毛孔性角化症|角化症③
『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は毛孔性角化症について解説します。
高橋健造
琉球大学大学院医学研究科皮膚病態制御学講座
Minimum Essentials
1毛孔性苔癬ともいい、毛囊上皮の角化異常に近い、皮膚の体質と考えられる。
2思春期以降に、上腕伸側や大腿に毛囊一致性のざらざらとした小丘疹が多発する。
3角質融解性の外用剤塗布や、ケミカルピーリングなどにより治療する。
4思春期頃に発症し、30歳代までに消退する。
毛孔性角化症とは
定義・概念
毛孔性角化症(毛孔性苔癬)とは、思春期以降の若い男女の上腕伸側や大腿に粟粒大の毛囊一致性(毛孔性)の丘疹が多発する状態を指し、ざらざらした感触から「さめ肌」や「とり肌」とよばれることもある。毛包上皮の角化異常に近い、皮膚の体質と考えられる。
アトピー性皮膚炎や尋常性魚鱗癬に合併していることがある。
原因・病態
家族内発症がしばしばみられ、遺伝傾向のある毛囊上皮の角化異常に近い皮膚の体質と考えられる。しばしば母娘間での家庭内発症がみられるが、男性は皮膚科医を受診せず治療の対象となりにくいため、女性の症例が目立つ。日本人健常者の半数近くに、多少の毛孔性角化症の所見がある。
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診断へのアプローチ
臨床症状・臨床所見
小児または思春期以降に上腕の伸側、肩、臀部、大腿前外側などに左右対称性に毛孔性の角化性丘疹が散在する。丘疹は正常皮膚色~淡い紅色の小丘疹で、毛囊から突き出た円錐状のかたい角質よりなる。孤立性で、癒合することはない(図1、図2)。
自覚症状はほぼ伴わないが、時に軽度の瘙痒感を訴える。冬季に悪化し、夏季には軽快する。一般に肥満者で目立つ傾向があり、思春期を過ぎ30歳代以降になると自然軽快する。
検査
毛孔性角化症に特異的な検査所見はない。診断は皮膚所見の特徴より明らかである。
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治療ならびに看護の役割
治療
おもな薬物療法
角質溶解作用のある外用薬である10~20%尿素軟膏(ウレパール®、パスタロン®、ケラチナミン®)や5~20%のサリチル酸ワセリン、ビタミンA軟膏(ザーネ®)などを1日2~3回単純塗布する。
1人の患者でも季節や年齢により好まれる外用剤が変化するので、本人がもっとも満足するものを選んで使用してもらう。
活性型ビタミンD3製剤も有効であるが、今のところ毛孔性苔癬には保険適用はない。入浴時にスポンジパフなどでよくこすり、毛囊の角化性丘疹を機械的にこすりとるのも有効である。
その他の特殊治療として、ケミカルピーリングがある。多くの場合は上記の外用薬で満足が得られるが、外用治療で効果不十分な症例では、保険適用外ではあるが毛包の角層から表皮浅層を標的としたマイルドなピーリングを施行する。
毛孔性苔癬は乾燥肌を伴うことが多く、ピーリング後には保湿薬の使用と日焼け止めにより遮光する必要がある。
治療経過、期間見通しと予後
思春期の一番外見を気にしがちな時期に発症するが、通常30歳代には自然消退する。
看護の役割
治療における看護
本症は遺伝的素因を基にした肌質であり、必ずしも治療を必要とするものではない。これらの点を理解してもらい治療を希望するかどうかを決めてもらう。アトピー性皮膚炎や尋常性魚鱗癬に合併していることがあり見逃さないように注意する。
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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂