環状肉芽腫|肉芽腫②
『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は環状肉芽腫について解説します。
犬塚 学
犬塚皮膚科クリニック院長
Minimum Essentials
1膠原線維の変性とそれを取り囲む組織球主体の細胞浸潤を特徴とする、皮膚の炎症性疾患である。
2限局型では環状に配列する丘疹や紅斑を呈し、手、足、前腕、下腿に好発する。全身型は薬剤の副作用として生じることがあり、糖尿病を合併することもある。
3治療としては、ステロイド薬の外用や局所注射が行われる。
4数年以内に自然治癒することが多い。
環状肉芽腫とは
定義・概念
膠原線維の変性とそれを取り囲む組織球を主体とした細胞浸潤を特徴とする、真皮および皮下組織の炎症性疾患である。
原因・病態
ほとんどの症例で原因不明である。しかし病態に関連して、以下に述べるようないくつかの観察事実がある。
家族内発症
母子、双子、同胞などの家族内発症が報告されている。
誘発因子
小外傷、虫刺され、疣贅、薬剤、帯状疱疹後の瘢痕、日光、紫外線照射などが引き金になることがある。
HLA抗原
いくつかの人種ではHLA型との関連が指摘されている。デンマークでは限局型とHLA‐B8、イスラエルでは全身型とHLA‐B35の関連がそれぞれ報告されている。
糖尿病
とくに全身型について、糖尿病または耐糖能異常との関連を指摘する複数の報告がある。ただし、関連を否定する報告もある。
目次に戻る
診断へのアプローチ
臨床症状・臨床所見
4つの臨床型に分類される。
限局型
もっとも多い型で、1つまたは複数の紅色ないし皮膚色の丘疹を呈する。丘疹が集簇(しゅうぞく)している場合は、環状または弓形に配列する傾向がある。手(図1a)、足、前腕、下腿に好発するが、顔に生じることもある(図1b)。
全身型
全体の約15%を占め、多数の斑、丘疹または結節が躯幹、四肢に分布する。まれに個疹が融合して紅斑または局面を形成する(図2)。アロプリノール、アムロジピン、TNF-α阻害剤の副作用として生じることがある。
穿孔型
集簇する丘疹で、その一部に中心臍窩を認める。四肢に好発する。
皮下型
真皮深層または皮下の結節で、下腿、手、頭部、臀部にみられる。4分の1で表層に丘疹を伴う。
検査
上記の臨床所見により環状肉芽腫を疑ったら、皮膚生検により診断を確定する。
目次に戻る
治療ならびに看護の役割
治療
おもな治療法
多くは自然消退するため経過観察のみでも良いが、ステロイド薬の外用や局注が行われることが多い。皮膚生検をきっかけに自然消退することもある。
合併症とその治療
糖尿病を合併している場合にはその治療を行う。
治療経過・期間の見通しと予後
ほとんどのケースで、瘢痕を残さず自然治癒する。限局型の半数は2年以内に消退するが、全患者の4割が再発を経験する。全身型は平均3、4年で治癒するが、10年以上続くこともある。
看護の役割
治療における看護
ほとんどの場合、数年以内に自然治癒することを説明し、患者を安心させることが大切である。
ステロイド薬外用が長期にわたる場合は、それにより生じる皮膚萎縮、毛細血管拡張などの局所的副作用についてあらかじめ説明しておくことが必要である。
目次に戻る
本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂