尋常性ざ瘡(にきび)|付属器疾患①
『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は尋常性ざ瘡(にきび)について解説します。
政次朝子
さくらこまち皮フ科クリニック皮膚科
Minimum Essentials
1毛包口の皮脂や角質による閉塞および皮脂の貯留、アクネ桿菌(ニキビ菌)の増殖、それに続く毛包脂腺の慢性炎症である。いわゆる「にきび」。
2思春期にみられる、顔面の面皰(コメド)、赤い丘疹、膿疱が特徴である。
3アダパレン・抗菌薬・過酸化ベンゾイル外用および抗菌薬内服を組み合わせて治療する。
4慢性に経過するが、治療を継続することにより軽快する。不規則な生活やストレスなどの悪化因子を避ける。
尋常性ざ瘡(にきび)とは
定義・概念
顔面、前胸部、背部に存在する大きな脂腺をもつ、脂腺性毛包の慢性炎症である。軽症を含めると90%以上の思春期男女が経験し、通常は20歳代後半から消退する。
原因・病態
思春期には男女とも男性ホルモンの分泌が増加し、脂腺性毛包が活発化する。その結果、①毛包口が角質、皮脂により閉塞し、毛包内に皮脂が貯留すること、②皮脂を好み酸素を嫌うアクネ桿菌が増殖すること、の2因子が関与し、毛包を中心に炎症反応が生じる。
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診断へのアプローチ
臨床症状・臨床所見
初発症状は面皰(めんぽう)で、毛包口が皮脂、角質で閉塞し、かたくなった状態である。毛孔が閉鎖した閉鎖面皰(白ニキビ)と毛孔が開大した開放面皰(黒ニキビ:閉塞物がメラニンや皮脂の過酸化により黒く見える)がある。
炎症が起きると赤色丘疹(赤ニキビ)、膿疱(膿ニキビ)と進行していく。炎症が強い場合は、治癒後に瘢痕を残す(図1)。
皮疹は額や頰中心に生じる。時に前胸部、背部にも出現するが、マラセチア毛包炎との鑑別が必要である。
一般的ではないざ瘡
特殊なざ瘡として、集簇性(しゅうぞくせい)ざ瘡、囊腫性ざ瘡がある。これらのざ瘡は皮疹の炎症が強く、皮下に有痛性の硬結、囊腫が連なって生じ、瘢痕を残す。青壮年男子に多く、難治である。
また、ざ瘡様の発疹を呈するものとしてステロイド薬外用に伴うステロイドざ瘡、イレッサ®などの分子標的薬による発疹がある。
検査
とくにない。
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治療ならびに看護の役割
治療
おもな治療
治療の基本は、毛孔の閉塞を除くこと、アクネ桿菌の増殖を抑制することである。外用治療として、アダパレン・過酸化ベンゾイル(13歳以上)、抗菌薬(ナジフロキサシン、クリンダマイシン)を組み合わせる。
毛孔口の皮脂・角質や汚れを取り除く目的で、アダパレンや過酸化ベンゾイル外用、面皰圧出、ケミカルピーリング(保険適用ではない)が行われる。
アダパレン、過酸化ベンゾイルの副作用として、ヒリヒリ感、つっぱり感、かゆみ、発赤、乾燥感がみられる。
最初はざ瘡ができている部分の一部分にのみ外用し、慣れてきたら徐々に外用部位を広げていく。これらの副作用は、外用を継続していくうちに消失することが多い。
アクネ桿菌の静菌および抗炎症を目的に、過酸化ベンゾイルや抗菌薬を外用する。炎症が強い場合は、抗菌薬(ロキシスロマイシン、ミノサイクリン、ドキシサイクリン)を内服する。
スキンケアでの注意点
①洗顔でメイクや肌の汚れを落とし、その後に適度な保湿をすることが大切である。洗顔料は泡立てネットなどを用いてよく泡立て、皮膚をこすらないようにする。これに加えぬるま湯で1日2回洗顔する。すすぎは丁寧に行い、洗い残しのないようにする。気になっても膿疱はつぶさないこと。
②化粧を控える:口紅・アイシャドウでのポイントメイクにとどめ、ファンデーションは極力使わないようにする。とくにざ瘡ができる部分へのリキッドファンデーションの使用は厳禁である。
③髪型:毛先が当たり、ざ瘡が悪化している場合が多い。ヘアピンなどを用いて前額や耳前部は露出させる。
治療経過・期間の見通しと予後
慢性に経過するが、治療を継続することにより軽快する。不規則な生活やストレスが悪化因子なので、これらを避ける。
看護の役割
治療における看護
・思春期のホルモン分泌の変化に伴い生じている皮膚病変のため、必ず改善すること、良い肌状態を維持していくような気持ちで治療していくことを伝える。
・間違った洗顔法や化粧法などを行っていないか確認する。
・生活改善を指導し、改善できているか経過を確認する。
・ざ瘡そのものが強い精神的ストレスになっていることもあるので、少しでもストレスを減らせるように根気よく指導する。
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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂