先天性表皮水疱症|水疱症④
『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は先天性表皮水疱症について解説します。
立石千晴
大阪公立大学大学院医学研究科皮膚病態学
鶴田大輔
大阪公立大学大学院医学研究科皮膚病態学
Minimum Essentials
1先天的に皮膚の水疱あるいは脆弱性を呈する疾患群。
2表皮と真皮をつなぐ基底膜部構成蛋白の機能不全により水疱が生じる。
3ワセリン外用や創傷被覆材などにより対症療法を行う。
4根本療法の開発が望まれる。
先天性表皮水疱症とは
定義・概念
表皮水疱症は、表皮と真皮をつなぐ基底膜部構成蛋白に機能不全を生じ、水疱ができる疾患群である。
原因・病態
①単純型表皮水疱症、②接合部型表皮水疱症、③栄養障害型表皮水疱症の主要三型に大別される。遺伝子異常によって生じる。
目次に戻る
診断へのアプローチ
臨床症状・臨床所見
病型により遺伝子異常の認められる蛋白質、症状、遺伝形式が異なる。
単純型表皮水疱
生後間もなく~乳幼児期に、機械的刺激を受けやすい部位に水疱、びらんがみられる。水疱は比較的浅く軽症である。
接合部型表皮水疱症
出生時より全身の皮膚に水疱、びらんがみられ、治癒後に瘢痕、白色の丘疹(稗粒腫)を残す。
重症なものが多い。ヘルリッツ(Herlitz)型は生後1年以内にほぼ全例死亡する。
栄養障害型表皮水疱症
皮膚、粘膜に水疱、びらんを形成しあとに瘢痕、白色の丘疹(稗粒腫)を残す(図1)。爪の変形や手指の癒合を認める(図2)。
検査
病型診断が重要であり、皮膚生検組織の電子顕微鏡検査や遺伝子検査により診断する。
目次に戻る
治療ならびに看護の役割
治療
おもな治療法
水疱やびらん保護のための局所の外用療法を行う。創傷被覆材を用いての処置や、脱水がみられる場合には補液する。
合併症とその治療
皮膚の水疱、びらんに二次感染がみられた場合には、感染症の治療も併せて行う。
治療経過・期間の見通しと予後
難治性。根本的な治療の開発が期待される。
看護の役割
治療における看護
機械的刺激により水疱、びらんが生じるので、強く押さえすぎないようにする。ドレッシング交換は、剝離時の疼痛が生じること、処置に時間がかかることに配慮する。
患者本人、両親など家族全員への精神的な影響が大きいため、ケアが必要である。
フォローアップ
機械的刺激により水疱、びらんが生じるため(ニコルスキー現象)、外力からの保護が必要である。処置方法の十分な指導をする。感染徴候があれば受診するように指導する。
QOL(quality of life)にも配慮する。新しい処置材料などの情報提供や使用方法の指導などを行う。表皮水疱症友の会による情報提供や交流の活動がある。
目次に戻る
本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂