽い鱗屑を伴う紅褐色の斑(図1)が多発する。
時にびらんを伴う。角質の増殖が著しい場合、皮角となる。結節や腫瘤を形成している場合は、浸潤癌となっていることが多い。多発する例が多いので、複数の病巣を見逃さないように露光部を丹念に観察する。
女性例では下腿も好発部位である。
検査
ダーモスコピー診断は有力な術前検査である。確定診断は腫瘍の生検による。浸潤癌が疑わしい場合は CT、超音波検査など画像診断を行い、転移巣の有無を確認する。
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治療ならびに看護の役割
治療
おもな治療法
表皮内癌のうちに完全切除すれば完治できるので、第一選択は手術である。高齢化の進んだわが国では高齢者の顔面に多発する例がほとんどなので、合併症(認知症や心肺疾患など)やQOLを考えた場合、通院での凍結療法やイミキモドなどの抗がん薬による外用療法を行う。
浸潤癌に至った場合の治療は有棘細胞癌に準ずる。
合併症とその治療
紫外線ダメージによる皮膚の光老化を伴っているため、色素沈着、皮膚の乾燥、硬化、肥厚、深いしわが目立つ。
治療経過・期間の見通しと予後
表皮内癌としてきわめて緩徐に進行するので、この時期に完全切除すれば予後は良好である。しかし、進行癌の場合は予後不良である。
看護の役割
治療における看護
患者は高齢者が多いので、患者と医師が気軽に話し合えるような雰囲気をつくり、患者が納得いく治療を選択できるように援助する。
フォローアップ
紫外線防御の指導と、有棘細胞癌への進展に注意して外来フォローする。多発する例がほとんどなので、新たな病変の出現を長期にわたり注意深くチェックする。
紫外線防御法(日焼け止め・日傘・帽子など)については患者の日常生活に合った方法を指導する。
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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂